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孤独な世界と大切な花  作者: rurua
失った出会い
9/13

白髪の雷撃

 僕らは激戦区の医療エリアにいる。

依頼の内容は壊滅状態の医療部隊の救援。

僕達は傷を負った者をひたすら治療している。


 止まない爆撃音。

溢れる悲鳴さえ、かき消していく。


 若い女性や子供が傷だらけで倒れている。

この医療エリアに医者はもう15人ほどしかいない。

ついさっきまでこのエリアも戦場だったらしい。

 医療エリアの最前線で兵士が頑張って戦ってくれている。

いつ防衛を突破してくるかわからない状況だ。


「頑張って。・・・。」

 みんな出血が多量すぎる。

残酷にも次々を命が失われていく。

輸血用の血が切れている今、助けることができない命がたくさんある。


 ・・・これが戦争。

戦争なんてなければ傷つく人は少なくなるのに。

でも、僕には何もできない。

この世界を変える力が・・・ない。


「優矢、落ち込まないで。今は私たちにできることをしましょう。」

 結愛が明るく励ましてくれた。

零火も覚えたての止血を必死にしている。

僕も立ち止まったらいけない。

今はこの人たちの命を救いたい。


 唐突に警鐘は鳴り出した。

「敵兵が来るぞ。撤退だ。患者を連れて逃げろ!!!」

 とうとう防衛が突破された。

兵士は大声で叫んでいる。


「嘘・・・。」


 もう僕達の医療テントのは大群の敵兵が囲んでいた。

逃げ場なんてどこにもなかった。


「はは。お前達はもう死ぬだけだよ。殺せ。」

 リーダーらしき人が指示すると、一気に襲いかかってきた。

次々と殺されていく。

すでに傷を負っている者でさえ、容赦なく切り殺している。


「結愛、零火!!どこにいるんだ!?」

 大混乱している戦場で二人を見失ってしまった。

探しに行かなくちゃ。

人込みを必死に掻き分けて走った。

何度か剣で体を切られたが、能力で回復して気にせず走り続けた。



   ********************


「零火ちゃん、優矢は?」

 零火は必死に周りを見渡している。

「・・・見失っちゃいました。」


「わかった。私の能力で探すから少し待って。」

 結愛は手を耳に添える。

「サーチ・・・。」

 襲ってくる敵兵を零火の炎で撃退している。

敵兵の中に能力者はいなかったのは幸いだった。


「見つけたわ。追いかけましょう。」

 結愛は零火と手を繋いで優矢の元へと走っている。

二人を取り囲むように炎を纏うことによって安全に移動している。


「優矢の背中が見えたわ!!」

 結愛の表情が少し明るくなった。

しかし、零火は焦ったように足を緩める。


「結愛、すごく危険な気配がするの。」

 零火は結愛の手を軽く引っ張り足を止めた。

「どうしたの?もうすぐ優矢に追いつくよ。」

「あたし達の目の前にいる人。敵部隊のリーダーよ。」

 白髪の男は不気味な笑みを浮かべながら結愛と零火を眺めていた。

優矢はそんなことにも気づかずに遠ざかっていく。


「能力者。見つけた。」

 黒いコートを風になびかせながら結愛たちに近づいていく。

赤い手袋を取り外すと青白い光が溢れ出てきた。


「あの人も能力者だわ。雷撃の能力種・・・。」

 零火は相手の強さを悟ったのか怯えている。

震えた足を動かすことができない。


「俺の軍の奴隷にしてやるよ。」

 閃光のように駆け寄る男に結愛は反応できず、思いっきりお腹に雷撃を浴びた。

零火の炎は雷撃でいとも容易くかき消されていた。


 零火は精一杯足を動かして倒れ込む結愛を抱えた。


「結愛、お願い。死なないで。」

 溢れ出てくる血を零火は必死に手で押さえている。

「私は大丈夫・・・だから。お願い逃げて。」

 結愛は痛みに耐えながら零火に優しく言った。

「結愛を置いて逃げたくない。・・・あたしが結愛を護る。」


 零火はそっと地面に結愛を寝かせた。


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