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第1話 「あれ、はだ、裸っ!?」

「えーっと、レイヤーの方ですか?」


「レイヤー……? んーと私のところはそう言う部隊じゃないわ。

 それともキミがいたところはレイヤーって部隊だったの?」


 目の前にいる女性に対して、思わずそんな事を口走ってしまった。

 返答に対し女性は小さく首を傾げて何か考え込む。

 

 ……にしてもどう言う事なんだ?

 ボクは確かに自殺したハズ。

 なのに生きている。

 しかも彼女は誰なんだ?

 SNSで目にするレベルの高いレイヤーさんにも見えるけど……違和感がある。



「うん? どうかしたの」


「い、いえ……」


 動きに合わせて揺れるライトグリーンの髪。

 それはウィッグにしてはとても綺麗で、瞬きをする瞳は緑眼でコンタクトにしては澄んだ色だ。

 左頬に刻まれたタトゥーは美術品の彫刻みたいで、

 白い肌を強調する着こなされた黒のローブはとても艶やかで……。

 

 コスにしては馴染み過ぎてるような。

 ……もしかしてこれは死ぬ前に見てる夢?

 いやでも……。


 今一度そんな自問をしながらボクは周りを軽く見渡す。

 そして少し落ち着いた自分がベッドの上だとやっと気付く。

 多分、この女性に介抱されて運ばれたのだろう。

 

 どこの病院だろう?

 運ばれたってなるとおばさんに連絡行ってるよな……最悪だ。

 

 嫌な事を思い出した自分は、沸いた不安を抑える。


 どうしたものかと思う中、不自然さを覚えると意識はそっちに行った。

 

 この場所、病室じゃ無い……?


 おもむろに視線を動かした先には、木製の棚やハンガーかけ。

 そして部屋の中をよく見ればテント内のようで……変だ。

 いやそれだけじゃない、雰囲気が現実離れしている。

 家具がやたらアンティーク調と言うか、教科書で見た中世風だ。


「まだ記憶が曖昧みたいね……。

 キミ、自分の名前はわかる?」


「あ、えっと」


「そう言えば私の自己紹介がまだだったわね。

 私はローズ・アズライル。魔術師よ」


 髪の色だけでは無く、発言まで突拍子もない単語が出てきた。

 そんな職業聞いたのやってたネトゲか漫画かゲームくらいだよ。

 何かのアニメキャラを演じてるんだろうか?

 いや流石にそれは痛いを通り越して、色々と危ない……。


「……っ」 


 しかしそれはまた走る痛みが、強く否定する。


「どうしたの? 少し辛そうね」


「い、いえ……少し頭痛がするだけで、大丈夫です」


 ボクはそう答えながら、遅れて震える手を握り締めた。

 痛みによって思考をリセットされ、飛び降りた直前の事がぶり返す。

 ……飛び降りた時の事はほぼ覚えていない。

 フラッシュバックするのは、屋上から足を踏み外した時の事。

 踏む先が無くなった感触と、恐怖が一気に胸を貫いた感触。

 押し寄せる過去、過去、過去……。

 ――そこから先は、覚えていない。


 そして死んだと思ったら眼を覚まし、ここに居た。

 ラクになりたかっただけなんだけどな。

 ここが死後の世界だったとしても、正直嬉しくない。


「あまり我慢は良くないわよ?」


 

 すると彼女はボクの顔を覗き込み、柔らかく微笑む。

 ふわりと揺れるライトグリーンのロングヘアーは柔らかく揺れ、茶葉のような香りが漂う。

 それは不安を抱えるボクの心を落ち着かせ、同時に懐かしさをくれた。


「始まりの海にたゆといし母よ。今、苦しみを持ったその者へ安らぎを願う」


 言葉と共に彼女はボクの額へ手を添える。

 厨二な事を言い出したんで、ちょっとぎょっとする。

 でもその驚きは別の物に変わった。


 ――手が、光ってる……? 


「どう、痛みは引いた? 大丈夫って言う人ほど、嘘を付いてる事が多いものよ」


「は、はい……ありがとうござい、ます」



 本当はまだ痛かったけれど頭を撫でられ、思わずそう返事をしてしまう。

 そしてどこか安堵したのか、手の震えは落ち着いていた。

 

 しかし何なんだあの光は?

 動画とかならCGだろって言えるけど、そんな物じゃなかった。

 てか手が光るとかありえないし。

 

 もしかして異世界転生とか言う状態なのかな、コレ?

 じゃないと説明付かないような……。


「そう言えばお名前を聞いてなかったわね。良かったら教えてくれないかしら?」


 状況整理をする中、屈託ない彼女の笑顔に自分は安堵を覚えていた。

 でも、『不用意に他人を信用するな、また痛い目を見るぞ。また裏切られるぞ』

 そんな声が、胸を刺す。

 ああそうだ、駄目だよボク。


 お前はそうやって簡単に人を受け入れた結果、傷付いて、否定され……飛び降りたんだろ。

 だから心は、許すな。


「ボクは……悠、新城悠ニイシロユウです」


「ニイシロ、ユウ?

 改めまして私はローズ・アズライルよ。

 よろしくねユウ」


 彼女は微笑みと共に握手を求めてくる。

 ボクはおずおずとしつつも、手を出した。

 握った彼女の手は暖かく、冷えていたボクの体にぬくもりをくれる。


 ……人ってこんな暖かかったっけか。


 久し振りの人と触れ合い、そんな事を思い出す。

 そうか

 ボクは人と関わる事を避けて、心だけじゃなく身体までこんなに冷えて――


「いや、何か肌寒すぎる気が」


 感傷に浸ってみるものの、物理的な寒さを前に思わず我に返る。

 そして視線を下ろせば、その先は肌色一色。


「あれ、はだ、裸っ!?」


 訳が分からず声を上げて辺りを見回し……笑顔の彼女と目が合う。

 一瞬思考停止するが、ちょっと困り顔で微笑む彼女を前にボクはベッドに身を隠す。 


「うわぁああ!? うわぁあああ!? な、なんで裸!?

 ボク、制服着てたよね、裸で飛び下りた覚えないんだけど!?

 なんでー!!」


「ごめんなさいねぇ。

 ユウ君が着てた服、とても傷んでたらしくて……」


 イジメで裸に近い格好にさせられた事もあったし、アレに比べたらマシ。

 ……の筈なのに凄く恥ずかしいんですけど! 

 てか何ですっぽんぽんなのさ……おかしいでしょ!?


「ああ、そうだ。

 喉乾いてない? お水持ってこようか」


「い、いただきます!」


 ベッドに隠れたまま、ボクは大声で返答する。

 とりあえず恥ずかしい。


「そこに替えの服を用意してるわ。

 男連中は入ってこないように話をしてあるから、安心して着替えて」


 気を使ってくれたのか、そう告げると彼女はパタパタと音を立ててテントの外へ。


「はぁ……何なんだよもう……」


 気付けば半泣きになりながらそんな事を零してしまう。

 予想だにしなかった展開に、先程まで冷静ぶって整理した物は見事吹き飛んでた。


「てかファーストコンタクトで裸ってダメでしょ」


 恥ずかしさで熱を持つ頭を振って、気を取り直すとボクは整理を再開する。


「とりあえずまとめると……ボクは自殺した筈が異世界に飛ばされたって事?

 いやいや、流石に」


 改めてそう口にしてみるものの、馬鹿げた事をと自分で突っ込んでしまう。

 しかし先程のローズさんの格好や手が光った事を思い返すと、そうも言い切れない。

 そして仮にそうだとして、これからどうしたものか。

 

 そんな考えをしてると自分が異世界に来て、裸だった事をまた思い返しては固まる。

 これからの事を考えてもその事実が色濃く残るだろう。

 最悪、それは周りに知れる可能性もあるわけで―――


「ああもうやだ」


 気付けば独り乾いた笑い声が零れる。

 そしてボクは寒さとは違う悪寒で、身を震わせた……。




第一話が長い気がしたので分割します。

2016/05/28 第一話の分割

2016/10/28 描写の修正

2017/01/05 描写の修正

2017/01/08 分割

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