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第五十五話 「はいはい男が細かい事気にしなーい!」

占い回

何と言うかこう、さっきの言動と言いどうなってるんだろう。

レオナは相変わらずじっとこちらを睨み、ぷくっと赤い頬を膨らませ……キミは子供か。何て言葉が頭の中で浮かぶも同時に別の言葉が思わず出そうになるのを堪える―――。



「あれあれ? 私がちょっとハグしちゃったからヤキモチ?」


「ち、違います!」


クロカさんの口を通じて堪えてたものが口にされる。

でもさっき私のとか言ってた気がするんだが―――


「でもさっき私のって言ってたじゃーん? もしかしてそー言うカンケイ?」


「そ、そそそそそう言うのじゃないです! 違います!」


いたずらに笑いながらそう向ける彼女の言葉に即否定を放つレオナ。

確かにそう言うカンケイでは無いけども……即答されるのはツライな、なんて思いながらボクは傍観する。変に何か言ってこじれても面倒だし。


「クロカー、あまりウチのお姫様いじめないでもらっても良いかしらぁ?」


「悪かったってばー。あ、そうだ! じゃあお詫びに占いをしてあげましょーか。ね?」


「う、占い?」


クロカさんはそう口にすると胸元近くて手をパンッ!と叩く。

そのまま「―――よっと」と言いながら手のひらを水平になるように開くとその中には両手に収まる程の包みが。

大きめのハンカチに包まれた物で彼女はそれをテーブルの上に置くと丁寧に開く。

中から現れたのはボクの世界で見覚えのある物。

それはトランプの元になった物で、占いと言えばとても有名な―――


「タロット……カード?」


「おー、悠知ってるのかー。こっちの世界に来て記憶を掻き集めて頑張って作ったのよねぇ。多分元の世界のタロットとほぼ同じよ。ほら」


「そうなんですか……。うわ、ほんとだ。漫画とかアニメに出てきたカードと全く同じだ!」


「でしょでしょー?」



手物のカードを一枚めくり、絵柄を見せてくれる。

カードを手にする彼女は得意気に微笑むとこれまた嬉しそうな笑顔をボクへ向ける。

この世界で界客がどれほどいるのかわからないけど、タロットを知ってる人なんて結構限られてるし相当嬉しいんだろうな。

子供が自慢げに宝物を見せるような、そんな顔を浮かべる。


「タロット……って何ですか? カード?」


「私の世界で占いに使われるカードよ。凄く当たるからビックリするわよ?」


「カードで占いとは……南部で有名な精霊占いのクワディアみたいだな。あれはカードの他に石も使うが……」


占いと言う言葉に意外にもヴィグフィスさんが反応してビックリ。

そう言う事には全然興味が無いイメージだったんだけど。

そんな事を思いながら視線を向けてると、


「妻が精霊使いだったのでな」


またもや意外な事実が。

王国騎士と精霊使い……どっかのゲームで普通にありそうな組み合わせだななんて思ったのも束の間、先程あれだけ魚料理を平らげたってのに今度は魚の煮付けへ手が伸びてる王国騎士の姿を見て、その想像はログアウトした。




「じゃあレオナ、今貴方が気になる一つの事を思い浮かべながらこのカードの中の好きな1枚を抜いて? どこからでも良いからねー」


クロカさんとレオナの周りにあった食器類はいつの間にか片付けられ、拓けた卓上にタロットが伏せたまま扇状に広げられる。

言われた通りにカードの上で彼女は迷う。

その表情は占いだと言うのに真剣な表情……もしかしてこの世界における占いと言うものはボクの世界で言う占いとは少し意味合いが違うのかな? と思ってしまうほど。


そしてレオナはおずおずと真ん中辺りから1枚を引き、左右の1枚がいくらかズレる。


「はい……あらら。他の子も付いてきたみたいね」


そう口にしてレオナが選んだカードと、付いてきた左右のカードを手に取る。


「えーっと、選んだのがTHE LOVERS……恋人たちね。付いてきたのはレオナから見て右がカップの2、左がワンドの10」


カードを見てふむ、と彼女は唸ると暫く黙る。

記憶が定かならタロットは扱う人が扱えば過去も未来も視てしまうと言われ、占いの道具の中では細かい物が一番出るだなんて言われていた。

クロカさんはこの世界で黒艶こくえんの魔女とか時詠の巫女だなんて言われる存在だから、きっと細かい物が視えたのだろうか、とボクは思った。


「あーそう言う事ね。気持ちが傾いてるけど、だからこそ言えてない内容があるって訳……か。これは本人前に居るから話すとマズそうね! 結果は後にしようか!」


ニヤーっと笑うと目を細め、彼女はボクを見やる。

言わんとしてる事は何となくはわかるけど、そう言われると内容が凄く気になる……なんて思ってレオナに視線を向けると目線が合ってお互いに顔を背け。


そんなやり取りを眺めるクロカさんはにっこり笑うとそう口にしてレオナの選んだカードをカードの束に戻し、テーブルの上で左右に動かしてゆっくり混ぜ始めた。

ゆっくりゆっくり、カードがばらけすぎてテーブルから落ちないように気を遣いながらテーブルの上で混ざるカード。

それを見ながらボクは凄く混ぜ辛そうだなぁとか思いつつその光景を眺める。



「トランプみたいに切っちゃうと怒っちゃうからねー。オモチャみたいな扱い方すんなー! って拗ねちゃうんで扱い方が大変なの。良い子なんだけどね」


彼女は小さな手で一生懸命テーブルの上のカードを優しく混ぜる。

でもその動きは手馴れた物で、拡げては纏めて、拡げては纏めてと器用にカードの束を両手だけで動かす。簡単そうだななんて思ってボクがやったら絶対こうはいかないんだろうなと思いながらじっと見つめる。



「よし、っと。じゃあ今度は悠ねー。さっき言った通り、す・き・な・子の事を思い浮かべながら選んでね?」


「え? ちょっとさっきそんな事言ってなかったですよね!」



「はいはい男が細かい事気にしなーい! さぁレッツトライ!」


反論の隙も許されず目の前にタロットが広げられる。

渋々カードに顔を向け、真ん中から右寄りの一枚が気に留まってそれを選ぶ。

そしてその一枚へ指を乗せ、引っ張り―――


「あれ、ボクも一気に付いてきちゃいました……」


「あらら、随分と張り切ってるわねこの子たち……いいよいいよ。絶対1枚じゃないとダメって事じゃないからー。そんじゃその3枚ね」


カード同士はそんなに言うほど重なっていないのだけど、選んだ1枚に磁石で引き寄せられたようにして付いて来てしまった。

彼女の口振りの通り、カードその物が意思を持っているのかのような錯覚をボクは覚える。

そして選んだカードを回収した傍から、1枚がはらりと落ちて他のカードの上へ伏せたまま落下する。



「うへ、4枚目……? 真下に残ってるとかちゃんと広げたと思ったのになぁ。拡げ損ねとか数百年振りなんですけど。しかも横向きかぁ」


ぬぬぬ、なんて声を漏らしながらそのカードを伏せて向きもそのままに自分の手元に動かす。


―――そう言えばタロットってカードの向きでも意味が違うんだっけ。


通常の向きが正位置と言ってカード本来が持つ通常の意味を示す。そして逆さまの状態だと逆位置と言ってカードの意味合いが全く変わったりする。

だから正位置で悪い意味合いのカードがでたとしても逆位置では良い意味になったり、逆もまた然り。

その細かな組み合わせで意味を読み取り未来を詠んだりするのがタロットの基本だったと思い出す。




そしてボクが選んだカードの左右にくっ付いてきたカードを見て、彼女は暫く黙る……。


ボクが選んだ1枚目は草の輪っかの中に女性が描かれたTHE WORLDの文字が入ったカード。

もう1枚はACE of WANDSと書かれ、雲の中から出てきた手が一本の棒を持った絵が描かれている。

残りの1枚は教会みたいな場所に3人の人が描かれたカード。


「恋愛に於いてワンドのエースは生命力とかの意味が転じて……男のアレの意味も含んでー? そこにコインの3? え、うそ。3人? いやでもメインがTHE WORLDで世界って事はそれを中心にワンド1とコイン3で……まさか4人?」


一瞬、アリエナイと言った視線をボクニ向けたかと思えば険しい顔で何かブツブツと言い始め、先程の可愛らしい顔はどこへやらのクロカさん。

その様子にレオナは真剣な表情でじっと見つめ、聞き耳を立てる。

ボクの占いの結果だと言うのにボクより興味津々な様子。


唸るクロカさんをから視線を逸らし、ルシードさんとヴィグフィスさんへ視線を逸らすと彼らも興味ありげにこちらをガン見してて少しびっくりする。

そんな彼らと視線が合い、


「時詠の巫女の占いなんて普通どんだけ望んでも叶わぬ物だからな。その様子を見れるだけでも自慢話の一つになる」


なんてヴィグフィスさんがフフンと鼻を鳴らす。

多分、奥さんに送る手紙のネタにでもするんだろうなぁとか思いつつボクは苦笑。


「ああ、そう言えばこの子まだ見てなかったね」


そう口にして先程ボクが選んだカードの下にあった1枚をめくる。

そこから現れたのはカンテラを持った老人の絵。カードにはTHE HERMITと言う文字が書かれている。


「ハーミットか……悠から見て横正位置。過去がエースのワンドで現在がワールド、未来がコインの3。で、これから分岐する裏の意味でハーミットか…………。う、うん。よっし! 悠も結果はあとでね!」


「え、ええ!? 今ここで教えてくれるんじゃないんですか?」


「だぁって一枚引きのつもりがこの子たち言う事聞いてくれないんだもーん。全部で7枚とか聞いて無いしぃ? あ、そうだレオナも折角だからもう一枚引いておこうかー。8枚にしちゃお」




ボクの言葉をはぐらかしてレオナにカードを選ばせ、一枚めくり―――


「ごめん。これもあとでねッッ!!」


彼女は引き攣った笑顔でめくったカードを大慌てで伏せると乾いた笑い声を上げる。

何と言うか、こんな適当にしか見えない占いでほんとに当たっているのだろうか? なんて疑念の眼差しを向けながらチラ見えしたカードの絵を思い出す。

そして記憶の中からそのカードの意味が思い出され、彼女が何故動揺しながら伏せたのか何となく理解。

クロカさんが伏せた8枚目のカードは雷が落ちて塔から人が落ちてる絵が描かれた物……。



THE TOWER―――正位置でも逆位置でも崩壊の意味合いを強く持ち、そのカードはある意味、出る事を一番怖がられるカード。

タロットは扱い方をきちんとして占うと怖いくらい当たりますよね。

一枚にある情報量が多く、抽象的な物や占う側のインスピレーションで色々と変わりもするので凄く好きです。

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