第百一話 「クォーツさんがログインしました。」
2016/12/11 スキル詳細を後書きに追記
「まほーしょうじょ……リタ、カノ?」
……しまった。
「誰だ」なんて尋ねられちゃったから、リタ・カノの設定通りに台詞とポーズ取りながらキメちゃったよ。
っと、それは良いとして。
見渡せば周りには負傷した人が何人も横たわってる。見た感じ回復も追い付いていない。
そうだ、リタカノマジックで回復すれば……!
「光よ光よ光さん! 痛みも悩みもふっとばしてー! エンジェラスヒーリングライト!」
杖を振り、魔法を唱えると辺りを星形の光が飛び回る。
それは負傷した兵士たちの元へ飛ぶと一瞬で怪我を癒し、気を失った人たちも目覚めさせる。
よし、これもアニメ通りの効果で広範囲超回復魔法!
「き、傷が一瞬で治った……?」
「何者なんだあの少女は」
「……このような回復魔術を一瞬で?」
意識を取り戻した人たちは顔を上げるとボクを見やる。
そしてその中に見知った顔……ヴィグフィスさんの姿が混じっていた。
この戦いに参加してるから当たり前だけど、どうしよう。
思わず変身したのはイイケド、リスリムに何て説明すれば……色々と面倒な事になりそう。
「そう言うめんどーな事は、あとにしちゃお! うん!」
ボクは彼女の口癖を言い聞かせると空を飛ぶ竜の群れへ視線を向ける。
そこには白のフードを深々と被った人が一人……。
もしかしてこの人が全ての元凶なのか?
とりあえずはホワイト・セイクリッド・キャッスルがあるからしばらくの間は攻撃を受け付けない。
逆にこっちもその間攻撃が出来ないけど―――そうなると結局はリスリムへそれを伝えて体勢を立て直すとかしなきゃだな。
「ク、くくク……。クハハは、あはハはははははははッ!?
何ですかどう言う事ですか!! やっと来られたかと思えば、そのチカラはあの女の真似事ですか?」
空に浮かぶ人影はボクへ言葉と共に視線を向ける。
何を言っているんだこの人は。
あの女? 誰の事だろう……。
ボクが記憶を辿る中、白フードの人はギザギザの歯を見せながら笑い声を上げ続ける。
フードの影から見える眼光は悦びに満ちながらも狂気に満ちた色を宿し、ボクの背中に悪寒が走る。
「え、うそ、この魔力ってクーちゃん!? クーちゃん!?
あれ、でも何で女の子なの?? ニセモノ? でもこのAlpってばクーちゃんだし、あれぇー?」
「ええそうですそうなんです。
久々、久方、久し振りにお会いしたかと思えばElfのモノマネ、マネゴトですよ? 秘めた力は予想以上……しかし境解者にすら至っていない未熟です?」
「むぅー! むぅー! 仕方ないけどやだなー! 久しぶりに逢えたのにやだなー!
格好クーちゃんらしくないしー、キョーちゃんやっちゃってー!」
もう一人別に居たのか?
2人の言葉に色々と疑問が過ぎる中、キョーと呼ばれた人は大きく腕を広げる。
そして別に何か特別な動きをしている訳じゃないのに、気が付けばボクの顔には冷や汗が伝う。
「ええ、そうしましょう壊しましょう!? 浸食する無色ィ!!」
その言葉と共に辺り一帯を覆っていた虹で出来た城、ホワイト・セイクリッド・キャッスルは消え失せる。
音も無く、まるで初めからそんな物が無かったかのように消滅した。
「え、何で……!?」
驚嘆の声を上げる間もなく目の前は眩しく発光を始め、顔を上げれば多くの光撃をボク目掛けて放たれる。
「ホ、ホワイト・セイクリッド・キャッスル!!」
咄嗟にそう叫び、杖を大きく振るが……
「侍女!!」
リスリムがボクへ向ける言葉でハッとする。
杖を振ったと思った右手には何も無く、ただ空を切る。
視界の端に映っていたドレスはいつの間にかピンクと黒から、ただの黒へ。
それはいつものメイド服の色で、何故と問う間もなくボクは一撃に耐え切れずそのまま吹き飛ばされる。
「―――がはっ!?」
何だコレ、痛みと一緒に身体の内側から焼けるみたいな……。
おかしい、身体の再生も時間がかかる。
いつもならどんな傷でも一瞬で治るのに。
『おいユウ!? お前、何と戦ってんだ!!』
一撃で吹き飛ばされ、山脈の地面のめり込む形で倒れるボクへ届くトシキの声。
気のせいかいつもよりハッキリ聞こえるような。
《――――――のダメージを受けました。識別不能スキルによる状態異常となりました。》
《―――――――――よりWisが来ました。》
「何って……竜、だよ」
『……まてよ。竜ってElf持ちなのか?』
何を言ってるんだと言い返そうとして自分の状態に納得が行く。
Alpに対しElfは対極の力だ。
そしてそれを受けた為にボクの身体は一瞬でボロボロになり、再生が遅い。
「ユウ! しっかりしろ!!」
身体の再生が何とか終わったと同時に地面を伝わって爆音が響く。
慌てて身を起こせばヴィグフィスさんと大勢の騎士たちが大きな竜を剣で受け止める。
「ヴィグフィスさんっ!! 凶雹の粒!!」
咄嗟に氷系魔法を大量発動し、大竜に向けて雨のように降らせる。
しかしその攻撃は竜の鱗に一瞬霜を作るだけで全て砕け散る。
「駄目だ! 今のこいつらは魔法を無効化にする!」
「そ、そんな……」
彼の言葉の前に呆然とする中、ふとある言葉が蘇える。
―――数百年を経た原竜の個体はリントリムアの木のように魔法魔術を受け付けない。
そうだ。
前に読んだ本に書いてあったじゃないか。
どうする?
どうすれば良い……もう一回リタ・カノに変身して戦うにしても魔法魔術が使えないんじゃ意味が無い。
かと言ってこのままじゃ。
「侍女! コレを使え!!」
ブロンドの彼の声と共に何かが宙を舞い、それをボクは咄嗟に受け取る。
それはズシリと重く、よく見れば鈍く金色を放つ。
「リ、リスリム様……ぐわぁあ!!」
「ぎゃぁあああ!! りゅ、竜が、竜があああああ!!」
爆撃が降りしきる中、四つん這いで手当たり次第に人を食いちぎる影がこちらへ向かってくる。
それは身体のあちこちに大きな傷を作り、這うように動き回る。
その動きは生物がする動作からかけ離れ、手足頭が独立した生き物のように不自然に動く。
ボクは迫り来る恐怖を纏ったバケモノを前に絶叫するように召喚スキルを叫ぶ。
「終焉の炎! 神を呑む獣! 破砕の雷!」
呼び出した炎の巨人、氷の狼、雷の巨人は勇猛果敢に迫る竜に立ち向かう。
召喚スキルが相手してる間に手を考えなきゃ、どうにかしなきゃ……。
ボクは交戦するヴィグフィスさんたちに混じり、竜を退けるべく駆ける。
「はぁ……まだ機を熟していないとは言え、交わりが変わるだけでこの様に不様になるとは?
悲しいですよ淋しいですよ虚しいですよ? 涙ぐましいですよぉおおおおおおおお!?」
女とも男ともつかない声の主の叫び声と共に空中の竜よりまた光の咆撃が一斉に向けられる。
竜に魔法が効かないとしてもあの攻撃はElf……ならAlpの力で相殺が出来るハズ!
「松明の火!
軍馬の鬣!
炎帝の剣!
エリヤの赤!
巨人の残り火!」
馴染みの炎系魔法を同時詠唱、大量発動するとそれは大きな火の玉となる。
小さな太陽と化した一撃をこちらに向く一撃に合わせ……撃つ。
「……なぁんかちょっぴりざんねーん」
瞬間、少女の呆れを含んだような声がボクへ向けられた。
轟音は空気を裂き、熱風引き起こして辺りは爆発によって真っ赤に染まる。
先程の光の攻撃は相殺出来たようだ。
流石にあんな攻撃を連続で撃てるはずが無い。
見た所、溜めにいくらか時間がかかっていたしその間に打開策を考えないと。
《―――スキルを全て無効化されました。》
《―――炎耐性によりダメージ、状態異常全て無効化されました。》
《―――観測不能スキル発生確認。》
なんだこの声……。
覚えがある声へ対し、そんな言葉が漏れると同時に爆炎が晴れる。そして、
「申し訳ありませんねぇ?」
首を傾げるその人影を囲う煌々と輝く、光。
それは反応する間も無く、視界を白色に染める。
衝撃と爆音は入り混じり、何が起こったかわからない。
意識は点滅と消灯を繰り返すかのようにブツブツ切れ、思考が働かない。
そして視界もピントが定まらないカメラのように焦点がいつまでもブレる。
咄嗟にイージス唱えたけど……ヴィグフィスさんたち、大丈夫かな……
《システム:スキル・女神の光楯を使用しましたが範囲制限を超えた指定があった為、発動しませんでした》
そう言えばイージスって範囲発動なんだっけ……忘れてた……や。
にしても久し振りに聞くなこの声……ソドソのシステムさんじゃん。
身体も動かないし……幻聴まで……聞こえ……
《システム:識別不能スキルによる断続ダメージにより自動回復スキルの機能が一時停止します。》
《システム:モンスター情報・凶雹の粒による氷結効果が解除されました。》
《システム:MP不足によりアイテムの発現失敗。》
《システム:残りHPが10%を切っています。アイテムを使いますか?》
なんか、久々にヤバげなシステムさんの……声だ。
やばいな…………動かなきゃなのに……動けない。
見るからに傷が酷いし……そのくせ、痛みも無い……まずい、このままじゃ、きっと自分は。
くそ……動くのは……手だけ、か。
……ヴィグフィスさんたちは無事だったみたいだけど……このままじゃ……。
召喚スキルは……全部消え……てる。
リタ・カノマジックも……ネトゲスキルも役に立たない……。
今の自分じゃもう、何も……
《システム:残りHPが9%を切っています。アイテムを使いますか?》
「総員、転移魔法陣まで退避! 重症者と思われる者は諦めよ!」
「たすけ、助けて下さぁあああ―――ぎゃあああああああ!?」
「嗚呼、嗚呼! そう! それですその声です! もっと、もっともっともっと私の咽を、舌を、空腹を全て満たしてぇええええええええええええ!!」
《システム:残りHPが8%を切っています。アイテムを使いますか?》
「グルァアアアアアアアア!!」
「に、逃げろ! 最初からこんな戦い勝てる訳が無かったんだ!」
「置いてかないでくれ! 死にたく、死にたくないいい」
「離せ! 俺を引っ張るなぁ!」
「く、来るな来るな、来るなぁああああああああああああっ!!」
「う、うへへ……はは……」
《システム:残りHPが5%を切っています。アイテムを使いますか?》
「リ、リスリム様! 転移魔法陣が……魔法陣が機能しません!!」
「…………流れる血は川となり、重なる骸は山となり、響く叫喚は戯曲となり、我らを満たす宴となりぃいい!!」
「き、貴様上官を棄て逃げるとはそれでも王国騎……っぎゃぁああああああ」
「くそ、くそ! 何で回復魔法も治癒魔法も使えないんだよ! どうなってるんだよぉおおおお!」
《システム:残りHPが2%を切っています。アイテムを使いますか?》
「ク、クハはハははハはッ! 良いですね悪くないですね! これで王国と言うメインディッシュを前に自分の舌を、飢えを、胸を満たしてくれる素敵なオードブルですねぇえええ!! 」
王国………………
レオ、ナ―――――――――――――――――
《システム:残りHPが1%を切っています。アイテムを使いますか?》
―――は
……い。
《システム:アイテム・ユグドラシルの雫を使用致しました。HPMP全回復・状態異常全解除を確認致しました。ユグドラシルの雫・残数11となります。》
「ぶはっ!?」
遠のく意識が一瞬で現実に引き戻され、ボクは身を起こす。
目の前には竜たちがハイエナのように人を喰い荒らす惨状が広がる。
後退する騎士たちを壁際に追いやるように追い詰める群れの中に白いローブの影。
―――倒さなきゃ。
「銀の車輪! 銀の車輪! 銀の車輪!」
アイツを倒せば、アイツさえどうにか出来れば!
自分はラッドを唱え、宙を駆ける。
―――アイツを早く、倒さなきゃ。
「おや……? 思ったよりもお早いお目覚―――」
「灰燼へ誘いし焔!」
隙は与えない。
コイツに攻撃が効かなかろうと……周りの地面には攻撃は通じる。
レーヴァンテインを雨のようにいくつも降らせ、それは爆発と共に土を始め何もかもを打ち上げる。
「終焉の炎ッ!」
呼びかけと共に炎の巨人は大地へ足をおろし、ボクが狙う長身のヤツ目掛けて駆ける。
振りし切る爆撃の中、ソイツは歪に笑う。
「今の貴方様では、無理ですね無駄ですね?」
全て無意味だ、と込めた笑みをボクへ向ける。
「フェズ!! 狙えぇええええええええ!!!」
「御意!!」
土や死体、様々な物が舞う中で叫ぶ声にフヴェズルングは応え、打ち上がった剣を構えると疾風の如く斬り抜く。
―――ここで、確実に倒すんだ。
「黄昏を染める指輪!!」
その声と共に12の乙女は翼を広げ、空に舞う剣を手にすると未だに笑う白い長身目掛けて剣を突き立てる。
そして、同時にボクの脳内を馴染みの声が一つ響く……。
《システム:ユーザー・クォーツさんがログインしました。ようこそ、アルセーマの世界へ。》
【黄昏を染める指輪】
北欧神話の英雄であるシグルズの物語をモチーフとした『ジークフリートの死』
より着想された舞台祝典劇のニーベルングの指環を指す。
ダクテュリオイは古代ギリシア語で複数形を含んだ指輪を意味する。
属性 :無
タイプ :自律型召喚
詠唱時間:基本詠唱600秒 スキルレベル1毎に詠唱時間10%カット
スキルレベル10の場合、無詠唱
消費MP:プレイヤーの最大MP70%を消費、MP3500以下の場合使用不可
効果範囲:特殊
攻撃倍率:MAXレベル10 魔法攻撃力2000%
攻撃方法:スキルレベル+1毎に召喚されるヴァルキリー1体追加
スキルレベル10の場合、計12体召喚可能
プレイヤーの設定したスキル及び魔法、魔術を使用
設定した指示に沿って戦闘を行い、
プレイヤーが狙った対象を攻撃する。
もしくはプレイヤーを狙う対象を攻撃する。
効果時間:毎秒MP40消費 スキルレベル1毎に+5秒
画面内の目標を殲滅するか残MP10%以下になると消滅。
攻撃対象:特殊
クールタイム600秒
習得可能職業・トリックスター
習得条件:ヴァルキリー系・召喚スキル3つ以上修得
前提クエスト攻略
トリックスタージョブMAX
本当ならニーベルング・ホイ・ダクテュリオイになるんですが長いのと言い辛いので変えてます。
あと造語です。




