その評価、星5つ(勘違い)
俺たちが街に戻ると、そこはお祭り騒ぎになっていた。
「英雄ガルド様が帰還されたぞー!!」
「魔神城が消滅した! あの方たちがやってくれたんだ!」
住民たちが、俺たちを取り囲み、歓声を上げている。
紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り響く。
「……なんだこれ」
俺は呆気にとられた。
「あ? ああ、そうか。あの店、評判悪かったもんな」
俺は納得した。
あの「黒き捕食者」とかいう店は、強引な客引き(誘拐)や、不味い料理(魂のスープ)で、地元住民から嫌われていたのだ。
それを俺が(物理的に)潰したから、感謝されているわけだ。
「ガルド殿! ありがとう! 本当にありがとう!」
領主が泣きながら俺の手を握る。
「娘も無事に帰ってきました! 貴殿は街の救世主だ!」
「(……娘もバイトでこき使われてたのか)」
俺は適当に頷いた。
「まあ、同業者としての『指導』だ。気にするな」
「指導……! なんと謙虚な! 魔神王を討伐しておいて、あくまで『指導』と言い切るとは!」
領主は感動し、大きな紙袋を差し出した。
「これは少ないですが、お礼です!」
中には、金貨がずっしりと入っていた。
「お、悪ぃな」
俺は受け取った。
これは「コンサルティング料」だと思えばいい。
「それと、これを!」
領主が掲げたのは、巨大な石碑だった。
そこには『救国の英雄・ガルド』と刻まれている。
「これを広場に建てさせてください!」
「いらねぇよ!」
俺は即答した。
そんなものを建てられたら、静かに暮らせない。
「代わりに、俺の店の宣伝でもしといてくれ。『ガラン麺、始めました』ってな」
「は、はい! 承知しました! 全領土に布告を出します!」
「(そこまでしなくていいんだが……)」
俺たちは、歓声を背に、自分の店へと戻った。
ボロ小屋『麺処・断罪』。
屋根はなく、壁は穴だらけ。
だが、ここが俺の城だ。
「……ふぅ。やっぱ自分の店が一番だな」
俺はカウンターに座り、アイゼンが淹れたお茶を飲んだ。
「先生、お疲れ様でした!」
エリザがニコニコと笑う。
「今回の遠征で、先生の『威光』がまた一つ世界に知れ渡りましたね!」
「次は、もっと遠くの国まで『出張(侵略)』しましょう!」
ミュウが地図を広げる。
「今回の戦闘データを元に、先生専用の『対神兵器』を開発しました」
テトラが怪しい設計図を見せる。
「……お前ら、少しは休め」
俺は苦笑した。
まあ、退屈はしない人生だ。
処刑人を辞めて、麺屋になって、本当に良かった。
「店主! ガラン麺一杯!」
入り口から、声がした。
見れば、街の住人たちが、恐る恐る店を覗いている。
「あ、あの……英雄様の作る麺が、食べられるって聞いて……」
どうやら、領主の宣伝効果があったらしい。
初めての、まともな客だ。
「……へい、いらっしゃい」
俺は立ち上がり、エプロンを締めた。
「最高の一杯を、食わせてやるよ」
俺はザルを手に取る。
さあ、仕事の時間だ。
俺の「湯切り」は、世界を救うためじゃない。
ただ、目の前の客に、美味い麺を食わせるためにあるのだから。
ザッ!!!!
鋭い湯切りの音が、荒野に響き渡った。




