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第12話 「だいしゅきホールドってヤツじゃ」

2017/01/05 描写の修正 分割化

「じゃあおやすみなさいレオナ、ユウ君」


夜もだいぶ更け、就寝の時間になった。

ボクらはローズさんと挨拶を交わしてベッドの上で寝る準備をする。

彼女は先日の魔族襲撃で色々やらなきゃいけない事が残っているとの事で、

ヘルプを求めるボクに『ゴメンネ』と残しテントを後にした。



「……よし、じゃぁユウも塗らなきゃね」


「えっ? いあ、ボ、ボクはだいじょ―――」


「ダメよユウ!

 ちゃんとしないと後が大変なんだから! ハイ、手を出して!」


気付くと彼女は寝る前の準備のクリーム塗りを始めており、

自分の腕を塗り終えると声をかけてきた。

拒否しようにも凄く怒った顔でこんな調子で、拒否出来るはずも無く……。

ボクは渋々腕を出す。



今のボクらはこのテントの中にあるクイーンサイズ程のベッドの上で二人きり。

女の子を演じろと言う条件の為、今のボクは寝る時も一緒だ。

そしてその際もこうやって女装をしてレオナと一緒なのだが……

色々と心臓に悪い。

『裸の方がまだマシじゃ?』

と思えるネグリジェ姿もそうだけど、彼女が積極的過ぎるのだ。


日頃、ボクへ無防備に触ってくるのは当たり前。

何かあると抱き付いて来たり、喋る際の距離が凄く近い。

それだけ心を許してくれてるってのは嬉しい。

しかし故に性別を偽ってる身としては心苦しい。

後、バレたらどうしようと恐怖がハンパない。




「はいじゃあ今度は逆の手ー。

 このクリームは保湿だけじゃなくてゆっくり眠れる香料も入ってるんだよ」


「これ、レオナと同じ匂いがするね」


「うん、私のお気に入りなんだー」



それはいつもレオナから香る良い匂いの一つだった。

リンゴの甘さとオレンジのスッとした清涼さが混じった香りで、

レオナがいつも漂わせている良い香りだ。

香水だとばかり思ってたけど、クリームだったんだなぁ。


「ほらユウ、ちゃんと腕ぴーんってして」


「は、はーい」


しかしどうしたもんか。

彼女の柔らかな手指が腕に触れ、ボクは身が強張る。

生前女性に触れられても平気だったとは言っても、

その殆どが姉さんだったから大丈夫だった話で……。


正面を見れば同じくネグリジェ姿のレオナが視界に入り、

見ない様にと視線を上げれば彼女と目が合い、微笑まれる。

かと言って視線を明後日に向けるとまた怒られるし……

どこ見たらいいのコレ?



「ハイ、おわり!

 じゃあユウ、今度はわたしの背中お願いー」


「わかったー。って今日も!?」


声を荒げるボクをおざなりに彼女はクリームの入った器を置く。

するとそのまま何の抵抗も無く目の前でぺろんとネグリジェをめくり上げた。

そして彼女の膨らみかけの小さな胸と一緒に背中が露わになる。

……目の前に晒される白雪色の肌。

ボクの見た目が11歳と言えども中身は14歳だ。

しかも自分は男なのである。


レオナの細いうなじ、小さな背中、柔らかな曲線の腰―――。

そしてチラ見えする肌色と桜色……。

これら全ては思春期真っ盛りのボクには刺激が強すぎる。


「ユウはやくー」


そんなボクの気持ちもいざ知らずレオナは催促の声を向ける。

急かされたボクは言われるままクリームをいくらか指に掬う。


「じゃ、じゃあ塗るよぉー……」


ボクは高価な宝石に触れるみたいに手を伸ばし、

眠る高貴な獣の鬣に触れるように手を動かす。


好きな子の素肌に触る……。

ボクの人生の中で一大イベントも良い所である。

しかし悲しいかな、性別を偽る今のボクには只の拷問だ。

そして映る無防備な姿を前に思わず前屈みである。



「―――ん、ありがとう」


「じゃあ終わりだね。フタ締めるね」


ボクは一日の最難関を越えてほっと一息零し、クリームのフタを締める。

すると彼女が緑の瞳をパチクリとさせ、その手を止めてきた。


「レ、レオねぇどうしたの?」


「まだユウの背中、塗ってないよ?」


クリアしたと思ったレオナ検問に引っ掛かった!

しかしここを抜けないとボク死んでしまいます。

うまく行けばクリーム塗りで性別をバレずに通り抜けれるかもしれない。

しかしその前に心臓が持たない自信があります! はい!


これは何としても誤魔化さないと……。


「実はさっき、ローズさんにお風呂上がり塗ってもらったんだ!

 腕だけレオねぇに塗ってもらおうと思ってやってなかったんだー!

 だ、だから他はぜぇんぶ終わってるよぉ! 大丈夫!」


「……そうなんだ。ちぇ、つまんなーい」



咄嗟の嘘に彼女は口を尖らせながら納得してくれる。

危なかった……。

これからはローズさんに塗って貰ってるって事でやり過ごそう。

あとで彼女にお願いしないと。


そんな事を考えながら寝る準備を進め、ランプの火を小さくする。

するとベッドに潜り込んだレオナはこちらを見つめ、

何かをねだる様に顔を揺らす。

あ、もしかしてこれは……。


「そう言えばユウ、昨日のお話の続きまた聞きたい」


やっぱり。



「昨日の続きって魔法少女リタ・カノの話?」


「うんそれ! また聞きたい!」


昨夜、レオナを寝かせる為に好きなアニメの話をしたんだけど、

凄く気に入られて一日中また話を聞きたいとねだられた。

仕方ないのでまた夜に聞かせてあげると何とかなだめたんだが……

すっかり忘れていた。



「えーっとどこまで話したっけ……

 たしかキーリエとことりちゃんがケンカした話までしたんだっけ?」


ボクは昨日寝る前に話してた内容を思い返す。

話したのは魔法少女・リタ☆カノと言う小さい頃に好きだったアニメだ。

昔に姉さんとハマってたアニメなんだけれど、少し聞かせたら気に入られた。

何でも展開が斬新だとか何とか。

ローズさんに少しそんな話をしたらこの世界では悪と善がはっきりしてて、

悪を倒したら皆幸せになって終わりな物語が当たり前らしい。

しかも主人公は大体がどっかの王族だったり神の末裔だったり、

最初から特殊な血筋なのが当たり前なんだとか。

なのでお決まりのテンプレなお話ばかりで面白く無い物が多いらしい。



対してボクが聞かせたリタカノの主人公は普通の女子中学生。

そして魔法少女になった経緯もたまたまと言うアバウトさ。

この世界のレオナにとってリタカノの話は型破りも良い所だったみたい。

そんな関係で彼女はリタカノの話にハマったと言った具合だ。


「じゃあえーと次は5話からになるね。

 ……この話はキーリエがシュークリームって言うお菓子にハマっちゃう話で」



ボクが語る魔法少女の話を子守唄にしながら彼女は眠りに付く。

そしてボクも寝息を立てる彼女を傍にウトウトと眠りに……





「―――寝れない」


ボクは思わず閉じていた目を開く。

隣ではレオナの寝息がスースーと。

ええそりゃもうスースーと。


「ちょ、近い近いってか……マッテマッテ!?」


ボクの耳元へ吹きかかる息と一緒に寝息が響く。

寄ってき過ぎだろうと思い、身を捩るが思う様に動けず。


視線を動かすと彼女の細い腕がボクの胸の上で絡んでいた。

そして彼女の柔らかな脚がボクの身体をガッチリとホールドしている。

うん、何か覚えあるぞこのしがみ付き状態は。

確か―――



「これ、同人誌で見ただいしゅきホールドってヤツじゃ」


「う……ん………やぁ……っ」


彼女はボクを抱き枕のようにしっかりと抱き締め、拘束する。

身を動かせば離すまいと抱き締める手と脚に力が籠って締め付けられる。

同時に猫みたいな甘え声を出しながら首元に顔を摺り寄せてくる。

吐息と一緒に鼻をくすぐる女の子の柔らかな良い匂い。

―――マズいマズいマズいですよ!



焦って動けば肩に二つの突起物が当たる。

何だコレ……と口にする前にそれが何かを理解する。

そして思い返される、今のレオナの姿と自分の姿が。

ボクは今、ピンクのネグリジェを寝間着に寝ている。

そして言わずもがな彼女も同じ格好で下着はシルクのパンツのみだ。


ボクは瞑目し、心を落ち着けると映像が遡る。

それは寝る前のクリームを塗っていた時間の映像だ。


クリームを塗った時に無防備に晒されていた小さな丘と……宝玉。

それを思い返せば今起こっている事は起きるべくして起きている話だ。

そう、必然だったのだ。



「………レオ……ナ……ブラ、着けてないんだったっ!」



ボクはリトルブラザーがビルドアップ始める前に彼女のホールドを解き、

テントを抜け出した―――。


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