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1 “消える備品”とコピー用紙の亡霊 1

主な登場人物


加賀谷 誠(58):冷静沈着な課長。実は顔に出ないだけで色々考えている。

星野 晃(38):副課長。運命を信じすぎる占いマニア。

工藤 剛(53):現場大好きだが腰が弱い。謎の筋肉理論で推理を試みる。




ここはとある地方都市の市役所。周りは窓口対応や書類仕事に追われている。

だがそんな中、とある部署では沈黙が漂っている。


「……で、何が消えたって?」


ベテラン職員・加賀谷は、眼鏡をずらしながら資料棚の前に立つ若手職員に問いかけた。


「……コピー用紙です」


 返したのは星野。30代前半、妙に神妙な顔つきだが、本人は至って真面目なつもりだ。趣味はスピリチュアル。信じているのは気の流れと先祖の加護、そして占い。


「1箱ごっそりです。補充してあったはずなのに、今日来たら跡形もなく……これ、たぶん“います”」


「“います”って誰が?」


「……霊的な存在です」


 加賀谷は額を押さえた。月曜の朝から霊的な何かに襲われたことはないが、胃痛に襲われたことはある。


「おいおい……物品棚の管理ぐらいちゃんとしとけ。誰かが勝手に使ったんだろ?」



 その時。後ろのドアがガラッと開いた。


 「おはよう!」


 筋肉Tシャツに身を包んだ工藤がやってきた。市役所イチの暴走機関車。筋トレは宗教、プロテインは聖水。


 「聞いたぜ、備品が幽霊に盗まれたんだろ? ハハッ! 任せとけ! 俺の背筋で成仏させてやる!」


 「……どういう理屈だよ、それは」


「まぁ、良かったんじゃないですか、こういう謎こそ、俺たち『()()()()()()()』の出番ですよ」


そう、特殊案件対応課、これがこの三人のおじさんの部署だ。

普段はサボるだけのお荷物部署だが、普通の部署では対応できないような事案が起こった時、このおじさんたちは活躍する。

ある時はUFOが街に出没する事件を解決し、またある時は小学校の幽霊を撃退してきた。


他の課では対応できない、現実的にあり得なかったり対応するには規模が小さすぎるような事案に対応する課、それが特殊案件対応課だ。



「よし、じゃあ当面はこの消えたコピー用紙事件を対応しよう。

だが、他の部署がうちのコピー機を使いまくってるということはないのか?」

「そこは確認しました。コピー用紙がなくなるのはうちの課のコピー機だけですが、

現在あのコピー機を使っているのは、前広報課長の前田さんが作った市の広報誌がほとんどです。

会議で使う資料を印刷するなら、わざわざうちの部署のコピー機を使わずに、それぞれのコピー機を使ったほうが楽ですから。

あとは総務部の新入りの田中君が作ってる市役所内の禁煙などの注意書きですが、数は知れてます」

「なら、誰かがウチに侵入してるしかないじゃないか、一日中見張って、この筋肉ではっ倒してやる」

「それより、誰が侵入しているのか、ですよ。タロットで占ったら一発なんで、その人もところに行けばいいです。犯人が人だったらの話ですけど…」

「占いで犯人がわかるか!頼れるのは筋肉だ!」

「犯人が人じゃなかったら、筋肉なんて意味ないですよ!」


オカルトバカと筋肉バカがこうなるともう止められない。

しばらく言い合い、2人とも疲れてきた頃合いを見計らって加賀谷が口を開く。


「落ち着け2人とも。まずは状況を整理しよう。

無くなったのはコピー用紙だけなんだよな。ならコピー用事がなくなるのはいつからだ?」

「えっと、先週の月曜日にも同じことがありました。それ以外は特に…」

「なら今のところ毎週の月曜日に無くなっているということか…」

「なら月曜日までこの部屋で張り込みすればいいだけだ!」

「落ち着いてください、日曜日はほとんどの部署が休みです、張り込みするとなったら土曜からですよ」

「一旦落ち着け。張り込みをするのは現実的ではないが、見張るのはいいアイデアかもしれないな。家にビデオカメラがあるから、防犯カメラの代わりにしよう」

そう言って、次の日家から持ってきたビデオカメラをセットした。


一週間後、心なしかワクワクしたおじさんたちが揃って部屋に入ってくる。

「おはよう!幽霊は居るか?この筋肉で成仏させてやる!」

「朝に幽霊はいないと思うぞ」

「いえ、加賀谷さん、その認識は間違いです。昼間に幽霊が出たという報告は多々あります。霊の強さはこの世に残した想いに比例するので、昼間に出るということはそれほどまでに想いが強いということなので、昼間の幽霊の方が危険です」

加賀谷は呆れ顔をして受け流す。

「コピー用紙はやっぱり減っているな。よし、何が取れたか見てみようか。ビデオカメラを持ってきてくれ」

「わかりました……あれ、これ電源切れてますね…」

「なんだって?一応予備バッテリーも用意してたから大丈夫なはずなんだがな…」

「途中までは取れてると思うので、電源に接続してみてみましょう」

そう言い、ビデオカメラを電源に接続する。

しかし、電池残量はあったようでビデオカメラはすぐ立ち上がった。

「どこまで取れてますか?」

「日曜日の昼までだ。ちょうど日没くらいで切れている。早回しで見てみたが、特に怪しいことはない」

「電池も残ってるのに切れるなんて、きっと霊の仕業ですよ…霊が電源を切ったんです…」

星野がまた霊について語り出した時、工藤が口をひらく。

「おい、ちょっとこれをみてくれ」

「これは……ホッチキスの芯、だな。しかも一度使ったものを外したやつだ。

こんなところに置いたのは誰だ?」

「いや、俺の筋肉が正しいならここにホッチキスなんてなかった。

今回は、コピー用紙が消えただけじゃなく、ホッチキスも増えたみたいだぜ」

「コピー用紙がなくなってホッチキスの芯が散らばっている…なんなんだ、これ」


おじさんの謎は深まるばかりだ。

少しでも、

「面白そう!」

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