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宮廷竜画師

 国王直属特別機関宮廷竜画師。

 

 それは、竜騎士に並ぶ花形の職業であり、小さな国では人気の職業だ。ドラゴンに騎乗して国の有事には闘う竜騎士とは違い、ドラゴンに騎乗して空を描く竜画師は危険も少なく、老若男女問わず憧れる者も、また志す者も多い。

 しかし、実際に竜画師になれる者は少ない。竜画師には必須である、ドラゴンの数が少ないからだ。また、ドラゴンに乗るにはそのドラゴンに主と認めてもらうか、ドラゴンの主に許可される必要があるのだ。

 

 一生涯に一人しか主と認めず、主が死のうと決して次を選ばないと言われているのが、ドラゴンである。 元々頭数の多くない上に、唯一ただ一人しか認めないドラゴンに主と認めてもらうのは難しく、人間が一生を賭けてもドラゴンに乗ることは難しい。

 誰かのドラゴンに乗せてもらう竜画師候補生になれるのが十万人に一人。そこから、自分のドラゴンを持つ竜画師になれるのは一万人に一人。

 そう言えば、いかに竜画師への道が険しいのかが伝わるだろうか。

 

 そして、そんな竜画師になる道はひとつ。

 

 宮廷竜画師選抜試験でドラゴンに主と認められること。

 

 それさえ果たせば、身分に関係なく竜画師になれる。逆にいえば、例え貴族であろうとドラゴンに認められないと竜画師にはなれないということだ。

 その宮廷竜画師選抜試験が開催されるのは三年に一度。もちろん、一人として竜画師になるものがいない年もある。そして、次に宮廷竜画師選抜試験が開催されるのこそが、雪の月の十八日。

 

 つまり、明日なのである。


 



 

 小さな国の端にぽつりとある小さな村。少女はそこで、今日も空を見上げる。

「ヨラル、見て。朝日が昇るわ」

 少女の言葉に、隣で伏せていたドラゴンが 眠たげに片目を開く。少女はその姿を横目で見て、空に描かれた太陽を指差した。

 太陽が、小さな国の空を朝焼け色に染め上げる。

「明日から、私たちがあれを描くのね」

「……今日の試験に受かればだがな」

 大きな欠伸を零し再び瞼を閉じたドラゴンが、ゆったりと尾を振りながら答える。少女は空を見上げていた顔を戻し、ドラゴンを振り返った。

「大丈夫よ。私とヨラルが落ちるわけないもの!」

 少女は無邪気に笑う。ドラゴンはそれを見るわけでもなく、ふん、と鼻を鳴らした。それを満足げに一瞥して、少女は勢いよく立ち上がった。

「さ、ヨラル。王都までひとっ飛び、頼むわよ」

 少女がドラゴンの背に軽々と飛び乗る。ドラゴンは少女の重さを物ともせず、ゆっくりとその巨体で立ち上がり、大きく長い翼を広げた。

 濃紺の鱗が、朝焼けの中に暗い影を落とす。ドラゴンが羽ばたくと、辺りの草木が賑やかな声を上げた。


 空を駆けるドラゴンの背で笑う、少女の声が響いた。


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