表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

「リィ。……もう部屋に入ろう」


 ヒューイはリサを抱き寄せて、部屋へと歩き出そうとする。


「待って。もう少し」


 リサが動かないので、ヒューイはため息を吐いた。


「少しだけだよ」


 そう言って、ヒューイはリサを抱き締めたまま彼女の髪を撫でた。


 ヒューイは優しい。とても大事にされていると、リサはいつも感じている。

 彼が何か隠しているとしても、それはリサが知るべきことではないのかもしれない。

 それでも、リサはこの言いようのない不安を取り除きたかった。



 今朝、嫌な夢を見た。雪の中を逃げている夢だ。

 自分は何かから逃げていた。追いつかれるのが怖かった。

 それは何か、過去に繋がるもののように思えた。


 ――だから今、記憶を取り戻すために雪の上に立っている。

 雪の中にいると、何かを思い出せるような気がするのだ。



「リィ。もう部屋に入ろう」


 ヒューイが再び彼女を促す。

 リサが諦めて従おうとした時、脳裏に血の赤が浮かんだ。

 それは誰の血だったのか……


「リィ!」


 ヒューイの声にハッとした。

 今何か思い出せそうだったのに、またもや消えてしまった。


 少々恨めしく思ってヒューイを見ると、彼はリサを探るように見つめていた。


「リィ。何か思い出した?」


「……いいえ」


 脳裏に浮かんだ血の赤は覚えている。しかしそのことを彼に告げるつもりはなかった。


「そう……」


 明らかにホッとしたように息を吐いたヒューイを見て、彼が思い出さないでほしいと思っていることは、リサの中で確信となった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ