六言目 戰爭抛棄ニ關スル條約(不戦条約)
タイトルの旧字体探し、難しすぎだって……。挿絵は古文が苦手で見るのがキツイ場合とばしてください。一応i/o自身で現代語訳しているのでぜひ見てください。
k 昨今は世界各地で悲惨な戦争や紛争、テロが相次いで起きている。毎年何処かで起きているこの戦争、本来は国連憲章に違反しているんだ。各国は国連総会で非難しているけど実際には止められないことが多い。
s 確か国連憲章では武力行使は慎まなければならないと定められていたっけ……でも「慎む」という表現だからあまり守られないのかも。
k そうだね。今回のテーマは、法律を少し超えて、条約について考えてみよう。s君、君には僕の考えが分かるかな?
s 分かりませんって……多分、国連憲章?
k 惜しい、今回解説したいのはその礎にもなったある条約についての話になるんだ。少し話を逸らすけどそもそも日本において条約は法律、憲法に比べてどっちが上か分かる?
s 憲法、条約、法律の順番で効力があったはず。
k 正解。但し、日本国憲法に限っては、サンフランシスコ平和条約やポツダム宣言などの日本の国際法上の存在意義を認める条約に限っては日本国憲法より条約が上になる場合がある。本当に極僅かだけどね。だから基本はs君の言った順番で正しいよ。
s で、今回の解説する条約は一体何なの?
k 戦前の条約である「戰爭抛棄ニ關スル條約(不戦条約)」だ。現在も効力を有する改正されたことのない条約の中でも相当古いものだよ。ちょっと下の写真を見てごらん。
(出典:国立公文書館デジタルアーカイブ、公文類聚・第五十三編・昭和四年・第十四巻・外事門一・国際一・通商一、戦争抛棄ニ関スル条約ノ批准より)
s うっわ……文語体は苦手なんですって。俺、古文高校で選択していないんすよ。漢字も常用漢字が制定される以前のものが使われているし、カタカナだし………………読む気が失せてしまいそう。
k だろうね。だから頑張って頑張って…………自分なりに現代語訳したんだ。マジでキツかった。この条約が制定された詳しい経緯は外務省の外交史料館日本外交文書デジタルコレクションで調べてくれ。詳しい経緯は今回は省く。ぜひ調べてみてくれ。
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i/o現代語訳 戦争放棄に関する条約
効力発生、昭和四年七月二十四日
(中略)
前文
朕(昭和天皇)は枢密顧問の相談を経て、昭和三年八月二十七日パリにおいて日本全権委員と共に署名調印し、その第一条中の字句に関し昭和四年六月二十七日づけをもって、日本政府が宣言する所がある戦争放棄に関する条約を日本政府の宣言をもって批准し、ここに日本政府の宣言と共に戦争放棄に関する条約を公布する。
ドイツ国大統領、アメリカ国大統領、ベルギー国皇帝陛下、フランス共和国大統領、イギリス・アイルランド海外領土皇帝インド皇帝陛下、イタリア国皇帝陛下(当時は王政)、日本国皇帝陛下、ポーランド共和国大統領、チェコスロバキア共和国大統領(現在はチェコとスロバキアに分離)は、
人類の福祉を増進すべき、その厳粛なる責務に深く感銘し、その人民間に存在する平和と友好の関係を永久的なものにするため国家の政策の手段としての戦争を率直に放棄しなければならない時機が到来することを確信し、
その相互関係における一切の変更は平和的手段によってのみこれを求め、また平和的にして秩序ある手続きの結果たるべきこと、及び今後戦争に訴えて国家の利益を増進しようとする署名国はこの条約によって得られる利益を拒否することになると確信し、
その凡例に促され世界の他の一切の国がこの人道的努力に参加し、且つこの条約実施後すぐにこれに加入することによって、その人民にこの条約の規定する恩恵を与え、もって国家の政策の手段としての戦争の共同放棄に世界の文明諸国を繋げることを希望し、
ここに条約を締結することに決め、この為その全権委員を任命する。
(中略)
よって各全権委員は互いにその全権委任状を示しこれが良好で妥当なことを認めたのち、ここまでの諸状協定する。
第一条
締約国は国際紛争を解決する為に戦争に訴えることをしてはならず、且つその相互関係において国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、その各自人民の名において厳粛に宣言する。
第二条
締約国は相互間に起きる一切の紛争又は紛議は、その性質又は起因の如何を問わず平和的手段に頼るほか、これを処理または解決で求めることを約束する。
第三条
この条約は前文に掲げられる締約国によりその各自の憲法上の要件に従い批准されるべく且つ各国の批准書が全て「ワシントン」において寄託された後、直ちに締約国間に実施されなければならない。
この条約は前項に定める所により、実施されるときは世界の他の一切の国の加入の為、必要な間、開いて置かれるべき一国の加入を示す各文書は「ワシントン」において寄託された後、直ちに締約国間に実施されなければならない。
アメリカ合衆国政府は前文に掲げられる各国政府及び今後、この条約に加入する各国政府に対しこの条約及び一切の批准書又は加入書の認証謄本を交付する義務を有する。アメリカ合衆国政府は各批准書又は加入書が同国政府に寄託されているときは直ちに前文に掲げる諸国政府に電報をもって通告する義務を有する。
これまでの文書を証拠として各全権委員はフランス語又は英語をもって作成され、両文書ともに同等の効力を有するこの条約に署名調印する。
一九二八年年(昭和三年)八月二七日、パリにおいて作成する。
(中略)
宣言
日本政府は一九二八年(昭和三年)八月二十七日パリにおいて署名される戦争放棄に関する条約第一条中の中の「その各自人民の名において」の字句は大日本帝国憲法の条章より鑑みて日本国に限り適用しないことの了解することを宣言する。
昭和四年六月二十七日
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s 結構な量ですね、これならまだ……でも最後の宣言は何なんですか?
k これは当時の明治憲法では国民主権ではなく天皇主権だったから、不戦条約の「その各自人民の名において」という文言が違憲ではないかという議論があり、日本では適用されなかったんだ。
s 時代の差をはっきりと認識させられる一文だ……今はもう無いの?
k いや、今も現役(効力を有する)との見解が有力だ。脱退に関する規約は明記されていないからね。
s でも第二次世界大戦は防げなかったんだ。
k でもこの条約は画期的なもので、今まで不戦条約が効力を持つ前の時代の戦争は国家間の争いの最終手段ではあったものの政策のために行っても国際法上の規約(ハーグ陸戦条約等)を守っていれば国際的な非難は浴びなかった。しかし、この条約によって、戦争自体「違法」ということが明記されたんだ。これは国連憲章や日本国憲法第九条の礎にもなった。本当に凄い条約なんだ。しかし、自衛権や侵略に対する定義はされず、言い訳も簡単な条約だったんだ。
s 定義ってどういうこと?
k 簡単に言ってしまえばどういったところまで軍の行動が許されるかの基準がなかったんだ。他国で本国の国民が迫害されているときに黙って見ているわけにはいかない。そういったときに他国へ無断で軍が侵入して国民を助けたとき、それは侵略なのかどうかの判断する定義がなかった。それがゆえに効力を発揮しきれなかった。しかし国連憲章はさっき言ったところのみかつ緊急性の高いものが自衛権の最大の発動範囲(安全保障理事会のが必要な措置を講じるまでのみに限り認められている)。
それ以外は安全保障理事会の許可がなければどんな強制行動もとってはならない(敵国条項については国連総会で使用しないことが採択されているため今回は解説しません)。
不戦条約は機能しきれなかったけど国際情勢における大きな転換点だったのは言うまでもないほどのものだ。
s 機能しきれなかった一面においては国際連盟と同じだけど、今も続いていると思うと凄いな。
k この条約は最初は十五か国だったけど最終的には六十三か国が批准、署名したんだよ。中華民国や旧ソビエト連邦も批准している。ちょっと無理がありすぎるほどロシアはやっちゃっているけど。
世界の国々を繋げる思いが条約に込められている。利益を自分で独り占めにするのではなく多くの人とわけあっていく。今の国際情勢に一番送りたい言葉だ。
今も世界中で続く紛争に違法性を見出す国際社会を作りたい。そんな思いを込めてこの不戦条約が今も続く。
時間かかったな……。現代語訳に間違いがあれば誤字報告お願いします。
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