ある女の話。
ひとりの女の話をしよう。
その女は、村の中でも大層な器量よしで沢山の男に好かれた。
群がるたくさんの求婚者たちを袖にして彼女は町に行くことに決めた。
町の中では、美しいが世間知らずで田舎から出てきたというのが丸わかりの彼女に
付け入ろうとする者が大勢いた。
あるものは、美しい奴隷として貴族に売り飛ばそうとした。
あるものは、娼館に売り飛ばそうと近づいてきた。
あるものは、自分の妾にしようと笑いかけてきた。
きっと、洗練されていないのが悪いのだとお人よしの神父と親しくなり教養をつけた。
女は字を覚え、文学を覚え、歴史を学んだ。
そうして、学びつくすと神父とは別れを告げ、王都に行った。
神父は悲しみ、女も悲しんだが女は止まらなかった。
王都の中では、何もかもが華やかに見え、女を驚かせた。
野暮ったく見える彼女は馬鹿にされたが、彼女は人を見る目が付いていた。
更に、きちんとした教育を受けていることが分かると何処かの地方のお嬢様だろうと思われた。
女は様々な人に会い、きちんとした住みかと働くところを見つけた。
ここでは、美しいが流行から遅れている女に声をかけてくる男は少なかった。
そこで、女は仲のいい女友達を数人作り、アドバイスをもらった。
雑誌を買い、研究をし、コツコツためたお給料を使い、髪型やドレス、化粧などを整えていった。
そうするうちに、女は目立つようになり、女友達からの嫉妬を買うようになった。
当然、男たちははっと目が覚めるような姿かたちになった女にこぞって求婚をした。
美しさとというものはきちんとした知識がないと利用されてしまうこと。
そして、金銭と努力によって向上させることができるということを女は悟った。
そうして、女はコツコツコツコツ自分のことを磨いていった。
とうとう、女は王都でも評判の美女となった。
そんなある日のこと。
王さまがなかなか正式な妃をめとらないということで側近たちが悩んでいることを女は風の噂に聞いた。
女はとびきり着飾って、王宮の方へ出向いていった。
女はその美しさにより、後宮入りを許された。
後宮には、さまざまな地位の女たちがひしめきあっていった。
妖艶で男を惑わすような女もいれば、清楚で芯の強そうな女もいた。
豊満な体の女もいれば、その反対もいた。
そんな中で、女はまず一番の地位の高い女に取り入り、王に近づくための算段を練っていった。
それらからたくさんのことがあった。
地位のない身分を罵倒されたことも、王様と親しくなったはいいが飽きられたことも。
ときには、後ろ暗いことに手を染めてしまうことだってあった。
そうするうちに、女は王様の正式な側妃になることがきめられた。
女の美しさと何よりも側近に送った賄賂が効いたのだ。
女は、王族か貴族の血筋を引いていないと正妃になれないことは分かっていた。
女は満足し、海に身を投げた。
この女の話は後世まで伝わることになる。
その女は美しく聡明で王によく仕えたが、身分違いを苦にし自殺したのだという。
この話は、情緒的な詩でつづられており聞いたものの涙を誘った。
或いは、それも彼女のもくろみの一つかも知れない。