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Ⅲ
彼女の葬儀は滞りなく終わった、らしい。
まるで伝え聞いたかのような言い方になるが、仕方ない。実際伝えられたのだから。テレビによって、だが。
そのニュースを阿尾はどんな気持ちで見たのだろう。そう思わずにはいられなかったが、だけどそんな思考に意味はない。きっと阿尾はなんとも思ってないのだから。
あの邂逅のあとも阿尾と何度も会ってはいるが、やはり阿尾はいつもどおりだった。
ここまでくると、阿尾のいつも通りとはなんなのだろうという気がしてくるが――その考えこそ意味はないだろう。少しくらい親しくなったからといって他人のことをすべてわかるだなんて、そんな考えは自惚れだということくらいわかっているつもりだ。そう考えると、あの時の阿尾に対する困惑が少し恥ずかしくなってくるが、私も人間なのだからそれくらいの過ちは許されるだろう。
さて、『加藤鳴子』の話もこれまでにしてしまおう。所詮私には関わりのない人間の話だ――死んでしまった人間の、話だ。