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第百二十一話 「分相応を弁えなさい」




「で、魔王封印体サマには後日――――――」


呆然と自分は座ったまま話を聞く。

何か色々と説明されてるけど……全部右から左に流れて行く。


「レオナ様は第九召喚に於ける安全性の検証の為――――――」


レオナ……レオナ。

そう言えばボクはレオナと、キスをしてしまった。

今でもその時の匂いとか体温とか、感触全てが蘇える。

夢だったんじゃないかと思ってしまうけれど違うんだよなぁ。うん。

残ってるそれらが全て証明してるじゃないか。


バンッ!


「ま お う ふ う い ん た い サ マ」


テーブルを叩く大きな音で我に返ればゼロ距離にニーアさんの顔が。


「うわぁ!?」


「人の話、全っ然聞いていませんね?」


「え、あ……えと……」


「はぁ。ここ連日に増して呆け面が多過ぎじゃありませんか?

 大迫轟の節メリサリンド・ルゥが終わったからと気を抜きすぎです」


「す、すいません」


彼女は大きく溜息を吐くとやれやれと首を振った。

やばい。

こないだの一件以来、何かと上の空になってしまう。

まぁ原因は言わずともだけど……。


「全く。

 仕事レディースをお休みになる事になってからの方が腐抜けているじゃありませんか。

 剣客としてもやる事が無いからと言ってその様に呆けられても困りますよ?」


「……すいません」



最近は城内の視線が以前より柔らかい物になり大分過ごしやすくなった。

恐らくは会談が無事に済んだのとリスリムが功労を受け取ったのが理由だろう。

お陰で面談禁止は解除され、レオナと会える時間は多少なり出来た。

とは言っても仕事の方はまだ謹慎中でボクは暇人なんだけどね。

どうしたものか……。


「ではこちらの書類に目を通しておいて下さい」


彼女はそう言い残して部屋を後にする。

最近、どう言う訳かニーアさんがボクの世話係をしてくれている。

とは言っても朝起こしに来て、3食を報せてくれたりがメインだ。

しかし今日の様に用事で部屋に着たりする事に関しては未だに馴れない。


「うーん……どうしてこうなっちゃったんだか」


大迫轟の節メリサリンド・ルゥが終わり、同時に自分がやるべき事がわからなくなった。

レオナの為に何かを……と言ってもどうしたら良いかわからないのだ。


「まーた俯いてる」


「うわあっ!?

 ちょ、ちょっとまた勝手に入って来ないで下さいってばルカさん!」


「だぁってあなたノックしても気が付かないじゃない。なら一緒でしょ?」


そしてもう1人、馴れない人が今日も部屋に訪れた。


「だからって急に入って来ないで下さいよぉ」


「細かい事気にし過ぎよ。さ、行きましょ」


「……行くって、今日もですか?」


「暇なんでしょ? なら良いじゃない」


言葉と共にいつもの木刀がボクへ投げられる。

そしてルカさんはいつもの調子でスタスタと部屋を出る。

晩餐会の後から毎日こんな感じでどうしてこうなったのかわからない。

気を許してくれたのかと思えば向けられる言葉はどれもトゲトゲしく、

相変わらず冷たい物ばかりだ。


「早くしなさいよー」


「はい、行きます。行きますってば」


悪意が無い事はわかるんだけど言い方がキツイからなぁ。

悪い人じゃないとは思うんだけどね。

しかし相変わらず毒とトゲのある喋りには馴れないと言うか……うん。


かと言って反発も出来ず、自分は今日もまた呼ばれるまま後を追った。







「……また手首が疎かよ」


「痛っ!」


本日も暇つぶしと言う名の容赦無い模擬戦を庭園にてボクらは行う。

―――とは言っても一方的にやられてるだけなんだけどね……。


「……うーん。やっぱりやり方が悪いのかしら」


ボクが落した木刀を拾い上げながら彼女は首を傾げる。


「何がです?」


「だってあなた、ずーっと本気で向かってこないじゃない?

 魔法も魔術も使わないし」


「そ、それは本気でやったら色々大変な事になるし……」


彼女の零す疑問に思わず苦笑してしまう。

仮にボクが本気になり、使える力全部を使ってしまえばどうなるかわからない。

そうなったらこの辺り簡単に吹っ飛びそうなんだよなぁ……うん。

初めてやり合った時は挑発に乗っかっちゃって火魔術レーヴァンテイン撃っちゃったけど、

あれは彼女が無効化したから被害が出なかっただけだ。

あの時ヴィグフィスさんに止められなかったらどうなったか正直わからない。


「ふーん」


そして彼女はボクの返答に興味無さそうに返すと木刀を放り投げてくる。

突然の事に反応出来ず、自分は顔面で木刀を受けてしまう。

痛いなぁ……何なんだよもう。 


「そうなると城下町での戦いですら全力じゃ無かったって事ね」


「…………え?」


「あなたは自分の底が見えていないから不安なのよ。

 不意に予想以上の力が溢れた時にどうしたら良いかわかんない。

 そうなってしまったらどうしようと怖くてたまらないのよ」


淡々とした口調で語られる言葉はボクの胸を刺す。

それは自分の中で漂っていた不安の一つでもあった。

確かに彼女の言う通り、ボクは自分の力に対し得体の知れない恐怖がある。

ネトゲスキルと一括りにすれば楽だけど、未だ不鮮明な部分が多い。


「私も精霊と契約した時、そんなずっと不安があったわ」


彼女は目を閉じて思い出す様に語る。

今までトゲのある物言いでは無く、いくらか柔らかさを帯びた口調で。


「だからその為に剣を振るうのよ。不安に負けない自分を作る為に」


……うん?

昔語りが始まるのかと思ったらどっかの脳筋さんみたいな台詞言い始めたぞ。


「そう、だからあなたも剣で自分を鍛えなさい。

 剣は何があっても裏切らない、そしていつしか絶対の自信になるわ!

 私はそれで強くなれたわ! さぁわかったらかかってきなさい!」


いや、その……えー?

何ですかその超理論。

色々おかしい。


「あなたが本気を出し辛いって言うなら……私がちょっと本気を出したげる!」


どう言う訳か彼女はテンションマックスな表情を浮かべ、剣を構える。

そして同時に周囲を色とりどりの光の玉が浮遊し、纏う空気が一気に変わる。


「ちょ、ルカさん待って待って待って!?」


「問答無用!!」


構えを取る事も出来ないボクを無視して彼女は突っ込んでくる。

そしてバキィン! と激しい音が走り、痛みに耐えるべく強く目を瞑る。

が、痛みは訪れず―――


「いくら悪意が無いと言えど、主様が甚振いたぶられる様をこれ以上見過ごせません。

 少女よ、分相応を弁えなさい」


「あなた、あの映像で見た精霊……?」


「いや、ちょっとルカさん? てかサンクリズルも何で!? 

 ボク、スキル使ってないよね!?」


「―――主様、この図に乗ったお転婆娘を少々躾けますのでお待ち下さいませ」


「そう、代わりに貴女が相手になるのね。

 良いわ。かかってきなさい!」


ボクの発言を無視して2人は剣を振り被ると伏せるボクの上で火花を散らし、

文字通りの真剣勝負を始めてしまう。

そしてボクは少し離れた場所で呆然と眺めるしかなかった。

長々と放置ですみませぬ!

別の話書いてたりしてました!


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