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物書きな僕と編集さん  作者: 冬乃 之
9/10

元恋人たち。

 今日という快晴で気温も心地良い1日の始まりに僕は栞さんからかなりスナップの効いた裏拳を食らった。

裏拳ってこんなにも威力があったなんて僕知らなかったよ……。

「それで? 感想は?」

ちょっとしかめっ面しながらデートに慣れてない僕に感想を求めないで下さいよ。

でもまぁ今ここで何かしらの反応をしておかないと今後のスケジュールに支障が出てきそうだ。

「うん、凄い似合ってて綺麗だよ。 栞は白い服が似合うね」

「えっ……あっ……うん……ありが……」

もう後半は全然聞き取れなかったけど多分この返しで間違いはないはずだ。

うわーお、何気なく感想を言ったつもりだったんだけど耳の先まで真っ赤になってるぞ、栞さんや。

なんかお酒でも飲んで完璧に酔っぱらってる人みたいな顔色だ。

「もう! いいから行くよ!」

「えっちょっ待ってよ栞~」

栞さんてこんなにもアクティブな感じだったっけ……。


 二人の最寄り駅から電車に揺られて40分程度。

車内での主なトーク内容は今までに放たれてきた武術についてだった。

「ねぇ、栞?」

「なに? トイレにでも行きたくなったの? それなら次の駅で降りて……」

「違うよ! 僕は小学生かよ! 違うよ、ちょっときになったんだけど栞ってどうしてあんなマニアックと言うのかわからないけど、知名度の低い武術とか知ってるの?」

この点についてはかなり気になっていた。

学生の頃の栞は、いつも読書してるようなおとなしい女の子だったのに。

それが今やこうだ……、かなりなアクティブ系女子へと変身している。

なおかつ暴力的であるためただ単に、怖い、痛い。

「それはね、仕事を始めた最初のうちはいろんなミスとかして上司に迷惑かけまくっちゃって凄いストレスを感じてたの。それで、これを機にどうせなら体を動かしながらストレスを発散しようって考えて空手とか、まぁ武術系は一通りやってみたわ今はやってないんだけどね」

「へ……へぇ……ちなみになんで辞めちゃったの?」

「そりゃ仕事が忙しくなってきたからよ、まだまだ新人なのにいきなり作家に担当編集として就いてもらうって言われてみればまさかのその作家が達也だったなんてね」

そんな事言いながら電車に出僕に向かってシャドーボクシングしないでよ、今の服装だとどこがとは言わないけど揺れてるよ!

「つまりは僕の担当になったから時間が無くなったって事になるのかな~、なんて?」

「そうよ、ふふっ」

なんで迷いもなくそんな事真顔で言いきれちゃうんだよ栞さん。

「だから達也が暇な時はいろいろと付き合ってもらうからね、ふふっ、それにたまには習った格闘技使わないと身体が鈍っちゃうし」

なんだよこの人ただ単に怖いよ。

たまには技使わないと鈍るとかなんか変な事言ってるよー。

あぁ、あとどれくらいの技を隠し持ってるのか考えただけでも身震いしてきた……。

「怖い」

「今何か言った? あ、そうそう是非とも試したい技があるのよね」

「え!? いや、何も言ってないよ? ホントだよ? しかも今電車内だよ? 他の人に迷惑がかかっちゃうからやめよう? ね?」

「えいっ」

「ンッーーーー!!」

それなりに人がいる電車内で、僕は下唇を噛みしめて声を殺した。

つねるってそれ格闘技の技でもなんでもないんですか栞さん……。


 まだ脇腹の痛みが消えない、痛いだけじゃなくてなんかかゆくなってきたぞ。

「ん、何?」

「いえ、何も」

どうやら僕の無言の抗議は通じることは無かったようだ。

「ほら、見て達也! 海が見えてきたよ!」

「うわー、ほんとだー」

気付いたらこんな海の近くまで拉致されてきたのか。

「そろそろ目的地?」

「そうね、次の駅で降りるわよ。あ、降りたら必ずトイレに行っておくのよ?」

「だから僕は小学生じゃないってば!!」


 目的地、僕たちはあまり人気のない閑静な駅に着いた。

ここっていったいどの辺りなんだろう。

聞いても何も教えてくれない栞さんにとりあえず付いて来た形になったけど、たぶん自宅からの方角的に今は小田原の辺りかな、駅の目の前は海みたいだし。

電車から降り、改札までは一度地下を通される通路になっていた、何か……、いや、気のせいか。

「うおっ」

Suicaをかざし、改札が開くと同時に突然強い風が吹くもんだからびっくりして。

一度は風により閉じた瞼を開けると眼下には波打つ広大な海が存在していた。

ただの海じゃない、なんか輝いてる。

風向きが変わったのか、さっきまで電車内から見えていた景色とは全く違う、ただ1枚のガラスを隔てるだけでこれほどにも物の見え方に変化があるのか。

「ね、いいところでしょ?」

「うん、凄い綺麗だ」

「えっ……」

「え?」

いやなんで栞さんは顔を真っ赤にしてるんですか?

まさかまだ朝の一件を引きずってるんですか!?

「いや、あの、綺麗って、景色の事だからね」

「チッ」

あれ、今舌打ちした?

舌打ちしたよね、今絶対したよね、間違いなく舌打ちしましたよね!!

「さっ、早く行きましょ、たつ君」

「いきなり昔の呼ばれ方すると照れるんだけど、しーちゃん」

少しは昔のように他愛もない会話が出来るようになってきている。

これって結構嬉しい事だな。

 お互いに顔を少し赤らめながら、並んで歩く、その歩みは思い出の海へと向かっていた。




今回もご覧いただきありがとうございます。

さて本編はやっとこさ進展があると思いきや、あんまり進展はありませんでしたね。

まぁ私の書くペースがかなり遅いので気長に待っていただけると幸いです。


ではまた次回の後書きでお会いしましょう。

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