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孤独な世界と大切な花  作者: rurua
失った出会い
6/13

初めて結愛と出会った記憶

 僕らは部屋を飛び出した零火を追っている。

また人を傷つけてないか心配だ。

彼女を助けてあげたい。


 街は雨に包まれている。

僕の体を冷たくしていく。

人込みが多いこの街で傘をさしたままじゃ走りにくかった。

結愛は見失わずについて来てくれている。


 そういえば、結愛と初めて出会った時もこんな感じだったな。


     *****************


 1年前。

僕と結愛は出会った。

その日も軽い雨が降っていた。

 傘を持ってなかった僕は1人、病院で雨宿りしていた。


「あの、一緒に帰ります?私の傘で。」


 見たことない人だな。

・・・誰だろう?


「あーやっぱり覚えてないよね。」

「ん?」

「うんうん。気にしないで、何でもないわ。」


 僕と君はどこかで知り合いだったのかな?

この異世界に来てから初めて人間に会ったけど全く見覚えない。


「一人で帰ります。お構いなく。」

 僕はずっと一人で生きてきた。

これからだって一人だけで元の世界に帰ってみせる。

 僕は雨の中歩きだした。


「待って。家まで送らせて。風邪を引いちゃうから。」

 彼女は僕の隣で傘をさしてくれた。

甘い香りが漂ってくる。

懐かしい香りだな・・・。

 この香りを嗅ぐと、どこか切ない気分になる。

大切なものを失ってしまった時の切なさ。


「僕は1人で生きたいんだ。」

 彼女を置いて家まで走り続けた。

安い家賃のボロボロで小さい小屋が僕の家だ。

仕事もまともにできず、賃金は物凄く安かった。


「くしゅん。」

 不意にくしゃみが出てしまった。

背後から足音が聞こえてくる。

「やっぱり風邪引いちゃったのね。私、医者だから看病してあげるね。」


 僕は彼女の親切も無視して無言で小屋のドアを閉めた。

彼女は何度もドアをノックしてくる。

・・・どうしてそんなに必死なんだろう。

「お願い。ドアを開けて。」

 あまりにも必死だから仕方なくドアを開いた。

「外は雨で寒いから、部屋に入っていいよ。」

「ありがとう。」


 雨で濡れてしまった体を彼女は優しく拭いてくれた。


「これぐらい自分で拭けるよ。」

「ごめんなさい。」


 別に・・・謝らなくてもいいのに。


「それで、どうしてあんなに必死だったの?」


 彼女は安心したように微笑んでいる。

「私、あなたの友達だったの。優矢は覚えてないみたいだけどね。元の世界では大切な友達としていつも慕ってくれたわ。もう一度、優矢の友達になりたいの。ずっと傍にいたい。」


 僕に・・・友達が?

彼女が傍にいるだけでどこか幸せを感じる。


「それと私が医療方法を教えるから一緒に医者になってほしいの。この異世界でも一緒に困っている人を助けたい。」


 彼女の言葉は何故かすべて信じられる。

僕もずっと望んでいたのかもしれない。


 正直、元の世界のことはあまり覚えていない。

記憶があやふやでいる。


 本当は孤独がずっと苦しくて寂しかった。

誰かと一緒に居たい。

お互いのことを信じあって安心したい。


「わかった。どうしてか君と一緒に居たい感情が溢れてくる。君の名前は?」

「ありがとう!!私は結愛。これからもずっと一緒に居ようね。」


 結愛は笑顔で僕の両手を握った。


    *******************


 思えば、不思議な出会いだったな。

まるで運命が決まっていたような出会い。

結愛と一緒に居ることで生き甲斐も生きる幸せも生まれた。

結愛には、すごく感謝している。



「ぎゃー!!?」

 唐突に悲鳴が聞こえてきた。

「優矢!遠くを見て!!家が燃えているわ。」

 結愛が指をさした先、真っ赤な炎に包まれていた。

心配していた惨事が起きてしまった。


 ・・・このままじゃ零火はクロイドになってしまう。


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