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父
そっと覗いた部屋の中には父と兄の姿があった。
「父上……考え直してはいただけませんか?」
兄の苦しげな声がする。
それを嘲笑うかのように、父の冷たい横顔が答えた。
「ふん。何のために血の繋がらない娘を育てたと思っている」
血の繋がらない娘。……誰のこと?
「そのために引き取ったと言うんですか!」
「当たり前だ。不義の子など、なぜわたしが引き受けねばならんのだ」
引き取った、不義の子……?
「幼くとも美しかったから、いずれ役に立つだろうと思って育ててきたのだ」
父が、吐き捨てるように言う。
「その時がきたのだ。利用して何が悪い」
「……あなたには、人としての情というものがないのですか!」
「そんなもの、何の得にもならん」
ガチャリと、音がした。
「……何をする気だ」
兄が父に剣を向けている。
「あなたがいる限り、リィは幸せになれません」
「実の父を殺す気か!?」
兄が低く呟く。
「父でなければ良かったのに……」
――そして、一面の赤。