まことくんのはなし 下書き
登場人物
小沢真琴・・・大林学園の高校生
佐藤美穂・・・同級生
望月幸作・・・友人
作者 狸林治
あらすじ
薬を飲まされた高校生がニューハーフに変身・・・
1
小沢真琴が彼の名前である。彼は東京の大林学園高等部の2年生である。
郊外のK市に住んでいる。家は比較的閑静な住宅街にある。学校までは電車を使い、1時間ほどのものだ。
近くに古い大きな屋敷があり、長年空き家になっていたが、最近誰かが越してきたらしい。
散歩のついでに近寄り、その家を見ることにした。
2階建てで、中はひっそりとしている様子。おそらく、出かけているのだろう。
家の周囲を1周すると、彼は次第に大胆になってきた。門に柵があるのだが、そのかんぬきが錆びていて中に侵入できる。
だが、さすがにそういった泥棒のような行為はさすがにはばかられ、庭をのぞきこむだけだった。
「君、私の家に何か用かね?」
背後で突然、男の声がした。驚いて振り返ると黒づくめの服装の初老の男が立っていた。
「メ、メモ用紙が風で飛ばされてこの家の中に入ったようです。
と、とっさにうそをついてしまった。
「私は、この家の主です。遠慮なく庭を探してみなさい。
と言うと、男はさっさと自宅に入ってしまった。小沢真琴はその場にしばらく、しゃがみこみ考えた。
しばらく失くしたメモをさがすふりをして、ここの住人にあいさつして帰ることにした。見つからなかったと言っておこう。
ふいにドアが開き、さきほどの男が手招きした。
近寄ると、男は彼を玄関の中へ招き入れた。
「失せ物は見つかったかい?」
「いえ・・・」
男は返事をろくに聞いていないようだった。小沢真琴の言ったことがうそだと見抜いているのだろう。
「お茶でも飲んで行きなさい。近所の人のようだから、あいさつだよ。」
「え、どうして僕が近所の者ってわかるのです?」
「君の持っているバッグに住所が書いてある。それだけさ」
身振りで腰を下ろすようすすめられ、彼は座り入れてもらった漢方薬のようにどす黒いコーヒーをすすった。
しばらく気まずい沈黙が周囲の空気を支配したので、おずおずと聞いてみた。
「ここに・・・」
すると、男はこちらの疑問を読み取ったかのように語り始めた。
「私はある大学に勤めておる。」
と、男はここでテーブルの隅にあった本を手に取り小沢真琴に見せた。
「しばらく、聞いてくれ給え。自己紹介のようなもんだ。」
それからこの男の話した内容をかいつまんで記すと、
この男は心理学を研究していて都内の某大学で教鞭をとっているという事、名前は黒井肇、この屋敷には一人で住んでいるということである。
「それはともかく、君は高校生か?」
「そうです」
「端正な顔立ちをしてるね。」
このあたりで、まことを次第に眠気を催してきた。
「わしは魔術も研究しておる。君は変身したくはないかね。というか、別の人格になりたくはないか。スイッチを切り替えるように人格が一定の周期で変われば楽しいと思わないか。」
ここまできくとまことの意識はほとんど睡魔に支配されてしまった。
がくりと首が前に落ち、完璧な深い眠りの天使が彼の肩に舞い降りた。
2
意識が戻ると自宅のベッドの中にいた。妙にすがすがしい朝に感じられる。
朝食をすますと彼はそそくさと学校へ向かった。
途中、きのうの屋敷が垣間見えた。あのおかしな体験は何だったのだろう。それは、あとであの屋敷にもっと注意深く近寄り観察してみようと心に決めた。
下校途中、クラスメイトの佐藤美穂が追いついた。
「真琴くん。ちょっと相談があるの。聞いて。ミステリーすきでしょう。」
かれはうなずいた。
「この前、うちの書斎を整理したの。もちろん、私のじゃなくて父の書斎よ。」
彼女の話によると佐藤美穂は父親に書斎の整理を頼まれ手伝ったそうだ。
なんでも相当の読書家で2000冊の本を持っているため書斎が狭くなり、不要な物を結束し処分する手伝いをしていたらしい」
「そうしたらね、電話がかかってきて、おとうさん町内会の会合があるのをすっかり忘れていたの。帰ってきたら一人でやるから、あと200冊ほど別にしておいた本をしばって部屋のすみにおいといてっていうの。」
まことはうなずいた。
「本って重いから大変だったよ。」
「そうよね、大変よね。本当にそれだけの量じゃ疲れるわよね。」
「ちょっと、まことくん。口調が変よ。女みたい。」
まことはぎょっとして、黙り込んだ。きのうの謎の男の奇妙な言葉が脳裏を掠めた。君は別の人格になりたくはないか?たしかにそういっていた。その後、彼は深い眠りに落ちたのである。
「どうしたの?顔色が悪いね。」
「いや、なんでもない。それより、さっきミステリーがどうたらこうたらって言ってたような気がしたけど・・・」
「そう、それよ。おとうさんの蔵書を整理しているとおかしな紙切れが出てきたの。」
「どんな?」
「手書きで、数字だとか地図だとか書いてあるの。」
気が付くともう大林学園の駅に着いていた。
「私の家、となりのL駅から近いの。寄ってく?ちょっとだけ、見てってよ。」
彼はそうすることにした。
3
佐藤美穂の家はL駅を出て10分ほどの小さな商店街の裏にあった。
美穂の父親がドアを開けてくれた。
書斎は階下の東側にある六畳ほどの部屋で庭に面していた。
「この本なの?ほら。これ」
と、少ししわにはなっているがまだ新しい紙を見せた。これをはさんでいた本は軽い内容の歴史小説だった。
「君のお父さん、さっきいたようだったけどここに呼べない?」
「きょうは、仕事が休みのわけじゃないの。また、出かけちゃった。」
まだ、午後4時半だった。
メモを仔細にしらべてみた。縦15センチ横10センチほどのサイズの紙である。紙の縦方向に手帳か何かから破り取られたようである。小沢真琴はしばらく、真剣な表情でそこに書かれたものを見て、考えていた。
「何か、わかった?」
「いや。まだ、だめよ。せかさないで。」
「さっきも言ったけど、まこと君女性化してるみたいだよ。」
「そうだ。もう一回あの部屋を見せて。」
書斎に戻ると、彼は室内をくまなくしらべた。
「おとうさんが整理した日は何曜日だった?」
「日曜ね。会社が休みだった。」
「このガラス戸は閉め切って置かなかった?」
「それは覚えてない。どうして?」
「これを見て。」
まことが示すところに大きな足跡があった。ただ、一度ふき取ろうとしたようで薄かった。
「だれの足跡なの?」
「あとで、しらべてみるから。君はその日にこの家に来客があったかどうかおとうさんに訊いておいてくれないか。お願いね。」
美穂はうなずいた。
4
彼は例のメモをコンビニでコピーし、自宅へと向かった。
途中、謎の男の家の見えるあたりで、きびすを返し、屋敷に近づいた。階下に男がこちらに背をむけてすわっている。どうやら、電話をしているらしい。注意して、近づくと少し声がその部屋からもれてきた。
窓が少し開いている。そこにたたずみ、立ち聞きした。声はところどころしか聞こえない。」
「例の・・・人格を・・・そうそう、君と共同で・・・薬だよ近所の高校生・・・実験・・・その後の経過・・・いや、まだ彼に・・・わかった後で。」
電話を切る様子が見て取れたので彼は、後ろも振り返らず早足で自宅へ戻った。
彼はあのおかしな男の妙な薬を飲まされたようだと悟った。
5
自分の部屋に戻ると、机に向かい暗号の解読を始めた。
左に神社を表わす記号が描かれている。記号は○で囲まれていて、下に小さくきつねの絵、その下に円がかかれていた。円には中央に四角い穴がある。その絵の下に東松山とある。
右の方には絵はなく、千葉成田小、1-3-5だけ。下に下向きの矢印の記号。さらに下にクエスチョン・マーク。
しばらく、ぼんやりと考えていたが何も思いつかなかった。
妙に、女性用の衣服が欲しくなり、がまんできずにスーパーマーケットで婦人服を買ってしまった。
わかったことは、ただ自分が周期的に女性的になることだけだった。変な薬を飲ませた男を訪ねようと思ったが、婦人服を手に入れることが快感だったのでやめた。
夕飯後、しばらく横たわり気分転換に推理小説を手に取った。「黄金虫」はポーの名作で暗号解読がテーマだったなと思い、本棚を探したが見つからなかった。
そのとき、携帯電話の着信音に気づき、出てみると美穂だった。
「父が帰ってきたので、きいてみたらあの日はお客さんはなかったそうなの。」
「そう、君の家族が土足で入るなんて考えられない。通行人は考えにくいし。たしか、地下足袋のような足跡だったなあ。」
「えっ、いま思い出したんだけど植木屋さんが二人来てた。でもいつもの人だからそんな無作法なことはしないはずだと思うんだ。」
「二人とも?」
「そういえば、もう一人は見たことのない人だった。」
「わかった。あとでしらべよう。」
かれは段々いろいろなことがわかってくると楽しかった。犯罪に関係のある可能性は極めて低いだろうが、もとよりまだ学生の彼は犯罪調査をする気はないし、できるはずもなかった。
6
電話を切るとひらめいた。この鳥居のマークは神社だ。これは当たり前だろう。きつねが描かれているのは、稲荷神社ということである。問題は円形に四角形の穴の開いた絵、これはおそらく、江戸時代頃の穴あき銭と思われる。問題は東松山と言う文字だ。これは埼玉県の地名である。そこで、インターネットで東松山、神社というキーワードで検索してみた。
すると、箭弓稲荷神社が見つかった。箭弓稲荷神社は、五穀豊穣、商売繁昌、家内安全の守り神であり、厄除、火難除、開運 、学業成就などの祈願社として古くから信仰を集めている、埼玉県東松山市にある神社 ですと記載されている。だが、ここでわからなくなってしまった。
仕方なく、右側の問題を検討してみよう。
千葉、成田小1-3-5、これは一見千葉市内の地名だろうと思われた。それとも、成田小という小学校なのだろうか。1-3-5は住居表示にも思えるし、1年3組出席番号15と解釈もできる。この推理を誤ると今後の進展に大きく関わってくる。
7
翌日、登校すると隣のクラスの望月に尋ねた。
「コインは、たくさん集めてるけど日本の物だけだよ。」
「四角い穴のお金なんだ。」
「ああ、それは江戸時代の寛永通宝とかいろいろあるよ。今、持ってるの?」
「いや、東松山の箭弓稲荷神社ってところに行くと、コイン屋さんはある?それか、その近辺でコインが大量に発掘されたってことはない?」
「コイン屋はないだろう。発掘のニュースも聞かないね。ただ、箭弓稲荷神社でむかしきつねの絵のコインは出しているよ。持ってるし、見せてあげようか。」
「貴重な手がかりありがとう。」
「気になってるんだけど、最近、君なんだかなよなよしてないか。」
8
ともかく、これで一歩前進した。あとは、右側の謎である。
あしたは、土曜日で学校が休みだ。千葉に行ってみようか。なんとか交通費のかからない方法はないものかと考えた。
一人で、捜査に向かうのも初めてなのでやや不安だった。
9 3月30日土曜日
きょうは両親がそろって外出しているので、かれは9時に出かけることにした。
玄関まで行くと、なぜか急に女装して出かけたくなった。抑えることのできない強い欲望だった。
自室に戻り、大急ぎで着替え軽く化粧もした。洗面所にサングラスが置き忘れてあったので、拝借し再び出かけた。玄関のドアを開けると、イギリス人の女性が立ち止まり、こちらを見た。
「あら、へことくんじゃないの。」
「まことです。あなたはシャーロットさん?」
「そう。どうしたのかっこいいじゃん。」
「変装してるんです。しかし、見破られてしまった」
「私はプロの探偵ですから。」
彼は、今までのいきさつを美穂の事件だけ話した。
「それでこれから、千葉へ行くのね。よし、いっしょに行ってあげる。今日は休日なの。」
と、彼女に同行してもらうことになった。
「シャーロットさん、ぼくは警官になれるでしょうか?」
「もちろん。立派な婦人警官になれるって。」
駅に向かって、歩いて行ったがシャーロットは喫茶店で打ち合わせしようと言った。
「まことくん。千葉へ行くって言ったけど、私は植木屋さんに先に行って見るべきだと思う。」
順番として、植木屋、東松山、千葉と決めた。
佐藤美穂に電話して、住所、店舗名をきいた。
場所は、美穂の家からは遠く埼玉県川口市だった。名前は丹後園。川口は植木屋、盆栽園の多い町である。昔は鋳物がさかんだったが、今は工場の数が著しく減少しているという。
「ここから、1時間半ほどね。ここをしらべてみたらどう?」
「そうですね。さすがですね。」
川口から、バスで30分ほどで到着した。
「どう、話を切り出すんですか?」
「任せて、というかいま考えてるところよ。」
植木屋の段要編集
「捜査にあたって、自分の職業を正直に言った方がいいと思うの」
「仕事にかこつけて訊いて見たら?どう、たとえばそうね。実は斉藤さんに紹介されたんだけど、今度自分のうちの庭を改造するとか、あることないこと織り交ぜて。」
バス停でおり、歩きながら話していたのだが、そのせいで植木屋丹後園までの道がすっかりわからなくなってしまった。
通りかかったおじさんに聞くと、この道をさらに進むと道が下り坂になって、くだり切ると左側に玉の輿神社があるのでそこを左に折れると目的地とのこと。
「ひとつ、問題があるのよ。うそをいうとあとでつじつまが合わなくなるし。」
そうこうするうちに、植木屋に到着してしまった。
事務所に入り、
「ある方の依頼でうかがいました。」
社長とおぼしき男がソファーから立ち上がり近づいてくる。
「どういうご用件で」「大林学園の斉藤さんのお宅の造園作業をされたのはこちらでしょうか?」
「ああ、いかにもそうです」
「実は、その斉藤さんの家のあるものが盗まれたそうです。何がとられたかは申し上げられないのですが」
「それで、あなたがたの捜査に協力しろと」
「斉藤さんは穏当な手段で取り戻したいのです。」
「
わかった。そこまで率直の言われたからには、協力します。」
と、ここからシャーロット・ホームズは質問を開始した。
「斉藤美穂さんからきいたんですが、社長さんの会社の二人が今回斉藤さんのお宅の作業を担当されたそうですね。」
「そうです。二人と言うのは一人は内藤、もう一人はええと思い出せない。」
社長の口調はすっかりていねいになっていた。
「だれか、あの日に内藤といっしょに仕事をした奴のことをおぼえてないか」「社長、派遣会社から一人来ています。名前は、いますぐしらべます」と事務員の女性が言った。
「宇賀神さんです。ジーライオンという派遣会社から1日だけで来ました。思い出しました。無口な小柄な人でした。
この女性の話によると宇賀神はとしは30後半、黒の薄いジャンパーと下は作業服だったそうである。
その他、同僚の話をいろいろ聞いてみたが、追加するような情報はない。
とりあえず、そこから引き上げた。
「これから、人材派遣のジーライオンに行って見ましょう。」
「もちろん」
と、浦和駅に引き返した。
浦和駅に到着すると、午後2時になっていた。駅前のラーメン屋「ヶ月」で昼食を取り、東口の派遣会社「ジーライオン」に向かった。
それは、駅から7分ほどのところにあった。
「こちらに、宇賀神さんて方が登録されているということで来たのですが・・・、金融機関の者です。」
支店長が応対に出てきたので、名乗らずに訊いた。岩田という名の30代の男だった。
「おりますが、2,3日前から連絡が取れません。」
(現在、3月30日土これはあとで削除)
「最後に仕事したのはいつ?」
「今月の24日、日曜です。川口の植木屋さんの助手の仕事でした。6時ごろ、その日の給料を取りに来てそれ以後、音信不通です。」
「こちらに登録したときに住所などきかれたのでしょう?」
「そういった情報は初回の登録時に用紙に書いてもらいます。電話番号、それから簡単な履歴ですね。しかし、住所はおそらくでたらめか、もうそこには住んでいないのでしょう。給与明細を郵送したのですが返送されてきましたから。」
「彼の住所を教えてはいただけないのでしょうね。」
「「個人情報を教えるわけにはまいりません。」
それから、30分ほどかけ、いろいろと質問した。その間、事務所には2.3人の日払いの給料を取りに来たスタッフが出入りした。
この時間に取りに来ているということは早朝からの仕事だったと推測される。
7000から8000円ほどの一日分の給料を受け取り出て行くものたちが多い。
事務所を後にし、駅に向かいながら話した。
「一日分の給料を受け取って帰る人が多かったみたいです。あの人たちの中には、家のない人もいるんでしょうね。」
「たぶんね。1週間。1ヶ月の給料を取りに来る人間は少ないと思う。そういう人は大抵振込みよ」
「1日働いて8000円の給料、お金は大事にしなきゃ。電車賃はちゃんとスイカにします。」
「あんた、きょうは一銭も払ってないのよ」
「さて、これからどうするか?神宮寺さんならたばこ吸う場面だけど」
「ホームズさんはパイプふかしてましたよね。そうだ、いま思い出したんですが・・・」
と、一息つき、
「さっき、支店長がノートをカウンターに広げていたんです。さりげなく見たらそこに宇賀神って名前がありました。」
「どうしてそういう大事なことを先に言わないの?スイカがどうたらメロンがどうのこうのってどうでもいいことばっか言ってて」
「すみません。住所が目に入りました」
「どこ?」
「川口市朝日です。」
「すぐ行くよ」
川口市朝日は駅から○行きのバスを利用した。停留所は国道122号沿いにあった。「朝日はこのへんだけど、何丁目かはわからない?」
「たしか記載がなかったと思います。」
大手の「ブックオン」があった。そちらの方へ歩いていくと
「本なんか見てる場合じゃないでしょう。」
(客観的に見て主人公がニューハーフでも、高校生でも意味ないな、もうちょいなおそうか)
自分でかいててつまらなきゃね)
さくしゃの本当の体験を書くか」
「住宅地図があれば、ここで見て行こうと思うんです。買うと高いだろうし」
店員にたずねたが在庫はなかった。置いても売れないのだろう。タウンページもないだろうな。
「そうだ。いぜん図書館でみかけましたよ」
「スマホで検索してみるから。ええと、ええとはいらんねん、ここから2kmくらいのところね」
「行って見ます?」
「あほか。2km歩いて地図がなかったら20分のロスやで」
「先生、標準語で話してください」
「バスで行くにしても待ち時間を入れたらそうとうかかるから、まずは電話よ」
結果はないとのこと。「あら、スマホの電池が切れた」
(やはりボーイズラブ的要素はひかえめにしようかな、本格で勝負)
「ぼくの携帯があるから大丈夫ですよ」
「携帯ショップがあったら教えて。充電器持ち歩いてるからすぐに充電できるから」
すると、そこにクリーニング屋があった。
「なぜ、ここにクンニリング屋が」
(時刻は午後4時)
(現在地川口)
そこで、最寄の携帯ショップを聞いた」
「さあ、この近くにはないよ」
「ちょっと、あんた。携帯より先にきくことあるでしょ。宇賀神さんののことよ」
「うがじんさんと知り合いですか?」
「ああ、うがじんなら郷里へ帰ったよ」
「いつごろです?」
「5年ほど前さ。去年死んじまった」
「え、なんだか変ね。質問は私が変わってする」
(ジェニファー・ラッシュのパワー・オブ。ラブいいね)
「宇賀神さんはいつごろまでここにいたんです?」
「ここにゃいねえ。郷里の山形さだ」
「違う。」
「いや、ちがわねえ」
「こっちのことよ。」
ふと、気がつくと壁にこの近辺の住宅地図が貼ってある。しばらく、沈黙。ラヂオからポリスのEVERY BREATH YOU TAKEが流れている。このクリーニング屋にまったくふさわしくない曲だ。」
「なにを見ていなさる?ごきぶりでもいるかね」
「この地図で宇賀神って家を探してるんです」
「この地図欲しいなあ」
「持ってきな。新しいのがあるから」
「でかした。まことくん。抱きしめたくなったわ」
「おらを抱きしめるなんて、恥ずかしいからやめてくれ」
「あなたをだくのではではありません」
公園のベンチにすわり、宇賀神という名を探したがない。
(時刻は4時半)
「アパートか、マンションってところだよ」
「おそらくそうでしょう。仕方がない一軒ずつしらみつぶしにしらべることにしましょう。戸建てが除外されたから楽なもんですよ」
1丁目から順にしらべ、調査が終わった家にマークをつけていくことにした。
「日が伸びたから、7時近くまでできる」
「そう、でも急いで。明日が晴れだとは限らないし、余計な交通費は使いたくない」
「同感です」
「あんた、一銭も使ってないじゃない」
最初 がっかりコーポ 該当なし がっかり
次 高級アパート 同じく 高級アパートという名のおんぼろ長屋
次 どくだみ荘
「うわ、貧困を絵に描いたようなアパートだ」
「しっ、声が高い」
1丁目が終わり、2丁目に入る。1丁目には12の集合住宅があった」
「時間がかかりますね。表札がないところも少なくないから」
「本当にひどいアパート、行ったことある?ろうかに酔っ払いが寝てるのよ。3万代の家賃のアパートなんかそうよ。一概には言えないけど」
あけぼの長屋という名前のわりときれいなアパートだった。一つ目には表札がなかった。ノックしてみたが、返事はない。
留守のようだ。鍵穴から室内をのぞくと電気がついている。
となりの秋山という部屋のドアをノックした。呼び鈴がついていたけど、小さくてわからなかった
「どなた?」
と返事があった。シャーロットは今度はあなた一人でといわんばかりの指示をだした。
まことは、はをきめ
「宇賀神さんって方を探してるんです。ぼく弟なんです」
「うがじんさんなら隣よ」
「となりに住んでるんですか?」
「そう。たしか、うがじんて。でもあんた、その服女物よ、でも声は男ね。本当に男なの?」
「男です。事情があって女装してるだけです。」
「ふうん…いろいろあるのね事情が。うがじんさん、30ぐらいの小柄で貧相で陰気な顔のひたいの出たちっこい目のどっちかって言えばぶす男よ。あんた顔立ちがとびきりいいし全然似てないじゃん」
「血はつながってないんです。人違いの弟ですから」
「はらちがいでしょう」
「そうそう、はらちがいです」
「はらちがいだって、血はつながってるのよ」
「そうなんですか?つながっている人もいるんですか。じゃ、ぼくは例外です」
「まあ、なんでもいいけど、となりは確かにうがじん○○(あとで名前確認)
シャーロットに気づくと
「そちらの人はつれ?まさか…あんたのお母さんっていうんじゃないよね」
「今晩のおかずは?」
「冗談言ってるの?」
「そこのコンビニでコロッケが半額です」
「本当?それに決めた!じゃあ買ってくるから待ってて!!」
と、女はコンビニに行ってしまった。
「余計なことばっかりきいて、ふざけてる場合じゃないよ」
「緊張しちゃって…」
「しょうがない、5分位で帰ってくるからまってよう」
そのとき、宇賀神の部屋からにぶい音が聞こえた。物音と小声がした。三人ほどいるらしい、ノブを荒々しく回す音がしたので二人はさっきの女があけっぱなしにしておいたドアのかげに隠れた。
思い直し、女の部屋の中へはいり、ドアが完全にしまる一歩手前で止めた。
鍵穴から、そとをうかがうと。3人が大急ぎで外へ出て行くのが見えた。全員男のようだ。
顔はわからない。服装は黒っぽいスーツ。一人は作業服。
二人は、廊下に出てとなりの部屋をのぞきこむ。だれもいない。
そこへさっきの女が帰ってきた。
「コロッケを無事手に入れた。今夜はフランス料理」
「ごきげんですね」
「あら、ドアが開けっ放しじゃない。なんかあったの?」
「いま、三人の男が出て行ったのです」
とシャーロットが言った。
「ドアを開けたままで行くなんて。」
「あなたもそうでしたよ」
「あんたたちが、いたから安心して買い物に行ったのよ」
どうやら、この女は警戒心の薄い質らしい。
「そうそう、ところでええと秋山さん。」
「なに?」
「ちょっと前に、3人連れの男を見ませんでしたか?」
「3人、男・・・。」
と、うつむきしばらく考えていたが、やおら
「どうして、私の名前を知ってるの?」
「あそこの表札をみました。」
と、かまぼこの板に消えそうなマジックで書かれた表札を指差した。
「なかなか鋭い観察・・・。そうそうそいえばちらっと。ちょうどコンビニの前にポストがあるよね。」
「ところで、となりの部屋は宇賀神さんの部屋ではないですか?」
秋山富士代、これがこの婦人の名らしい。ドアに消えかかった字で名前が書いてあったのを思い出した。
一人暮らしのようである。
(ここは、川口市宇賀神を探している)
「さあ、名前はたしか・・・思い出せないよ。あまり、顔は合わせないしね。」
「どんな人でした?」
「背が高く、うつむいて歩いていたね。メガネをかけていていつもマスクをしているから、顔はよくわからないよ。」
「一人暮らしでしょうね。訪ねてくる人はいませんでしたか?」
彼女は普段は近所にパートに出ているため、宇賀神に関する情報はこれ以上聞き出せなかった。
(6時ごろ)
辺りが薄暗くなってきたので、真琴たちは自宅へ帰ることにした、
明日は、(3月31日)日曜日なので、美穂がひまだったらいっしょに行動しようと考えた。
3月31日、風は強いが晴天だった。
小沢真琴は、佐藤美穂に電話した。彼女はきょうはひまだということで、10時にJRの川口駅で待ち合わせた。
真琴の住居はさいたま市にある。彼女は川口駅からは30分ほどだった。電車に乗って30分である。家から、駅まで5分ほど。
10分前に、美穂は到着した。
「書斎で見つけた紙切れをコピーして、持ってきたのよ。きょうは夕方は日曜だし時間があるから、成田へ行ってみない?」
日暮里で、乗り換え京成電鉄で成田へ向かった。真琴は途中、古く大きな屋敷でおかしな科学者らしき男に、妙な薬を飲まされたことを告白した。
「一度、その屋敷へも行って探ってみましょう」
と、美穂が言った。
「きょうは千葉、成田小1-3-5の謎を解こうと思うんだけど、これが神社の住所だろうね」
美穂はスマートフォンでその住所をしらべた。