表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/134

第四十八話 「ハァハァとかしてないからね!?」

長くなりそうだったので分割しました。

『う、うぉおおおおお! リタきゅん、200年振りのリタきゅんにござるぅううううぉおおおおおおおっっっ!!』


魂の底から沸く思いを歓声に乗せた叫びがボクらまで届く。

炎色の魔王の身体は更に光を帯び、そのまま金色に輝いて髪の毛が逆立ちそうな勢いで変なオーラを纏い始める。




「………あれ? リタカノ化したらどうにかなるんだったんじゃ」


(テステス、聞こえるー? めんどいからリンク直接繋いでみたんよ!)


先程のウメコと言う女の子の声がノイズ混じりに脳内に響いてくる。

ボクが最初に死にかけた時に聞こえた声と似ている。

敵なのにこうやって喋ってるのってどうなのかなんて考えながらボクは構わず返答をする。


「さっき言ってたどうにかなるって結局効果あったの?見た感じ悪化したようにしか見えないのだけれど……」


(それなんだけどゴロウちゃんまで変になっちゃって困ってるんよ。

暴走してるAlpとの繋がりが一瞬でも落ち着けばトシきゅんも自我を取り戻すんだけど……ちょ、ちょちょっ!? ゴロウちゃん何してるん! ちょ、い、ひぃやーっ!!)


脳内に響く声は甲高い声で悲鳴を上げる。

どうやらトシキとキサラギって人の意識は表に出てきてない様子だけど、逆に別の人が暴走しはじめたみたい。


その証拠にと言うか何と言うか先程までボクに対して執拗な顔を向けていた魔王は、大きく首を振りながらオットセイのようにオウオウと声を上げている。

……一体、中で何が起きているんだ?



(萌えっ子! 萌えっ子ぉー! もうこれ多分限界だし、無理だからごろうちゃんがメインな内にホワイトプリンセスの聖法術でどうに……イヤァアアー!

ちょっと何でトシきゅんとアキラさんまで出てきはじめてるん! もうなんなん! マジなんなん!)


ふざけた喋りだけどその切羽詰まった声はボクへSOSを飛ばしてくる。

どうやらさっき暴走しまくってた2名もまた出てき始めているみたいで時間もあまりないようだ。

ボクは一度深呼吸して、左の手のひらを目の前で握っては解きと繰り返して気持ちを落ち着ける。




「よぉーっし! それじゃーババァーンとドドーンと派手に決めちゃうんだから、ね!」


リタカノのキメ台詞を元気いっぱい口にする。

それは自分に言い聞かせるように。

そして右手のステッキを大きく振る。


それは金色ベースに黒の紋章が入り、赤や緑と言った色とりどりの宝珠が付いた、1m10cm程ある十字架と言う名の鈍器。

もう一度、大きな輪を描きながらステッキを振るうとボクはくるんと軽やかに構える。


「あの、ユウ………?あのお話はユウのお話だったの? 作り話じゃなくて、全部本当のお話だったの?」


ヒーローショーで憧れのヒーローを目の当たりにして期待の眼差しを浮かべる子供のような眼でボクを見つめるレオナ。

気が付けばひしっとボクの服の袖を強く握り、こんな状況下だと言うのに興奮冷めやらずと言わんばかり。

そんな彼女を裏切るのは心苦しい衝動に駆られたボクは言葉に詰まる。


「え、えとねーそれは、ナイショ!」


「そっか……。リタちゃんは正体バラしちゃダメなんだったね。忘れてた。それじゃあ今はリタちゃんって呼んだ方が良いのかな?」


前に話したリタカノの話を思い出したのかうんうんと一人頷いては納得してくれた様子。

何か騙しているようで凄く罪悪感を感じる…心の中で彼女にごめんねと謝りながら「後で説明するねと」伝える。



「それに今はまだ戦いの最中だから油断しちゃダメだよー? よっし、光よ光さん。みんなを守るお城になって! ホワイト・セイクリッド・キャッスル!!」


周辺一帯を光が囲み、それはオーロラのように輝くと薄く透けた虹色のお城になる。

魔法少女リタカノの使うマジックの一つで暫くの間、光が悪いものから守ってくれる。

そのお城を見て無邪気に声を上げるレオナへボクは身体を向けると一拍を置いて話しかける。


「これからボ……わたしは魔王と戦う。でもわたしの力じゃ魔王を倒す事は出来ないと思う」


その一言にレオナの表情は一気に凍り付いた。

今のボクは魔力では無くAlpを基本とした戦い方になっている。

そしてそれは魔王も同じでお互いに決定的なダメージを与える事は不可能だ。

それは水と水同士で、もしくは風と風同士でぶつかり合うような物。

ぶつかった瞬間、その衝撃で互いの原型を崩す事は出来るけど、結局は混じり合い、すぐに元に戻りと暖簾に腕押し状態。

そうなるとレオナの持つElfの力が不可欠になる。


「わ、私の力でも無理よ…。だって私のElfの力、聖法術を使った聖封印術が通じなかったんだもの」


「……Alpの力を持つ魔王はElfで倒せるんじゃなかったの?」


「私もそう思ってた。でもさっき2度も聖封印術を破られて……あれ以上の術は私は知らな―――」


弱々しく語るレオナの言葉を赤い閃光が遮る。

しかしその光を伴った爆炎は事前に張り巡らせた防御マジックのホワイト・セイクリッド・キャッスルにより阻まれて霧散する。

虹色の城はその衝撃で小さく揺れてはすぐに元に戻った。



『いよォおお……? ウチらと殺し合いの最中に女とペチャクチャトークタイムたァ随分ヨユーぶっこいてくれてんじゃねェか、あああァん!?』


轟音が上から降ってきたかと思えばヤンキー口調の魔王が光の城の目の前に。

巻き上げられた土埃から緋色を覗かせ、先程まで赤かった瞳の色は白色と変わり、車のハイビームみたいに発光する。


『邪魔くせェウザってェ! 男らしく小細工無しでこいよオルァ!』


罵詈雑言と共に向けられる攻撃。

しかしそれはホワイト・セイクリッド・キャッスルの効果によってことごとく無効化され、巻き起こった暴風すらボクらに届かない。


『いつまでぼーっとしてやがんだよてめぇ! なめんのも大概にしろよユウ!! あぁマジ!ほんっとガチで! マジでガチでムカつくイラつく腹たつ!!』


渾身を込めた一撃も弾かれ再び癇癪を上げる少年の声。

どうやらキサラギ、トシキと意識が入れ替わっている様子。

ボクを狙うと言う同じ目的ゆえにか、2人の人格は入れ違いに現れては暴言を吐いては攻撃を仕掛けてくる。


「ホォーリィー……キャノンスピアー!!」


ぶんぶんと鈍器ことゴッドステッキ・スタッフオブホーリクロスを振り回しながらリタカノマジックを唱える。


杖先から出る光の粒子が集束し、巨大な銀色の槍を象ると鈴の音を奏でながら魔王へ一直線に飛んでいく。

正面からそれを受け止める巨体はそのまま踏ん張る足を擦りながら後方へ吹っ飛ぶ。


『こ、これは21話、34話、42話、最終話で使われたホーミング機能付きの一定時間攻撃を続ける光系マジック! リタきゅんマジックにござらんかぁああああああ!』


ござる口調の男性による、ご丁寧なマニアック解説がドップラー効果を得ながら遠ざかる。


70m程離れた場所で爆発と共に立ち上る砂埃。

一応距離は取れたのは良いとして、魔王の暴走化は止まっていないしレオナの力が効かないってどうするか。

リタカノの魔法でいくらか時間稼ぎも出来ても、根本的な解決にならないしなぁ。



(それはウチらが、と言うかトシきゅんがレオナのElfを持ってるからなんよ。よ。

自我が飛んじゃってるから聖法術を使われると反射的にElf使っちゃって全部無効化されるん!)


「魔王がレオナのElfを持ってる……?」


ウメコさんから来たその話に対し、思わずボクは言葉が漏れる。

Alpの集合体なのに何でElfを持てるんだ?

と言うよりどうやってレオナのElfを?

もしトシキがElfを吸収出来る何かを持っているとするなら、レオナの力で迂闊に攻撃も出来ない。

最悪八方塞じゃないかなんてネガ思考が頭を過り、ボクは頭を振る。

何か方法があるハズ。どうする?どうすれば?と自問が続く。


―――彼女なら、リタカノならどうする?


そんな困惑をする中、心の底で呟かれたその言葉。

好きだったアニメの中のあの子なら諦めずに、どうするだろう。




「……多分それは、リタちゃん、ううん。ユウが傍に居たからだと思う」


ボクが吐いた独り言に暫くしてからレオナがそう返してきた。

気まずそうな、言うべきかどうかとためらっていた表情。顔はこちらに向いているが逸れた目線がその感情を物語っていた。



「ユウと魔王は繋がってるって話を聞いたの。

そして私とユウはここに来るまで、寝る時も一緒だった。Elfと言っても魔力と同じように体表を巡っていくらか霧散するし、触れれば相手に伝わるの。熱と同じように」


「いえーっす! そう言う事なん。そこのレオちーが君を抱き枕にして寝まくってたからー、それをトシきゅんが利用してElfをギュンギュン回収しちゃってこっちにあるって訳ー。君が毎晩毎晩ハァハァしながら耐えてたのが裏目に出ちゃったんね! 仕方ないんね!」


「そう言う事か……ってハァハァとかしてないからね!?」


「え? ウチ、君が夜中に一人でハァハァ頑張ってたの知っ―――」



トンデモナイ話を始める彼女の口をボクは音速を超えた動きで静止する。

ジタバタ暴れるその子を胸に抱えてこれ以上喋れないよう拘束。


いやまぁ否定はしない、否定はしないけどそんなにハァハァはしていない。

そこまでは。うん、そこまでは。

と言うか可愛い女の子がネグリジェでノーブラで抱き付いて来て大人しく出来る健全な中学生が居る訳がないじゃないか。仕方ないじゃないか。

―――なんて言い訳を自分にしてるとレオナからの視線が……痛い。



「……あの、リ、タちゃん?」


「いや、あの、してないよ!そう言う事! うん、ちょっとドキドキしただけと言うか!

いや、ゴメンなさい、ちょっとはした……かも」


「その子、なに?」


「―――へ?」


戸惑うボクを余所に彼女が指差す先を見て変な声が漏れた。

そう言われるボクの腕の中には1/8フィギュアサイズの女の子……妖精キーリエこときーちゃん。

呆然としたせいで力が弱まった所から顔を出し、「ぷは!」なんて声を上げる。

しかしその声はキーリエのモノじゃなく、


「んもー! 急に酷いよ! 一応痛覚あるから苦しいんよ!」


独特の喋りをする、ウメコさんの声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ