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12/18

その評価、星5つ(勘違い)

俺たちが街に戻ると、そこはお祭り騒ぎになっていた。


「英雄ガルド様が帰還されたぞー!!」


「魔神城が消滅した! あの方たちがやってくれたんだ!」


住民たちが、俺たちを取り囲み、歓声を上げている。


紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り響く。


「……なんだこれ」


俺は呆気にとられた。


「あ? ああ、そうか。あの店、評判悪かったもんな」


俺は納得した。


あの「黒き捕食者」とかいう店は、強引な客引き(誘拐)や、不味い料理(魂のスープ)で、地元住民から嫌われていたのだ。


それを俺が(物理的に)潰したから、感謝されているわけだ。


「ガルド殿! ありがとう! 本当にありがとう!」


領主が泣きながら俺の手を握る。


「娘も無事に帰ってきました! 貴殿は街の救世主だ!」


「(……娘もバイトでこき使われてたのか)」


俺は適当に頷いた。


「まあ、同業者としての『指導』だ。気にするな」


「指導……! なんと謙虚な! 魔神王を討伐しておいて、あくまで『指導』と言い切るとは!」


領主は感動し、大きな紙袋を差し出した。


「これは少ないですが、お礼です!」


中には、金貨がずっしりと入っていた。


「お、悪ぃな」


俺は受け取った。


これは「コンサルティング料」だと思えばいい。


「それと、これを!」


領主が掲げたのは、巨大な石碑だった。


そこには『救国の英雄・ガルド』と刻まれている。


「これを広場に建てさせてください!」


「いらねぇよ!」


俺は即答した。


そんなものを建てられたら、静かに暮らせない。


「代わりに、俺の店の宣伝でもしといてくれ。『ガラン麺、始めました』ってな」


「は、はい! 承知しました! 全領土に布告を出します!」


「(そこまでしなくていいんだが……)」


俺たちは、歓声を背に、自分の店へと戻った。


ボロ小屋『麺処・断罪』。


屋根はなく、壁は穴だらけ。


だが、ここが俺の城だ。


「……ふぅ。やっぱ自分の店が一番だな」


俺はカウンターに座り、アイゼンが淹れたお茶を飲んだ。


「先生、お疲れ様でした!」


エリザがニコニコと笑う。


「今回の遠征で、先生の『威光』がまた一つ世界に知れ渡りましたね!」


「次は、もっと遠くの国まで『出張(侵略)』しましょう!」


ミュウが地図を広げる。


「今回の戦闘データを元に、先生専用の『対神兵器』を開発しました」


テトラが怪しい設計図を見せる。


「……お前ら、少しは休め」


俺は苦笑した。


まあ、退屈はしない人生だ。


処刑人を辞めて、麺屋になって、本当に良かった。


「店主! ガラン麺一杯!」


入り口から、声がした。


見れば、街の住人たちが、恐る恐る店を覗いている。


「あ、あの……英雄様の作る麺が、食べられるって聞いて……」


どうやら、領主の宣伝効果があったらしい。


初めての、まともな客だ。


「……へい、いらっしゃい」


俺は立ち上がり、エプロンを締めた。


「最高の一杯コシを、食わせてやるよ」


俺はザルを手に取る。


さあ、仕事の時間だ。


俺の「湯切り」は、世界を救うためじゃない。


ただ、目の前の客に、美味い麺を食わせるためにあるのだから。


ザッ!!!!


鋭い湯切りの音が、荒野に響き渡った。

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