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物書きな僕と編集さん  作者: 冬乃 之
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仕事、始めました。

 大学を卒業し早1年が経ってしまった。

本来なら企業の就職し忙しい毎日を送っているのが普通だと思う。

でも、今の僕は普通じゃない…。

僕の卒業した年はそこまで不景気とは言われるわけでもなく、就職氷河期と言われる年ではなかった。

周りの友人達は早いうちに企業への内定が決まり、さらには大手大企業への就職も決まった友人が居た。

当の本人である僕はというと、それなりに就職活動も行い息苦しいスーツに身を包んで何社もの面接に行った。

そんなことを無我夢中でしていたらもう卒業してしまった。

そう、僕は今フリーターなのだ。

フリーターという自由な職業に内定し、内定祝いに両親からの仕送りが断たれた。

「ちゃんとした仕事に就くまで顔も見たくない。」

これが両親との最後の会話だった。

ちなみにその時の僕はというと、モアイ像並みの険しい表情だった。

 そんなこんなで学生のうちから一人暮らしをしている身としては何としても家賃とその他諸々を払うための収入が必要だ。

正直、働く意欲はバキバキにへし折られていた。

「これからどうしようかなぁ…。」

そう呟きながらいろいろな重圧によってさらに重くなった腰を下ろした。

「あれ、これ懐かしい。」

目をやった先には大学に在籍していた頃に趣味で書いた小説のファイルがあった。

そういえば出版社に応募して新人賞を取れれば賞金が出たような。

思い付きだけど、以前書いた小説の中で一番の自信作を応募してみようかな。

それで新人賞を取れなくても関係者の添削コメント付きで帰ってくるみたいだし自分にとってマイナスになることはないだろう。

久しぶりにPCを起動し、出版社のページを確認すると今月に選考があるみたいだ。

「よし、丁度選考があるみたいだし出してみるか。」

応募規定と応募方法を確認してみたところ小説のファイルをメールに添付するだけでいいらしい。

今時はメールで済むのかぁ、などと今時のフリーターが感心してみる。

「これでいいはず、送信っと。」

 幸い小説のファイルは残っていたので、応募規定のサイズやら行間を弄るだけで済んだ。

選考の結果発表は1か月後、それまでは高校生時代に作った貯金を切り崩しながら生活しようかな、いや生活しなきゃ…。

金なしフリーター生活万歳、と涙目になりながらも数分考えた。

 やっぱり日雇いバイトだけでもやろう。


・・・


 日雇いバイトを無我夢中になりながらこなしているとあっという間に選考結果発表の日になっていた、無我夢中といってもそれしかする事が無かった。

暇人フリーター万歳、泣きたい。

 選考結果は落選だとしても僕に電話が入る事になっている。

「そろそろ電話がくる時間かな。」

時刻は一二時を少し回った頃。

バイトによって酷使された身体を労わりながら座椅子に腰掛ける。

それから何もせずに三〇分が過ぎようとしていた時、携帯のバイブレーションが鳴る。

「あ、もしもし私冬木出版社の青柳(あおやぎ)と申します。市ノ(いちのせ)達也(たつや)様でお間違え無いでしょうか?」

「あっはいっ、市ノ瀬です。」

寝そうになっていたので最初の言葉に詰まってしまった。

「今回のお電話は先月の応募に関することでお知らせを、と思いまして。お時間よろしいですか?また都合の良い時間にかけ直させていただくことも可能ですが」

「いえ、大丈夫です。それで結果の方は…。」

この日のためにバイトは入れていない、すなわち暇。

「では、今回の選考結果ですが。誠に残念です。」

あ、落ちた。

冷静に考えればそうか、単なる思い付きで応募したんだし。

バイト増やすかぁ。

「もしもし?」

「は、はい。」

「誠に残念です。」

「はい。」

「なぜもっと早くこの作品に出会えなかったのでしょう。」

「そ、そうで、え?」

あれ、なんかおかしいぞ。

なんか褒めてくれている、のかな?

「いやー、この作品。審査員の方々は絶賛していましたよ!」

「で、でも今回は落選なんじゃ。」

「いいえ?」

「はい?」

「いや、市ノ瀬様の作品『影あつめ』は最優秀新人賞に選ばれました!」

凄い重要な情報をいきなりぶち込まれた気がする。


 こうして、僕。

市ノ瀬達也こと雪瀬一(ゆきせはじめ)は作家デビューを果たした。


ご覧いただきありがとうございます。

新しい物語を書き始めました。


まだまだ未熟者です、アドバイスやコメントを頂ければ嬉しく思います。

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