キノコ採りじいじ
キノコ採りじいじ
ある東北の山にキノコ採りじいじと呼ばれる者がおったそうな。
その名の通り山を登りて、キノコを採って暮らしていたそうな。
これはそんなキノコ採りじいじの小話である。
「よし、たか君今日は山へ行ってキノコを採りに行くかあ」
「うん!」
キノコ採りじいじは孫のたか君を連れて、山へ行くことにした。
柴犬の七も一緒だ。
わん、わん、わん。
野山をのぼりては、キノコを採り続ける。
「この赤いキノコは食べられないから、注意するんだぞ」
「わかったじいじ」
孫のたか君にキノコについて教えながら楽しく山を登っていった。
ワン!ワン!ワン!
柴犬の七が前へでて、吠えたてる。
キノコ採りじいじはなんだろうと思うと、ピョンピョコピョーン!とウサギが出てきた。
「ここから先はいかせん!」
かわいいウサギは可愛く言った。
「そんなあ」
たか君は困り果てる。
キノコ採りじいじはバッとウサギの耳を掴むや、
「食っちまうぞ!」
とおどしてウサギをはなしてやった。
「いやーん」
ウサギはどこかへ消えた。
「じいじすごい!」
しばらくするとまた、七が吠えたてる。
鹿だ。
「ここは通さんぞ」
「じいじ、今度はどおするの?」
と、たか君が言うと、七がワンワンと吠えながら、鹿に噛みついたではないか。
「っいで!いででででで」
鹿はたまらず飛び跳ねながら逃げ去っ(にげ)た。
えらいえらいと言って、キノコ採りじいじは七の頭を撫でてやった。
ワン!
のっそのっそと足音がする。
イノシシが歩み寄ってきた。
「人間よ、ここより先は行かせぬぞ」
森の主なのだろうか髭を蓄えたりっぱなイノシシだった。
「うーむ、こまったのう」
「このキノコをやるから代わりに通してくれないかのう」
キノコ採りじいじは山を歩きながら採ったキノコをイノシシの近くに投げた。
「キノコなあ」
「うまい!うまい!」
イノシシが夢中になっている間に横を通り抜けた。
「なんとかなったね」
とたか君が言った。
山の奥深くに到達すると、なんと大きな松茸とその廻りに沢山の松茸が生えていた。
「すごいよ、じいじ」
キノコ採りじいじとたか君と七は松茸を採れるだけ採っていって、それを売ってしばらく遊んで暮らしましたとさ。
たか君とキノコ採りじいじと七は川に魚釣りに来ていたそうな。
「こうやってミミズをつけんだよ」
キノコ採りじいじは腰につけた籠からうねうねと動くミミズを取りだして釣り針につけた。
たか君はミミズをつけてもらって川に向かって竿を振るう。
キノコ採りじいじも釣りを始めた。
ワン、ワン。
犬の七は草原で寝そべってひなたぼっこだ。
五分もたたないうちにキノコ採りじいじの竿に魚がかかる。
きのこ採りじいじは魚釣りの名人でもあった。
またかかる。
またかかる。
次々(つぎ)と釣れていった。
「じいじ凄いなあ」
「はっはっは」
たか君もやっと釣り上げて、魚が針からとれないのでキノコ採りじいじにとってもらう。
また、釣り糸を垂らしていた、たか君は糸の先が動か(うご)なくなっているのに氣づく。
「あれ?ひっかかてるの?」
引っ張ってもびくともいわない。
「んんんん!!」
力の限り引っ張ると、魚がかかっていた。 なんで動か(うご)なかったのかなあといぶかしんだが、まあいいやと思い、釣れた魚をずるずると草原に引きずりながらキノコ採りじいじのもとへ行って魚を外してもらおうとした。
その時、川がバシャバシャ!と音をたてた。 キノコ採りじいじの垂らした糸の先、大きな水しぶきがあがる。
「うおお?!」
たか君はじっと見入った、凄い大きさの魚のようだ。
キノコ採りじいじはなんとか、大きな魚を、川岸の方へ寄せることに成功した。
魚が岸に上がった。バタバタと激しく動く。
たか君は驚いた。
川で見るような魚ではない。
木の丸太かと思われるような大きさの魚であった。
「なにあれ!?」
キノコ採りじいじは、風の如き速さで高い場所から岸へ降りていき、魚のもとへ向かう。
「じいじはやい!」
たか君が今までに見たことの無い速さでキノコ採りじいじは動いていた。
「捕まってたまるかあ!」
キノコ採りじいじの努力むなしく、魚は糸を切り、水の中へと帰って行った。
「いやあ惜し(お)かったなあ」
「大きなさかなだったね」
突然、川の水が盛り上がった。
なんと見上げるような魚ではないか。
「どひゃああ」
と言ってキノコ採りじいじとたか君は尻餅をついた。
そして魚はまた潜っていった。
「ありゃあ主だったなあ」
「なにしにきたんだろうね」
「きっと魚を捕りすぎたから帰れって言っておるんだろう、どれ帰ろうか」
「うん!」
二人と一匹は帰って魚を美味しく頂きましたとさ。
コッ。
木の台にかたい石がのった。
二色の石が沢山のって、模様ができている。
「むう」
キノコ採りじいじは腕を組んで考えこんだ。
たか君は碁盤をじっと眺めていた。
「じいじ!囲碁教えて!」
キノコ採りじいじは後でなと言うばかりだった。
いつもこれだ、囲碁が始まるとまるで会話をしてくれないのである。
とうとう我慢できなくなったたか君はわー!と声をあげた。
両の手で黒と白の石たちをメチャメチャにしたのである。
キノコ採りじいじと碁打ち仲間は何も言わずに固まっている。
たか君がじいいに怒られたのは言うまでもない。
たか君はある日、じいじの書斎に入ってみることにした。
本の山がうずたかく積まれて何かわからない置物が沢山あった。
「わあああ」
壁にかけてある猟銃が目に入ってきた。
たか君の目がキラリと光る。
「かっこいい」
たか君は、部屋にある椅子を頑張って移動させてそれを手に取った。
「バン!バン!」
鉄砲を撃つ真似をしている。
ガラガラガラ。
部屋の戸が開けられた。
「こら!なにやってんだあ!!」
こっぴどく叱られた。
温厚なキノコ採りじいじもさすがに危ないことには怒るのだ。




