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10/18

その食材、鮮度が終わってる

城の最深部。


巨大な扉を蹴り破る(摩擦を消してヒンジを外す)と、そこは広大なホールになっていた。


中央には、巨大な鍋……いや、釜が煮えたぎっている。


紫色の液体がボコボコと泡立ち、そこから人間の悲鳴のような音が聞こえる。


釜の周りでは、黒いローブを着た魔術師たちが、何やら怪しげな詠唱をしていた。


「……なんだ、ありゃ」


俺は絶句した。


「オープンキッチンか?」


にしては、演出が悪趣味すぎる。


釜の中身は、どう見ても食べ物ではない。


ドロドロとした液体の中に、目玉や内臓のようなものが浮いている。


「先生、あれは……『魂のスープ』ですね」


テトラが分析する。


「人間の魂を触媒にして、魔界のゲートを開くための儀式魔法です」


「(……ゲテモノ料理専門店か?)」


俺は吐き気を催した。


魂だか何だか知らないが、あんな色のスープを客に出すなんて正気じゃない。


「おい! そこの料理人ども!」


俺は大声で叫んだ。


詠唱していた魔術師たちが、ギョッとして振り返る。


「き、貴様らは何者だ!? どうやってここまで……!」


「同業者として言わせてもらうがな」


俺は釜を指差した。


「火力が強すぎる。その泡の大きさを見てみろ。煮立たせすぎて、風味が飛んでるぞ」


「は?」


「それと、灰汁アクを取れ。表面に浮いてるその黒いモヤモヤ(怨念)だ。それがスープの雑味になるんだよ」


俺の指摘に、魔術師たちはポカンとした。


「な、何を言っている……? これは『絶望』を抽出しているのだぞ?」


「絶望だろうが希望だろうが、煮込めばただの出汁だ。素材の味を活かせ」


俺はズカズカと釜に近づいた。


「先生! 危険です! あのスープには強力な呪いが!」


エリザが叫ぶが、俺は止まらない。


俺は持っていた「お玉(武器ではない)」を釜に突っ込んだ。


「どけ。俺が手本を見せてやる」


俺は、お玉でスープの表面を撫でた。


意識するのは、スープ(液体)と、アク(呪い)の境界線。


スキル発動――【絶対滑性】。


俺は、スープの中から「不純物」だけを滑らせて、お玉に集めた。


黒いモヤモヤ(数千人の怨念)が、抵抗なくスープから分離し、お玉の中に収まる。


「ほら、見ろ。これで澄んだ色になっただろ」


俺はアクを床に捨てた。


ジュワァァァ……!


床が怨念で溶けた。


「な、な、なんだとォォォ!? 数ヶ月かけて凝縮した『呪い』が、一瞬で取り除かれただと!?」


魔術師長が腰を抜かす。


「貴様、何をした!? 浄化魔法か!?」


「ただの灰汁取りだ」


俺は澄んだスープ(ただの魔力水になった)を小皿に取り、味見をした。


「……ふむ」


無味無臭。


コクもなければ、深みもない。ただの色のついた水だ。


「……不味い」


俺は皿を投げ捨てた。


「こんなもんを客に出すつもりか? 舐めてんのか?」


俺の怒号が響く。


「金を取るなら、もっとマシなもんを作れ! 出直してこい!」


「き、貴様ァァァ!! 魔神王様への供物を愚弄するか!!」


魔術師たちが杖を構える。


「殺せ! こいつを釜に放り込んで、出汁にしてやれ!」


ファイアボール、サンダーボルト、アイスランス。


無数の魔法が、俺に向かって放たれる。


俺は動じない。


俺の背後には、最強の弟子たちが控えているからだ。


「先生に……『ゴミ』を投げつけるとは、いい度胸ですね?」


エリザが、にっこりと微笑んだ。


その背後に、千本の光の剣が出現する。


「食材(先生)への冒涜は許しません! 私が代わりに『ミンチ』にしてあげます!」


ミュウが戦斧を振り回し、竜巻を起こす。


「厨房での火遊びは厳禁です。消火(抹殺)します」


テトラが重力制御装置を起動する。


「やれ」


俺が短く命じた瞬間。


ドゴォォォォォォォォォン!!!!!


魔神城の厨房(儀式の間)が、物理的に崩壊した。


魔法は光にかき消され、魔術師たちは重力でプレスされ、釜は微塵切りにされた。


「……やりすぎだ」


俺は埃を払った。


店員(魔術師)たちは全滅したが、まだ奥に気配がある。


「オーナーのお出ましだな」


奥の玉座の間から、どす黒いオーラが溢れ出していた。


この店の味を決めている責任者。


そいつに、引導を渡してやる。

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