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法と公約の無知な批判者に告ぐ  作者: i/o


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7/10

五言目 国交に関する罪

完結設定、当分しません。振り回してすみません……

k 今回の内閣が刑法を変えようとしているみたいだね。


s 新聞で見ました。何か日本国国章損壊罪を作るとかなんとか……


k 僕はこの法案に関しては絶対に国会で通してほしくない。僕が左とか極左とか言われてでもいい。もう一度言う。絶対に通してほしくない。少年法の解説の時も言ったはず。刑法は社会の治安維持に対して行われるものであって、被害者感情で動くべきではないって。


s でもそれであれば何故、外国国章損壊罪なんてものがあるんです?


k いい質問だ。今回はそれをひっくるめて「国交に関する罪」に関してやっていこう。まずは、そもそも刑法でなんで国交に関する罪が規定されているか知っているかな?


s 外国との関係悪化を防ぐため?


k その通り、明治時代に刑法ができた際は、列強諸国と比べてまだ日本は軍事的に見て極めて弱かった。ロシアの皇太子が来日した際に日本の警察官に切りつけられた「大津事件」では政府がロシアとの全面戦争を恐れてその警察官に死刑を科すように裁判所に圧力をかけたとされているほどだ。

 裁判所の独立の観点から政府による司法への干渉は決して許されることではない。しかしながら政府側の感情として、甘い刑を科してロシアに侵攻の口実を与えるなんてことは絶対に許されない恐怖感すらあっただろうね(ちなみに大津事件では裁判所が政府側の圧力に屈することなくその警察官を当時の刑法通り、今の無期懲役に当たる刑を科した司法の独立を示すエピソードとして有名)。

 国交に関する罪は当時の日本にとって相当重い犯罪だったんだ。


s 政府が圧力をかけるとか、とんでもないエピソード……


k 刑法って順番に見ていくと、国にとってダメージの大きいものから小さい順にあるように見える。

 「第二編 罪」を順に追っていくと、「第一章削除(皇室に対する罪)」、「第二章 内乱に関する罪」、「第三章 外患に関する罪」、そして「第四章 国交に関する罪」と書かれてある。一章は除いて(削除前は死刑が科される条文もあった)二章と三章はどちらも死刑が科されている条文がある。これを見るに国家に対する罪は極めて重い犯罪だということが分かる。それに続くほど四章に当たる罪は当時の日本にとってダメージがでかい。戦後、日本国憲法に沿って刑法が改正されても条文の順番は変わっていない名残でもあるんだけど。


s それを思うと国交は死活問題だったんですね。


k 今の日本もね。第四章は第九十条から第九十四条まであって、現在の刑法には「第九十二条 外国国章損壊等」、「第九十三条 私戦予備及び陰謀」、「第九十四条 中立命令違反」の三つが規定されている。ちなみに削除された第九十条と第九十一条には外国元首・使節に対する暴行・脅迫・侮辱についての罪などが定められていたけど、日本国憲法の法の下の平等に違憲しているからという理由で削除されている。


s 第一章がないのも同じなんですね。ちなみに外国国章損壊罪はどういったものになるんですか?


k これは、「外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、または汚損した者」に「二年以下の拘禁刑(改正前は懲役)、または二十万円以下の罰金」が科されるよ。ちなみに他人の物を勝手に損壊などすれば器物損壊罪(三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金)が併合してくるからもっと重くなる。下手したら拘禁四年六月が科されてもおかしくない。結構重い犯罪ということは理解できたかな。


s 凄い理解しました。だとすると「日本国国章損壊罪」ができたらどの章に入るのかな…………。


k 僕の考えを言ってしまえば、「外国国章損壊罪」が「国章損壊罪」になると思う。

 でも、ここで待ったをかけたい。まず日本の国章は日本の問題であってダイレクトに国交に関係するかな。僕はしないと思っている。それに「外国国章損壊罪」は外国政府の請求がなければ公訴(裁判所に検察が被告を起訴する)できない。これは限界まで表現の自由を守っていると捉えれる。自由に逮捕できたら、どこまでが犯罪か示しがつかなくなっていく恐れがある。刑法が権力の暴走を抑える目的(罪刑法定主義)を果たしているわけだ。

 もし、「国章損壊罪」ができれば、被害を被るのは誰か。国だ。でも、本当に「社会の治安維持」の目的にあっているのか。あっているわけがない。


s どういうところがあっていないんですか?


k 国が訴えられるということは警察や検察が自由に捜査、取り調べ、起訴の判断ができるということになる。例え裁判で無罪でも、その間勾留はできる。そんな権限を権力者に与えるのは「社会の治安維持」の名を冠した「治安維持法」の再来が起きかねない。第一、日本国憲法の定める表現の自由は「公共の福祉」に反しない限り認められる。それを鑑みても日本の国章に限らず「外国の国章」も本来は表現の自由だけど公共の福祉(これが原因で国交が悪くなり貿易ができなくなる等)に反するからダメなわけであって、日本の国章を汚すことは公共の福祉に反するほど許されない一線なのか。というところだな。


s (久々に熱気があるな……)でも国章は尊重されてもいいと思いますけど。


k 道徳的にまず、お互いを尊重しなさいと教えているはずだよな。でも言葉では表すことのできないことをそうやって伝えるしかないときもある。刑法で縛ってもいいのはそれで国や国民、生活、治安などに重大な影響を与えるものだけで、日本の国章を損壊して生活できなくなったり治安が将来的に相当悪化するとは到底思えない。


s 集団で脅すようにやっていたら…………って既に脅迫罪とかの他の条文にあるような……。


k その通り。集団で脅すようにやれば破壊活動防止法や刑法の「騒乱罪」、「器物損壊罪」などで対処できる。わざわざ日本の国章を損壊した罪を罰する規定がなくとも対処できる場合が多い。


s やはり「外国国章損壊罪」を「国章損壊罪」に変更しなくてもいいのかな……。


k しなくていい。絶対にいらない。これを制定すると、もはや表現の自由に制約を入れていると言っても過言ではなくなる。国が不快というだけで人権を奪う権限のある「刑罰」を科す、それは決して許してはならないことだ。

 アメリカでもそれ許さないことを示す事件「アメリカ合衆国対アイクマン事件」が起きている。




 本当に必要かどうか。国民は審判を下す時が来ている。










 日本国憲法の条文の内容と意味、経緯を忘れた者に言いたい。自由は失ってからでは遅い。

そもそも、ものは大切にしましょう。人さまが丁寧に作ったもの(たとえ自作でも)は魂がありますから。刑罰がなくとも「天罰」は下ると思っています………………。

ちなみに今回の解説になかった私戦予備及び陰謀罪は実際に適用例があり、刑法誕生以来一回のみ、それも2014年にその容疑で取り調べを受けた事例があります(不起訴処分)。

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