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別の世界に行ったら男の娘をやるハメになったボクの話  作者: くうや
第六章 男の娘メイド・竜戦編
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第百三話 「何を言っているの?」

2016/11/03 サブタイ変更、長かったので分割

「ラン、ゼル?」


ヴィグフィスさんと同じ苗字の彼女は剣を構えると疾風の如く2人へ斬りかかる。

そう言えば前に娘さんが居るとか言っていた覚えがあるな……。


そんな事に更ける自分を余所に彼女は鮮やかなオレンジの髪を風に遊ばせ、鋭い剣線で白ローブの2人を翻弄する。

空中で縦横無尽に飛び回りながら逃げ回る2人を追い、何度も剣戟を打ち込みその後を光の玉が追撃をする。

その様子にフヴェズルングは割り込む事も出来ず。

ボクは目の前で繰り広げられる空中戦を呆然と眺めていると、彼女の一撃が小さい影のフードを切り裂く。

そしてその下からは栗色のくせっ気の強い髪をした、あどけない10歳位の少女の顔が……。



「―――あ……んた。何で、ここに……」


「面倒、厄介、最悪此処に極まりて……!!」


「きゃあっ!?」


「あ、危ない!!」


雰囲気が一転したキョーを前にボクは咄嗟に彼女を庇う。

同時にナニカ・・・が彼女の居た場所を吹き抜ける。

それは目にも見えず、風も起こさないモノだったけれど直感が危険だとアラートを鳴らしまくる。


「おや、おやおやおや。まさか貴方に邪魔されるとは。……境解者リンカーに至らずともやはり玻璃ハリの名を秘めるだけあると言う訳で?」


彼は伸ばした手を戻しながら嬉しそうに口元を抑え、堪え笑いを見せる。


意味深な発言からしてコイツは一件の事だけじゃなく、ボクに関する何か特別な事を知っている。

手詰まりな感じが否めないけど、ここで何とか捕まえて吐かせないと―――


「……ちょっとアナタ、いつまで私に触ってるつもり!」


「い、いたいたいたいっ!?」


「男のクセにドサクサに紛れて気安く触らないでくれる?」


何で男とバレたのかと考える暇も無く、彼女に頬を抓り上げられる。

余りの痛さに声を上げていると今度は突き飛ばされ、何事かと視線を向ければ「ふんっ!」などとそっぽを向く彼女の姿。

それは「余計な事しないで」とでも言いたげな態度で、凄く感じ悪い……。

―――じゃない、そんな事よりあの2人をどうにかして捕まえなきゃ。


「ク、クはハはッ! 

左様に、斯様に、その様に睨まれなくても良いですよクォーツ・・・・様。色々、様々が違えど貴方様は我々と同じく標へ辿り着くのです?」


「……っ!?」


「しかしここで貴方の疑問に答えるのはつまらない、楽しくない、宜しくない。気になりましたら自分を追って下さい? 来て下さい?」


「ま、待て!!」


更に予想外の言葉を向けられて判断が遅れたボクをキョーは嘲笑うと、身を翻す。

そして脇に抱えられた少女はフードを両手で押さえたままこちらへ顔を向け、「またね、クーちゃん……」と言葉を残し、2つの影は目の前から掻き消えた……。















「逃げれたか……」


「ごめん、リスリム」


「―――構わん、目的は果たした。それ以上は過ぎたる我欲だ」


彼はそう言い切るとボクのスキルで惨状と化した大地を見やる。

そこには氷漬けになり、バラバラな肉塊となった竜たちの体が土に埋まり、騎士の人たちが処理を行っている。

そしてリスリムは視線を前へ戻すといつもの調子で鼻を鳴らし、


「で、貴様は何者だ」


と目の前で跪く彼女へ言葉を向ける。

本来ならボクも同じように膝を突き、敬意を表すべきなんだけどリスリムから必要ないと一蹴された、がそれはまぁ良いとして。


「私はルカ・フィオーレ・ランゼル。プリズ・ラーフェルの命によりこちらを渡す様にと命を受けて来ました」


「プリズと言えばアナスカ領を統治するあの者か。そしてランゼルの旗名、お前はヴィグフィスの娘か」


「――――はい」


リスリムの言葉に短く返事をしては彼女は黙る。

いくらかの事情があるようで、距離を置いて佇むヴィグフィスさんの表情も険しい。

暫く家族と会ってないとかも言ってた気がするし、色々あるんだろう……。

そんな事を思いながらリスリムを見れば受け取った手紙へ目を通しながら眉根をひそめる彼の姿が。


「……幾層封印璧リマーゼ・レ・ウォルが発動していると何故判明した?」


「時詠の巫女様より報せが届き、判明致しました」


彼女の言葉に彼は瞑目しながら押し黙る。

そしてそれに合わせて転移魔法陣を管理している魔術師たちがこちらへ駆けてくる。


「リスリム様、やはり王国への転移も魔導通信も全て出来ません。こちらが記録です」


「そうか。ご苦労だったな戻って良いぞ」


彼の言葉に会釈を一つし、魔術師たちは持ち場へ戻る。

リスリムは受け取った書類へ目を通すと吐息を零し、今一度彼女へ顔を向ける。


「で、お前は他にどの様な命を受けてここまで?」


「可能であれば山脈で戦闘を行う王国騎士団と合流し、戦闘を終わらせる事。そして状況により王国騎士団を一度、アナスカ領地へ転移出来る様に手筈する事です」


「あの、ごめん。一体何が起こってる……の?」


ボクは思わず2人の会話に割って入ってしまう。

普段ならこう言う事は避ける方だけれど、胸騒ぎが胸を掻き毟って気が付けばそんな言葉を口にしてしまった。


「……幾層封印璧リマーゼ・レ・ウォルが発動している。本来ならありえんのだがな」


「リマーゼ、レウォル……? なにそれ」


「城を中心とし発動する国を覆う護り、早い話が多重結界だ。外からの攻撃に備え発動し、内側へ侵入した者も外へ逃がせぬようにした代物。……そして同時に外部からの接触も全て遮断する」


外部からの接触も遮断……もしかしてそれで魔術師の人が転移魔法陣が使えないとか言ってるのか。

それよりそれが発動してるって事は王国で何か起きてるって事じゃないか。

そうだ、こんな時こそリンクを使えば……!


『トシキ! トシキ聞こえる!?』


《システム:ユーザー・トシキさんへWis出来ませんでした。ログインされていないか、通話不可MAP内です。》


―――え?

リンクも切れてるってどう言う事なんだ。

まさか。


「リスリム……リマーゼレウォルってもしかして、Elfの力で作られたり……する?」


「ああ。魔王封印に対する防壁も兼ね備えているからな」


その一言でシステムさんの言葉に辻褄が合う。

Elfで作られた結界なら、Alpは完全に遮断される。

そして同時に沸き立つ焦燥は先程の白い2人を思い出させ、去り際の言葉が脳内再生される。

――――気になりましたら自分を追って下さい? 来て下さい?


ギザ歯のアイツはボクへそう向けた。

と言う事はアイツは王国へ向かった可能性が高く、どうにかすれば追いかける手段があるかもしれない。


「あ、あの! えーっとルカ……さんでしたっけ?」


「……何、かしら?」


ボクの言葉に彼女は跪いたまま顔を上げ、ジロリと視線を向けてくる。

見た目からして年齢はクロカさんと同じくらい。

しかし気迫が尋常じゃなく自分はたじろいでしまう。

前髪で左目を隠しているせいもあってか吊り上った右目がほんと怖い……。


「さっき戦ってた白ローブの2人の内の1人と知り合いだったみたいですけど―――」



彼女は先程戦っていた白ローブの内の一人、あの10歳位の少女と顔見知りのようだった。

何か知っているようならもしかすればそこからヒントが得れるかもしれない。


「……アナタ、何を言っているの?」


しかし彼女から返ってきた言葉はそんな一言。

それはその内容に触れるのを拒否した様子と言うより、検討違いな言葉を向けられた際に見せるような。

眉根を顰める彼女を前にボクは何を言わんとするかわからずただ返答に困り、


「白ローブの人間は1人しか居なかった・・・・・・・・・じゃない。顔もよく見えなかったし、私はあんなヤツ知らないわ」


彼女は呆れた様子でボクへそう言い放った。

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