零火と友達になれた日
僕らは真っ赤に燃えている家へと向かった。
零火の姿は確認できない。
闇に染まりきる前に助けたい。
零火は家の中にいるのかもしれない。
燃え盛る炎が家を飲み込み更に勢いを増していく。
「結愛・・・。」
「だめ!!絶対にだめ。こんな場所で能力は使えばどうなるかわかるでしょ?」
怒られちゃった。
結愛にはなんでもお見通しだな。
でも、僕の能力を使わなくちゃ零火を探すことはできない。
どうすればいいんだ。
「優矢、焦らないでいいよ。私の能力で零火ちゃんの場所を検索すればいいのよ。」
すっかり結愛の能力のことを忘れていた。
結愛は僕のことを知り尽くしているのに、僕は結愛のことを詳しく知らない所がたくさんある。
元の世界で僕と結愛はどんな日々を一緒に過ごしていたのだろうか。
結愛は耳に手を添える。
「サーチ・・・。」
結愛と僕の能力種は無属性。
無属性は髪の変色は見られない。
「見つけた。やっぱり燃えている家の屋根に座っているわ。」
屋根ならまだ炎が届いていないかもしれない。
・・・行こう。
「ごめん。結愛。」
僕は家の中に飛び込んだ。
「・・・ダメっていったのに。」
燃え盛る炎の中を能力を使いながら駆け抜けていく。
灼熱の痛みと熱気が全身を襲う。
能力のお陰で焦げた皮膚は一瞬で再生する。
2階へと続く階段を登り切り、窓から屋根を掴むことができた。
腕に力を入れて全身の屋根までよじ登る。
「・・・優矢。来ないで。」
零火は瞳から炎の涙を流している。
「あたしの心は壊れているの。痛みを一緒に背負ってくれるって言ってくれた時、正直嬉しかったわ。でも、だからこそ優矢も傍にいてはいけない。恨みの感情が染み付いたこの心は治りはしない。今も人を傷付けて喜んでいるのよ。」
零火はまだクロイドになっていないみたいだ。
・・・良かった。
もしクロイドになってしまえばもう2度と元の人間には戻れないかもしれない。
今の零火の心を癒す方法は僕にもわからない。
でも、見捨てることはしたくない。
「零火、僕は君を助けたい。君はまだ僕のことを信頼できていないと思う。だから僕を攻撃してくれ。僕は絶対に逃げない。零火の全ての恨みを受け止める。好きにしていいよ。」
零火は悪魔のように笑顔になる。
恨みの感情に支配されてしまったのだろう。
ちゃんと・・・受け止めるよ。
「死んじゃえ。」
零火から強烈な炎が僕に放たれる。
精神が崩壊しそうなほどの痛みに耐えながら僕は零火に抱きついた。
「ほら、逃げないでしょ?僕も結愛も信じていいんだよ」
「・・・優矢。」
零火は炎の涙を流しながら炎の威力を上げていく。
ごめんね結愛。また記憶を消費しちゃって。
忘れたことさえ忘れてしまう。
それでも僕は・・・。
「あたしの心が楽になってる。もうやめるね、優矢。」
零火の涙が枯れた頃に炎もぴたりと消えていた。
ただただ静かに彼女は僕に抱きついてくる。
「あたしと友達になってほしい。」
今までとまるで別人のような優しい声が聴こえてくる。
やっと苦しみから解放されてみたいだ。
良かった。
「零火はもう僕らの友達だよ。これからもよろしくね。」
「うん。ありがとう。」
零火の表情は優しい微笑みに変わっていた。