散髪
「それでは行ってきます」
玄関に出ると、祖母と妹が見送ってくれた。祖父は昼寝らしいが。
「それじゃあ莉奈さん、祐樹をよろしくね」
祖母が笑顔で言った。
莉奈はキリッとして返事する。
「任せてください。しっかり付いてますので」
―俺はまだ都会に出たことのない子供かよ・・・・・。
「お兄ちゃん頑張ってね。応援してるよ」
「何を応援するんだよっ。とにかく行ってくる」
「いってらっしゃい」
2人並んで家を出た。
まず近くのバス停のベンチに座った。
それにしても高校生と中学生の2人だけで本当に大丈夫だろうか。
そんな事を思っていると莉奈が声を上げた。
「あ!丁度バスきたよ!」
大型のバスが停車し、後ろの扉がプシューと開いた。
バスに乗り込むと、意外にも中には数人しかおらず、椅子に座る事ができた。
2人用座席に隣どおし座ると、あまりに近いので妙に緊張した。
この緊張ってまさか・・・・。。
強ばった顔をしている祐樹を覗き込むように莉奈が顔を傾けて祐樹の顔を見てきた。
「どうしたの?心配しなくていいわよ。私結構しっかり者だから」
「そう、なんですか」
「それと、私に対して敬語はいいわよ。普通に友達としていたいからさ」
「は、はぁ」
窓から外の景色を眺めていると、ふとFCを思い出し、莉奈に話しかけた。
「莉奈さんってFCみたいなRPG好きなの?」
すると莉奈は目を輝かせて答えた。
「すごく好きだよ!私女の子なのにゲーム好きってちょっと変かもしれないけど」
「いやいや女性がRPGやってるって何か格好良いよ」
「そうかな?」
「うん。莉奈さんかなり強かったから実力もあるし最高だよ」
莉奈は微笑みながら言った。
「ありがとう。私の趣味褒めてくれた男子は祐樹君が初めてだよ」
「そう言ってもらえると照れるな」
「なんで祐樹君が照れるのよ」
2人の間に暖かい空気が流れた。
バスで40分程度で評判の良い散髪屋に辿りついた。
祐樹自身はあまり乗り気になれなかったが、莉奈に誘惑されて呆気なく落ちた。
《格好良い祐樹君見たいよ》
―まいったな・・・。
その散髪屋の自動ドアを通過すると、ゆったりとした音楽が流れた広い部屋に2人は包み込まれた。
床、壁、天井は一式白で、とても和やかな雰囲気だ。
店内も広く、ゆったりとしている。
入店してまもなく従業員が駆け寄った。
「お二人様ですか?」
莉奈が苦笑いして答える。
「私は違いますよ。彼です」
従業員は祐樹に視線を向けるとこちらです、と案内された。
案内された席に腰をかける。いよいよだ。
すわってまもなく従業員が祐樹の席の後ろについた。
「今日はどうしますかー?」
特に決めていなかった祐樹は、適当に頼んだ。
「全体的にさっぱりする感じに切ってください」
従業員はかしこまりました、と言って準備に取り掛かった。
―本当に今のでわかったのか・・・。
そして相当切っていなかった髪の散髪が始まった。




