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第二十七話 「―――肩車良いなぁ」

ちょっと短めです。

「ハーッハッハッハッハッハッハッ!こいつは愉快だなぁ!楽しいなぁ!アーッハッハッ!」


「ちょっとヴィグフィスさん!へ、変なところ触らないで下さいってっ!くすぐった…アハハハハッ!」


「フハハハハ!細かい事を気にしてるとおっきくなれないぞーう!」



彼はボクを肩車しては軽快にステップを踏んで高らかに笑う。その光景は休日に戯れる親子のようで、微笑ましいものだ。


ボクは彼の動きでスカートがめくれ上がらないよう、必死に押さえながらワーワー騒ぐ。

ヴィグフィスさんは弾けんばかりの笑顔を輝かせながら走り回る。




「しかし異様ねこの光景は…」


「言ってやるなローズよ」


「―――肩車良いなぁ」



目の前で繰り広げられるほがらかな2人の光景を眺めながら、呆然の一同。

約一名は別の事を内に秘めながら傍観してる様子だけど…


そんな3人が眺める光景を激しいフラッシュが白く染める。

続いてもう一発、またもう一発。更にまたもう一発。

ドゴン!バシン!ピシャァ!とボクの周りに落ちる激しい落雷。



その雷が落ちた後には獣の形をした消し炭や、人型の消し炭。


後ろを見れば「待てよ~コイツぅ」と言わんばかりに追ってくる魔物と魔族の群れ。

それを「渡さないんだから!」と言わんばかりにツンデレスキル・ミョルちゃんが集団に向けて爆音伴った爆撃を撃ち込み、ことごとく阻止する。


「アンタもちやほやされて浮かれてるんじゃないわよっ!」とツン要素も忘れていない様子で、ヴィグフィスさん目掛けて一撃をお見舞いしてくるけれど、肩車されたボクに阻止されてツン撃は霧散。



「そろそろ終わりそうね…。今まで苦戦してきた魔族相手すらも、こんな方法で一気に殲滅出来るのは釈然としないけれど」


見やる彼女の先に広がる雷の雨に翻弄される影の塊たち。

空中には黄金色に光る巨大な魔法陣がバチバチと音を立てては発光する。


魔障の霧から生まれた魔物や魔族は、人間を狙うと言う習性だけが常に働いてしまう。

そのせいで目の前を逃げ回る2人を追い回す余りに、上からの攻撃への対処が二の次になる。

その結果、易々と雷撃の餌食となっては次々と息絶える。







「――居城まで残り僅かと思っていたが、まさか移動していようとはな…」


先程、ルシードさんが苦々しい素振りで眼帯に覆われた右目を押さえながらそう漏らした。


居城と言われていた廃城には大量の魔物と魔族だけが残っており、肝心の魔王は見当たらず。


結果、廃城に入るや否やモンスターハウスと化した城内で戦闘。

とは言っても先程のミョルちゃん戦法によって魔法陣の中をひたすら逃げ回り、敵が全滅するまで待つと言った戦いをしていたので僕らの被害は一切出ていなかった。

ボクの方も攻撃した時に敵からMPを吸収するスキル、賢者の魔手スポイルマジックを併用しているので、実質は魔力消費無しでスキル発動してるようなもんだ。

戦闘後に風化によって原形をほぼ残していない城内をいくらか見て回る。

周りには砕けて倒れた石柱、所々めくれ上がった石畳、砕け散った石壁…。

大昔の栄光を象徴するかのような石像たちも砕け散り、栄光も虚しくただ無残に転がっていた。


そして見上げるその先の天井も殆ど無く、何かの爆発でも受けて崩壊したのかと言いたくなるような壊れ具合だった。

話によれば200年前に魔王が暴れ回ったって言ってたし、その時に被害を受けたのかな?と仰いでは覗く淀んだ空を見つめる。




「逃げた、と考えるにしては妙よね。それなら魔物は兎も角、魔族までここに居るのはおかしいわ。私たちの進軍が事前に読まれていたにしても、変ね」


「そうだな。道中の襲撃に関してはまだわかるが、この場所で時間稼ぎをする意味に合点が行かん」


「どう言う事なのルシード、ローズ」


「……何と言いますか、私の勘なのですが――」


その先を続けようか彼は迷う素振りでレオナへ視線を向ける。

彼女はそれに対して、何も言わずに見つめる。

ルシードさんはその彼女の真摯な姿を前にして、一度瞑目すると続ける。


「あくまで時間稼ぎ。そして試されているような……そのような思惑を感じたのです」


「時間稼ぎは何となくわかるけれど。試すって何を…?」


「この大陸に来て、最初の戦闘。あの時は魔物のみで魔族は一切居ませんでした。戦闘は回数も合計3回ほど。

その翌日、魔物と交戦して殲滅後に魔族の出現。戦闘回数も5回」


彼は初日からの交戦回数や遭遇した敵を述べて行く。


「3日目の昨日は霧の移動が予測より早まった上に、魔物と魔族の同時出現と更には交戦回数も8回と増えています。居城に近付くほど兵を配置していたと考え、疑問には思わなかったのですが…」


「―――私たちを一気に倒すつもりなら、対応出来ない数の魔物と魔族を一気に差し向ければいいのに、それをせずに分けてる…?」


「はい。この居城に向かうまで、今日戦った魔物魔族を一度に向けられていればかなり危なかったでしょう。にも拘らず魔王はそれをせず、兵を分割。

その数はまるで、我々が「どの数までが対応出来る」と熟知してるかのように。そして更には魔王自身が雲隠れ…」


確かにそう言われると今日の魔物魔族の戦闘を考えると、ボクらを倒す感じでは無く、時間稼ぎの為に差し向けたように思える。

にしてもボクらの実力の程をどうやって知ったんだ…?

戦闘してた近くに情報収集してた魔族でも居たって事なのかな。


一同は首を傾げて沈黙が続く。



「おーい!皆こっちに何かあるんだが!見てくれ!」



その沈黙を破るヴィグフィスさんの一声に顔を上げる。

彼に案内された先に一つの崩れた玉座…。

そして彼が指差す先には大きく文字が書き殴られている。


「文字なのだが、どうも古い文字のようでな。ルシードかローズか読めんか?」


血文字のようなそれを見つめローズさんは一瞬、口にするか戸惑った素振りを見せる。


「……明日、第五の始まりの門ペンタグラム…にて待つ」


憎々しさにも似た声色を混ぜてそう読み上げる。

ペンタグラムって…ボクの世界にもあった言葉。

確か、五芒星って意味だったような。

ローズさんは背を向けて文字から目を逸らす。

ただならぬ彼女の素振りに、皆は何も言えずに黙る。


「場所は私がわかるわ。この城の地下にある抜け道を通れば、3時間ほどでそこに着くわ」


振り返らずそう説明する。

ルシードさんたちは「わかった」と返すとそれ以上の追及はしなかった。

皆が壁に書かれた文字から離れる中、ボク一人は見上げてその文字を見つめる。

……また文字が読める。知らない文字にも拘らず。


「ユウどうかしたの?」


その場を去ろうとしないボクを覗き込んでくるブロンドの彼女。

にへらと笑っては「何でも無いよ」と返してボクは誤魔化し、レオナと一緒にみんなに続く。


文字が読めた事は別に良かった。

問題はその下にあった文字。

そこにはこう一言書いてあったのだ



『人誅』と。


それも、ボクの世界の文字―――漢字で。

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