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☆第14話 「あうあうあー」

2017/01/08 13話の大幅修正の一部 ネトゲスキルと魔法魔術との違いを追記

「もぅ、そんなに拗ねないでーユウくーん?」


「す、拗ねてないですよ」


彼女は仔犬をあやす手付きでボクの鼻へチョンチョンと触れてくる。

何かあると子ども扱いされてる様な……。

それで否定をすると拗ねてると言われるし、困ったものだ。


「そうだな。

 お前の力とこの世界に於いての魔法や魔術の違いを説明していなかったな」


観念してなすがままに撫でられていたボクへルシードさんがそう向けてくる。

そして説明が始まると同時に彼女の手が止まるかと思えば膝の乗せられた。

ボクは仔犬か仔猫ですか……。

嫌がる事すら諦めた自分はそのままで話を聞く事にした。


「この世界の魔法と魔術は基本的に8段階に分かれており、

 影響力に合わせて第一、第二と段階が上がる。

 そしてその段階が上がると同時に自ずと消費魔力も増える。

 召喚は5段階目から数えられるが……今回は省略する」


そして治癒系は別系統で白魔法って言われるんだっけか?

前に少しだけ仮面さんから聞いた覚えがある。


「そしてその消費魔力を抑え、影響力を上げる為に詠唱や術式、

 または魔法陣を必要とする。

 仮にこれらを使わない場合は消費が上がる。ここまでは良いか?」


「はい、大丈夫です」


早い話が詠唱とかは魔力の増幅装置みたいな物って事だよね。

もしくは割引クーポンみたいな物かな?

術式クーポンって言う得点を使えば100円の物が30%引き!

なんと70円で買えちゃいます!

例えが変かもしれないがこんな感じだろう。うん。


ボクはそんな適当な解釈でいくらか理解する中、説明が再開される。



「そして逆に言えば注ぐ力や手順を変えれば同じ魔法でも別の形となる。

 ……これは言うよりやって見せた方が早いか」


「それなら私がやるわ。

 ルシードは術符作りで結構魔力使ってるでしょ?」


「ん? あぁ、すまない」


彼女はそう言って引き受けるとボクを膝から下ろすとポンポンと頭を撫でる。

そして手品を披露するマジシャンの様に手を動かす。


「じゃあ今から氷の魔法を使うわね? 

 ……霜を抱く風よ、華を見せて。エネフォナ」


バキン! と言う音と共に氷の華が空中で咲いた。

ボクの顔くらいはあるそれはゆっくりと回りながら周囲の空気を白く染める。

凄いな。ケナズと同じサイズはあるよ……。


「じゃあもう一ついくわね」


ローズさんはそう言って氷の華を消してボクへ向き直る。

そして自分が使っていたカップを手に取ると両手を添え、口を近付ける。

あれ、お茶を飲むの?


「―――エネフォナ」


名前を口にすると残ったお茶へふぅっと息を吹きかける。

すると残ったお茶の表面が一気に凍り、表面を冷えたもやが覆う。


「どう?」


「え、えーっと……」


「今の二つはね、同じ術なのよ」


「え!?」


空中に大きく現れた術とお茶を凍らしたものが同じ物……?

どう言う事なんだろうと思ったと同時に先程の言葉を思い出す。


『―――注ぐ力や手順を変えれば同じ魔法でも別の形となる』


「そっか。最初のは詠唱があったから大きな形で発動したんですね」


「正解。ユウ君よくできましたー♪」


正解のご褒美と言わんばかりに頭を撫でられる。

ふと思ったけどこの人はボクの反応を楽しんでると言うより、

理由を付けて触りたいだけなんじゃ?

まぁレオナより控え目ではあるけどスキンシップ激しすぎるよ。

―――あ。待って。

もしかしてレオナのスキンシップが過剰なのってもしかして……。


「それじゃー次ね? はい」


「……えと、はい?」


「次はユウ君の番」


そう言って手渡されたお茶入りのカップとローズさんをボクは交互に見る。

へ? どう言う事?


「私と同じ様にユウ君もカップの中身を凍らせてみて。

 さっきの報告書通りならユウ君も氷系扱えるみたいだし、出来る?」


彼女はにっこりとほほ笑む。

ああそう言う事か。

確かに氷系のスキル持ってるけど……凍らせるだけってどうやれば良いんだ?

スキルレベル下げるにしても威力とHit数が違うだけだしなぁ。

ルシードさんも期待する様にじっと見てるし断り辛い……。


いや、待てよ?

さっき言ってたじゃないか。

―――注ぐ力や手順を変えれば、と。

ならいつもより少な目にと意識しながら発動すれば。


「わかりました。やりますね……凶雹の粒ハガル!!」


でもいつもより少な目っていつもはどれ位の魔力使ってるんだ?

発動と同時にそんな雑念が沸き、


『バキィン!』


と金属音にも似た音が響いてすぐさま現実に引き戻される。

そして視線を上げれば手のひらサイズの氷塊はお茶の上でゆっくりと回り、

その冷気をカップ伝いにボクの手へ伝える。

冷たさを覚えたと同時に急激な温度変化はカップへヒビを入れる。


「冷たぁあっ!?」


ドライアイスを素手で握ったみたいな感覚を前に慌て、

カップを離すと一緒にハガルが霧散する。


氷系の時点で冷たいのは当たり前だけどナニコレ!?

……ってそうだったハガルって凍結効果持ちじゃん!

隣接する物を凍らせるんだからボクにまで影響出るに決まってる!

てか魔法効か無いハズなのに何で自分に凍結効いてんの!?

ってあれか、カップが冷えたのがボクに来ただけか!

あうあうあージンジンする~っ! ってカップも割れてるぅ……。


「ちょっとユウ君! だ、大丈夫?

 ごめんなさいね、私が変な事させたせいで……」


「だ、大丈夫です。それよりカップダメにしちゃって……ごめんなさい」


「あぁ大丈夫よ。それならすぐに直すから」


割れたカップを拾おうと手を伸ばすと慌てて止められる。

そして彼女は宙で指を動かすと小さく何か唱える。


「―――再生リタナリー


言葉と共にカップの欠片は寄り集まると逆再生する様に修復されていく。

その光景に恐る恐るカップ覗き込めば中には零れたはずのお茶が揺れていた。


「凄いですね。再生魔法ですか?」


「無機物専用の白魔法と言った所かしら。

 対象に自分の魔力が籠っている状態で尚且つ、

 それに対する知識が無いと使えない扱いがちょっと難しい術よ」


難しいとか言いつつサラッと使って見せる辺り凄い……。

それに比べてボクはそう言うスキル無いしなぁ。


「で、今のが殲滅特化型簡略魔法及び魔術の説明に繋がるんだけど」


少し落ち込み気味に顔を下げるボクへローズさんが話を戻す。

そう言えばそんな話をしてたのすっかり忘れてたよ。


「ユウ君の力は私達の使う術と違って細かな調整が出来ないのよ。

 言ってしまえばその形で完成してて、不変な物。

 そう言う効果をもたらす事だけを目的とした術、みたいにね」


確かにそうだな。

スキルレベルがいくらか調整出来ても他はほぼ変動しない。


「そしてこれに似た物が私達の世界にもあるのだけれど……

 今、ルシードが作ってる術符とかそうね。

 別名・簡易魔法とか言われてるんだけど、

 いくらかの調整は出来ても細かな事は出来ないの」


ああ、それで『殲滅特化型簡略』って事か。

ボクのスキルは確かに強力だ。

しかし威力はレベル内を変動するだけで制限がある。

そして魔力もといMPも同じく固定化されている。

仮にこれらが変わるとしたら装備とかバフで変動するけど、

彼女の魔法の様に細かな調整は無理だ。

それに今装備ないしなぁ。

てか現実世界にそんな物あってもおかしい話だけども……。



「まぁだからこそユウの力は我々にとって大きな助けになるだろう。

 即座に圧倒的な火力を持った術を発動出来る。

 今はまだ手探りな部分が多いが、

 いずれ魔王討伐の際に一番の力となるのは明白だ。

 安定と言った物ほど信頼出来る物は無い……頼りにしているぞ」


いくらか気が滅入ったボクへルシードさんがそう向けてくれる。

微笑む瞳は柔らかくボクを見つめ、ボクはその色に少し強張る。

と言うのも気のせいかその奥に何かあるのが見えてしまったからだ。


彼は優しい。

色々と気を使ってくれるし、気にかけてくれる。

短い間、一緒に生活した中でボクはそう感じた。

しかし同時にもう一つの側面も見えてしまった。


それらは全部『レオナの為』であると。


レオナが王女様と言う点を考えればそれもおかしな事じゃないし、

それに対してボクは不満は無い。


だがガーディアンナイツは魔王を倒す為のメンバーだ。

その数は魔王討伐と言う目的の為にはあまりにも少なく、

彼らが強いと言ってもやっぱり無謀に思える。

そして同時に彼女を守ろうとする彼らの意思に対して、

目的が矛盾してる様にしか見えないのだ。


「あの、ちょっと聞きたい事があるんですが……良いですか?」


「どうした?」


聞くべきかどうか迷ったけど、勇気を出して胸の中の疑問を押し出す。

仲間なら知らなきゃいけない。

連日、それとなく聞いたけどもうまく誤魔化された。

なら……


「魔王について教えて下さい。

 あと……レオナが英雄と言われた意味を全部、聞かせて下さい」


瞳の奥の何かをちゃんと確かめるべく、踏み込んだ。

ハガルスキルの詳細は後日追記

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