八言目 罰金
久々の刑事法関連のテーマです。投稿頻度が減っていますが少し頑張って投稿していきます。
k s君、最近物価高が気になるね。
s 全部値上げで小遣いが溶けてく……もう少しは安くなってほしい。
k 刑法も物価高の影響を受けていたことを知っているかな?
s それは結構昔の話じゃない?
k 結構昔の話ではあるけどね。戦後の「狂乱物価」(ハイパーインフレーション)の影響で通貨単位が「円」中心に変わっていったんだ。それを受けて刑法の形も変わっていったんだ。
s 罰金が高くなっているってことだよね。確かに明治時代の「銭」や「厘」と言った通貨単位は株式でしか聞かないな。昔は罰金が安かったにしても当時からしてみればそれなりの金額だったよね。
k 鋭いね。でも今は刑法は改正され罰金の額は一万円以上と規定され条文も全て変わってきた。しかし現代においても罰金の額が極めて安い条文が残っている。
s まだあるの⁉変えればいいのに。
k 罰金の額って変えづらいんだ。条文ごとに変えるのではなく法律の全てを変えないといけないから凄まじい作業とコストがかかる。だから罰金等臨時措置法によって最低額を一律に引き上げたんだ。そうすれば作業はとても減るからね。
ちなみにこの法律は経済事情の変化によって制定されたけど、その額はこの法律の施行後からも少し罰金の額が引き上げられていて昔は「罰金二千円」という判決が下された事件も存在するんだ。今であれば罰金は最低でも一万円は超えないと罰金とは呼べず科料(千円以上)となる。
s 罰金が二千円の時代もあったんだ。ちなみにどんな事件?
k あぁ、それね、「砂川事件」。細かい説明は省くけど、東京都の砂川町(今の立川市)の米軍施設に無断で入ったデモ隊を日米地位協定で処罰しようとした事件。「伊達判決」と言って地裁が日米安全保障条約が日本国憲法第九条に違憲しているという判決を下し、無罪にしたことで有名かな。
まあ、後に跳躍上告で最高裁が統治行為論で違憲かどうかには触れずに地位協定で罰金二千円の有罪判決を下したけど。
話は逸れたけど、平成の時に最後の改正が行われて、「刑法、暴力行為等処罰に関する法律、経済関係罰則の整備に関する法律」を除いたすべての法律に適用されることになった。
ちなみに刑法が除外されたのは刑法自体の罰金額が引き上げられたからだ。
s 今も「罰金五円」みたいな法律が残っているの?
k 「爆発物取締罰則」の中に存在する爆発物発見者の告知義務に違反した場合がある。
要はテロに使えそうな爆弾を見つけたのに警察に言わずそんなものはないと隠したりすれば罰せられる規定だ。罰金額はなんと「百円」。現代では一万円以下の罰金になる(罰金等臨時措置法による)。
そのままの条文が残っている場合も少なくはなっているけど未だに存在するんだ。ある意味レアだから法律と条文を探してみても面白いと思うよ。
s 当時はどれぐらいの価値があったの?
k 最低でも五十万円は超える。当時の五十万なんて生活にダイレクトに響き、死に直結しかねないとても重い刑罰だっただろうね。
s マジか……。だいぶ軽くなったんだね。
k 犯罪だけどね。明治時代は刑罰が重かったから(窃盗罪なんかは罰金の規定は存在していなかったし通貨偽造に関しては死刑が科されていた)軽くなってちょうどいいくらいだったのかも。
s それにしても重かったんだね。
k 爆発物取締罰則についてはまた今度機会があったら教えるよ。話がまた逸れちゃったけど、物価高は刑法自体に大きな影響を与える。今は罰金一万円を高いと思う人が多いだろうけどもしかしたらそれも安いという状態が来るかもしれない。そんな時代は来てほしくないものだけどね。
罰金等臨時措置法がこれ以上改正されない時代が続くことを望む。
罰金も前科がつきます。甘く見たら一生を棒に振ります。




