2 “消える備品”とコピー用紙の亡霊 2
「一旦、状況を整理しよう」
おじさんたちの目線が加賀谷に集中する。
「なくなったものはコピー用紙、増えたものはホッチキスの芯。無くなるのは市役所が閉庁している土日の間で、目的は不明、か。
わからないことが多すぎて、ほんとに何かの霊がしてるんじゃないかという気がしてくるな。
みんな、それ以外にこの部屋に異変はないか、チェックしてくれ」
デスクの下や引き出しの中など、ありとあらゆるところをくまなくチェックするおじさんたち。
「俺のデスクは違いが見つからなかった。上腕二頭筋にかけてもいい」
「僕もです」
「俺もだ。ということは、コピー用紙とホッチキスの芯以外に変わりはないということだな」
「そうなりますね」
「だがこんなことをするのはどこのどいつなんだ?俺にはわからん!」
工藤は早々にお手上げ状態だ。
「実は気になってることがあって…この部屋に仕掛けられていたカメラは充電が切れて何も映っていません。
ほんとならバッテリーもあったし録画は続いているはずなんです。でも急に録画が途切れるなんて、おかしいと思いませんか?これ、霊の仕業ですよ、絶対」
さっきからウズウズしてると思ったら、これが言いたかったのだろう。無理やり話題を変えてきた。これで本人は大真面目だから困ったものである。
「犯人の目的がわからないな…何がしたかったんだ?」
加賀谷は星野に対して無視を決め込む。
星野もいつものことなので気にせずに、自分の世界に入り込む。
「紙とホッチキスなら、何かの書類だろうな。ホッチキスを使うんだから、パンフレット的なものだろう。パンフレットの紙で指を切って死んだ霊か?最も俺は幽霊には詳しくないからそんな幽霊がいるか知らんが」
工藤は珍しく筋肉以外について語っている。内容は馬鹿馬鹿しいが。
やがて、星野が思いついた!というふうに二人に話しかける。
「こんな時こそ僕の出番です。僕の占いに任せてください。
ここでできる占いもあるんですが、種類が少ないので、今日は先に上がらせていただいて、家で占ってみます」
「そうか、頑張ってくれじゃあな」
そう言って星野はいそいそと家へ帰って行った。
加賀谷は厄介者を追い出せてよかった、という感じだ。
工藤は相変わらず「パンフレットの霊…」とかぶつぶつ言いながらスクワットをしている。
「まともな奴はいないのか…いないな」
加賀谷はため息をつきながらデスクに開いたままにしていた昨日の新聞紙を捨てようとゴミ箱を覗き込む。
「うん?なんだこれは?」
加賀谷が声を上げる。
よく見ると、一見からに見えるゴミ箱の中にはレシートが一つだけ入っていた。
(レシート…こんなの金曜まであったか?いや、なかった。金曜の退勤後はゴミの回収の時間帯だ。これだけ回収されてないなんてことはない)
加賀谷は疑問に思い、レシートを拾い上げる。
それは文具店のレシートだった。
(『文舗たかの』…この文具店、見覚えがある…確か市役所の近くだ。
購入した商品は…『コピー用紙』?まさか…いや、間違いない)
「おい、工藤、これを見ろ。レシートだ。購入した商品はコピー用紙。金曜までこんなものはなかったはずだ。多分犯人がここに捨てたんだろう」
「幽霊のやつ、コピー用紙が足りなかったからってわざわざ買い足したってことか」
「おそらくそういうことになるな」
二人とも訳がわからなくなってきたようだ。
「ちょっと待て、そんな変なことをするか?なんでレシートをここに捨てたんだ?バレるじゃないか。それ、元々あったんじゃないのか?」
「いや、レシートの日付を見るに時間は土曜の昼だ。金曜、俺たちが退勤したあとにゴミが回収されてるから、捨てたのはそれ以降だ。
そこでだ、一つわかるとこがある。幽霊はものを買わないだろう。昼間に外を出歩くわけもない。
これは人間の仕業さ。
つまり、誰かがこの部屋に入り、あらかじめ買っておいたコピー用紙と元々セットされていたコピー用紙を持っていき、使った後のホッチキスの芯をばら撒いた……ということになる。いや、何かをこのコピー機で印刷したのかもしれない、そうだ。印刷したんだ。何かを印刷していて、途中で紙が足りなくなって紙を買い足したんだ」
「じゃあホッチキスの芯はどうなる。
それに何かを印刷するために閉庁している市役所に侵入するなんて、そんな危険を犯す必要があるものなのか?
それになんでバレるのにここにレシートを捨てたのかに対しての答えになってないじゃないか」
加賀谷も自分で言いながら頭痛がしてきた。工藤の問いに対して答えることができない。
どのパターンを考えても、非合理的で、おかしな行動だ。
別に市役所でやらなくてもいいじゃないか、というツッコミが目に見えている。
工藤は理解が追いつかず、筋トレを始めた。話しかけるなオーラが満載だ。
「とりあえず、今は考えても訳がわからない。
俺はこの文具店で怪しい人を見た人がいないか聞き込みしてくる。
工藤、留守番頼んだ」
そう言い加賀谷は文具店へと出かけた。
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