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第六十一話 「サテンフィン王国を真に導く未来の国王」

「―――レニア様、よろしかったのですか? いくら巫女様の薦めとは言え魔王を内包し、未だ素性が見えない者をあの様に優遇されて。『人、5つもなれば親をも殺す』の言葉通りあの子供はその術を既に持つ年頃です。今一度対処をと私は僭越ながら申し上げさせて頂きます」


絨毯と玉座以外は何も無い白色の殺風景な間で銀髪の少女は赤目を細めながら苦々しい表情で静かにそう口にする。

白色と対比した色の服装も相まって内に秘める不快感が一層際立って見え、敬愛する主の前では厳格である事が従者として絶対の務めであるにも拘らず、彼女はそれを堪え切れない様子で瞳にそれが滲み出ている。しかし玉座に掛けるレニアはその言葉の本心を噛み砕くかのように緑の眼を細めては、自前の長いブロンドに軽く触れ小さく笑みを零し左手に佇み彼女に顔を向ける。



「ニーアは相変わらず心配性ですね。確かに不鮮明な部分は多々ありますが、あの界客がそれだけの目論見を持っているのならばもっと上手くやるでしょう。サテンフィン王国では無く、先に繋がりの出来たクロを通じてディーリスに介入などを謀って……それに敵意を僅かでも持っていたならばこの場でコレが機能しています。問題ありませんよ」



そうやってニーアに向ける左手の中指と親指に嵌まる白銀の指輪は淡く虹色を帯びた白色を見せる

それは装飾の類の物では無いと一見してわかる代物でレオナがElfを用いて作り出す十字架と同じ色を放つ。


「魔王を討つまでの力は無くともこれを使えばそれなりの痛手を与える事が出来ます。わたくしも元とは言えホワイトプリンセスの端くれ。その位は準備していますし……それを見極める為、貴方たち2人を同伴させたのですよ。ニーア、アミィ?」


その言葉を前にニーアは叱られた子供のようにいくらか眉根を寄せて押し黙る。

対して服装も見た目もニーアと全く同じなアミィはバツ悪そうに無言で頬を搔き、視線を泳がせて何か誤魔化す素振りを見せて厳格さを内に固まる彼女とは対照的な動きを見せる。

2人の態度を前に彼女は瞑目をすると挙げていた左手をお腹の上で重ね、一つ深呼吸してその薄紅色の唇をゆっくり動かし、優しく尋ねた。



「―――で、ニーアの眼で見たあの子は如何でしたか?」


「Alpは殆ど表面化しておらず、内にある流れも予想以上に落ち着いていました。魔王のAlpも垣間見えるも同様に穏やかな物で……以前封印が解けた際、目にした物とは別物に見えました」


「そう……書状にあった通りクロが何かしてくれたようね。思う所はあるでしょうけれど、2人とも早まってはいけませんよ」


「はい、心得ております。全てはこのサテンフィン王国の為に」


胸の中心より僅か上、鎖骨と鎖骨の間辺りに右手を当てながらニーアは会釈をしながらそう答え、アミィもコクコクと頷いて見せるとキリリと真面目そうな顔をして見せた。しかしその挙動を前にレニアは堪え笑いをして見せると一拍置いて深呼吸し白と金が丁度交差するドレスの胸元を軽く叩き、調子を整える。


「さて、これから忙しくなりますね。無事魔王封印と言う形で納まってしまった為にセディンカーマリアル家が大きく動く事でしょうし」


「これから3年……いえ、2年が勝負に御座いますね」


「貴女たちにもこれ以上に苦労をかけると思います、どうか力を貸して頂戴ね」


ニーアとアミィは彼女の前へ立つと膝を折り、稲穂のように頭を下げその言葉に応える。

玉座に腰を降ろす彼女はエメラルド色の瞳を今一度薄く細めると悲哀を含む表情を見せながら小さく微笑む。それはこれから起こる事が杞憂で済んで欲しいと言った懇願を何かへ向けたような顔で―――。



「しかし面白い子供でしたね。いえ、変わったと言うか不思議と申しましょうか……まだ小さいと言うのにあどけなさの中に死線をくぐった表情を見せ、こちらの一挙一動全てを見透かしたような眼差し。ヌネス様と初めてお会いした時を思い出しましたよ」


「―――確かに死線を見た孤児にしては裕福な者の身体付き、かと言って暗殺の手管とし教育を受けたにしては違和感しかない挙動……魔王による影響かと疑いもしたのですが違ったようですし異様の一言でした」


「その様な者に幾許の期待を持ってしまうのはわたくしが歳を重ねたからでしょうか……」


まだ小皺も無い顔でふふっと自虐を口にして少女のように悪戯な笑みを浮かべ、彼女は淡い期待を小さく零した。膝を突く2人は何も答えず、レニアは蒼天を眺めるかのようただ宙を仰いだ。














「ユウ! 大丈夫!? 何も無かった!?」


「あ、レオ……ぶわっふ!?」


レニア女王と謁見が終わり、牢屋からボクを案内してくれた甲冑兵士3人に連れられ行き着いた木造が暖かな広間でレオナの声が聞こえたかと思うと視界が浅黄色で覆われ、圧し掛かる重みでそれがレオナだと認識した。

140程度の低身長でヒョロガリな自分の身体じゃ150もある彼女の身体を受け止める事も出来ず、そのまま絨毯の上へ一緒に倒れ込む形に……むしろ押し倒されたような状況となった。下が絨毯だったお陰でいくらか衝撃は緩和され、芝生に転がったような調子でボクは頭を少し動かすと顔を起こす。



「あの、レオねぇ……大丈夫だからっ。あ、あと汚いって言うか3日もお風呂入ってないから多分臭いよっ!」


「こんな時に何言ってるのよばかっ!! それよりお母様に何か言われなかった!? 心配……したんだから」



マウントポジションでのしかかる彼女はボクの胸の上で両手を押し付けながら瞳を滲ませる。

潤んで光を見せる緑の目はエメラルドカットされた宝石のように煌めきながら柔らかい光を見せ、その中で生まれた光の粒は無色のジュエリーとなっていくつも零れ落ち、ボクの頬の上で跳ねては温かみを残して散る。馴染みのある顔と匂いを前に安堵しながら浅黄色のドレスも似合うなーなんて呑気な考えが浮かぶ。


「えーっと、しょ、食客? とか言う立場になったよ……まぁちょっと条件付きだけど」



その言葉で小麦色のブロンドを揺らすレオナは目が点になる。

同時に甲冑兵士の3人も困惑を交えた小さな声を零し、何かおかしな事でも言ってしまったかななんて冷や汗が伝い、目を泳がせていると眼前に広がる肌色へ視線が釘付けになってしまう。

―――レオナさん、仮にも王女様と言う立場なのでこの状態はマズイでしょと無防備に晒される太ももを前にボクの顔は熱を持って真っ赤に染まる。それはストーブに乗せたやかんが一気に熱を持って蒸気を上げるような感じで。

直視してしまったが最後、下腹部を圧迫するレオナの重みと柔らかさと温もりを更に意識してしまい、慌てて彼女をボクの身から離して座る。こんな状況下でも荒ぶる自分の衝動に思わず苦笑い。



「食客と言う事はお母様もユウを受け入れてくれたって事……? 条件付きって?」


自分がどんな状態で居たか気が付いたらしく、立襟が特徴的な露出が無いそのドレスの乱れた部分を赤面しながら彼女は整える。それは気恥ずかしさを紛らわせる仕草で、平常を装いながら疑問を向けて誤魔化しているが紅潮した顔のせいで隠しきれていない。

その質問に合わせて兵士の一人が金属音を響かせながらこちらへ歩み寄り、膝を突いて先程レオナのお母さんから受け取った誓約書を手渡してくる。

それを受け取ったレオナは無言で目を通し、安堵と戸惑いを混ぜた表情でこちらを見やる。

まぁ、言いたい事は何となくわかる……うん。




「良かった……もしかしたら界客って理由で何かしら不条理な事を課せられるんじゃないかって心配だったんだけど―――」


「はァー!! 戻って来たとの話を聞いておったがこの僕に挨拶も無しに遊んでいるとは、英雄様は随分と礼儀がなっていないご様子だなー!!」


レオナの清涼を含んだ心地良い声に割って入る喧しい不快な声。

同時に兵士たちは胸の中心に右手を当てながら金属音を響かせ跪くと、声の方へ頭を深々と下げた。

彼女は咄嗟に立ち上がるとそちらへ身を向け、ボクはその言葉を放った方へ視線を向けてゆっくり立ち上がる。

そこには金髪オールバックの15歳くらいの170cm近くある高身長の少年が腕を組み、仁王立ちで佇む。

真っ赤なフロックコートに同じく真っ赤なズボン。コートが開かれた胸元より見えるシャツには金刺繍が細かくあしらわれ、首元に下がる黒ネクタイには月や星の魔法陣のような刺繍がシャツ同様に施されておりその身なりからして上級貴族か王族関連の人間だと窺えた。


「ハッ! この僕がわざわざ出向いたと言うのにそれでも挨拶の一つも出ぬとはこれは3年後の選帝も勝負が見えたようなものじゃぁないか? なぁラキナ・ルゥ・レオナ!!」


レオナより濃い碧眼でこちらを見下ろすとその高身長を良い事に小馬鹿にした仕草を見せ、鼻で笑う。

彼女は困惑した様子で慌てて何かを口にしようとするがボクはあえて前に出てそれを遮る。

すると高飛車な少年は片眉を歪めてこちらに視線を移し、その瞳に僅かな興味を宿す。


「なんだぁ貴様は。見ない顔だな? 侍女如きが間に入るとは分際を弁えていない!」


「―――申し訳ありません。わたくしはつい先程レオナ様の食客となった新城悠と申します。無知と弁えながら、僭越ながらも申し上げさせて頂きますと、レオナ様は貴方様の高貴な雰囲気に圧されどうお答えして良いのか戸惑った次第で、寛大なお心を御持ちの方と見受け、わたくしが言葉を口にさせて頂きました」


今まで口にした事も無いような口調で、使った事も無い単語を淡々と吐き出しては後ろで跪く兵士たちと同様の素振りで胸に手をあてて膝を折っては頭を垂れた。

……自分はこの世界での礼儀作法は知らない。けれどここに来るまでにそう言う素振りはいくらか見た。

そして元の世界の情報とトシキたちが咄嗟にくれた情報などを擦り合わせ、それを実行した。

状況は正直わからないし、コイツが何者かもわからない。しかしハッキリ言える。

―――コイツはレオナにとっての敵の一人で、実状がわからない今は反発するべきじゃない。

ならボクが取るべき行動は言うまでも無く、



「何だ、侍女かと思えば子供の食客……? 魔族2人では飽き足らず随分と変わり者が好きな様子だなレオナは! しかしそこのお前は主と違って多少なり弁えがあると見た。良いだろう、僕の名を聞く事を許そうか」


不安を覚えつつ即席で取った行動は何とかなったみたいで目の前の少年には気に入られた様子。

後ろから小さな声で疑問形を含んでボクの名を呼ぶ彼女が聞こえたけど、状況が状況なのでスルーし、

「ありがとうございます」と答えて見せると彼はうんうんと小さく頷いて一つ咳払い。

にしてもスカートで跪くのって結構大変なんだなぁ、なんて思いながら気付かれないように少しめくれ上がった裾を整える。



「僕はセディンカーマリアル・パーディンズ・リスリム。ディーリス国、グラッセス国を納めるレーディンズ家と連なる血筋の者でセディンカーマリアル家を始めとし、サテンフィン王国を真に導く未来の国王」



高慢と自意識過剰を交えた光を目に宿しそう言い放つと彼は大きく一歩前へ足を進め、我が物顔で闊歩してはボクへ歩み寄り、膝を曲げて視線を合わせてくる。


「そしてボクはレオナの夫となる者……こうして見るとお前も悪くない顔じゃないか。よし、僕が王となったその時には僕へ仕える事を許してやっても良いぞ?」


ニタリといやらしさを含んだ笑みを見せ、品定めの視線を上下させながら下心を垣間見せた言葉を向けてきた。

怖気と悪寒が入り混じってボクの背中を這うけれど、昔コミケでリタカノコスをした際にハァハァと危険な息遣いをしながら写真を撮っていたカメコさんより随分マシに思えて心の中で思わず笑ってしまう。



「―――ありがとうございます、リスリム様」


これまでにない程、自分が出来る猫かぶりの笑顔をにっこり浮かべながら小首を10度程度傾げて見せると彼は満足そうに口角の端を動かす。よし、あともう一歩―――と心の中でボクは呟くとトドメと言わんばかりに男が喜ぶ媚びを交えた甘え声でそう答えた。

彼が胸糞悪いキャラ……になるように頑張ります。

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