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第一話

地平線に太陽が昇り朝が来た。暗い世界は太陽の光でしだいに黄金色になった。同時に鳥たちが木々から飛びたち草原を飛び去っていく。草原の上で一人の男が眠っている。テントも設置せず寝袋もない。

 一匹のスズメがその男が完全に無防備になっていることに気付くと男の耳元に降りていった。男はスズメが来たことにまったく気付いていないようでいびきをかいている。安全を確認したスズメはその男の上に乗ったり、体をつっついていささか度胸試しをして遊んでいるようだが、男はまったく気付いていない。しばらくするとスズメは遊び飽きたのか男から降りた。そして何かに気付いたかのように男の耳元に近づいていった。

 すると突然スズメからサイレンが鳴り響き静かな世界を一転させた。次に空から人の声が鳴り響く。「ダニエル様本日の就寝時間は終了いたしました。速やかに起床しデーターを転送して下さい」と言う声と共に青い空は鉄の天井へと姿を変え、草原は白い床へと変化した。ダニエルという男はうっとうしそうに眠い目をこすり床で光っている赤いボタンを押した。鉄の天井が開き大きな空間が現れた。ダニエルは横になったまま背を伸ばし、眩しそうな目で天井についているカメラを見た。

 「毎日起こしてくれるのはいいがもう少し気持ちよく起きたいな。さもなきゃ、最新型の快眠カプセルを買って、旧型のこいつをスクラップにするぞ」と言ってカプセルを蹴った。するとまた、先ほどダニエルに起こした声が部屋中に響いた。「警告、会社の物品を傷つけることは規則により禁止しています。これ以上の損壊をした場合ペナルティを与えます。」それを聞いてダニエルは舌打ちをしてテーブルに向かいパソコンを開いた。

 パソコンを起動し、ダニエルはディスクのデータを転送した。すると壁に穴が開きシリアルと牛乳、りんごが出てきた。ダニエルはテーブルに設置されたコンポで音楽をかけた。スピーカーからはジャズがながれ部屋を落ち着かせた。突然天井のスピーカーから音楽が流れ始めコンポが止まった。ダニエルは大きなため息をついた。「労働者のみなさんおはようございます。今日も健康に気をつけ効率的な仕事をこなして下さい。」スピーカーから音楽と共に女性の声が流れた。「それではみなさん社歌を合唱しましょう。」ダニエルは無言のままシリアルを食べ続けた。

 その後スピーカーからは合唱が流れ始めた「我等の輝く未来に向かえ。そして得ようさらなる力を。さあ、我等と行こう栄光の未来へ。未来はいつも我等を待っている・・・」その後も歌は流れ続けたが、ダニエルは歌おうとしなかった。牛乳を飲み終えりんごを少しかじった。彼の爪はりんごに食い込み今にもはりさけそうになる。不意にダニエルはスピーカーを睨んだ。そして持っていたりんごをスピーカーに投げつけた。「ダニエル様契約条項第12条の違反によりペナルティーを与えられました。30分後スタッフがそちらにむかいます。」その間にもスピーカーから社歌は流れ続け部屋中に響きわたった。

 

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