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帰途につく

「名残惜しいですね。次来るのは四十年くらい先になりますね。」

「あっという間ですよ。それに咲さんなら、ナミさんに頼めば自由に行き来出来るのではないですか。」

「だったら嬉しいです。帰ったら相談してみます。」

話しながら館に着くとアンセが出て来たところだった。


「では、後ほど。」

そう言ってエーハルーンはすっと部屋に戻っていく。ちょっと、ちょっと待って!でも引き留める理由もない。


「おは、よう。」

「おはようの時間じゃないだろう。もうすぐ昼だぞ。帰る打ち合わせをしようと部屋に行ったら居ないから、間に合わないかと思ったよ。」

気まずかったのは私だけでアンセは全く普通で、昨日の事には一切触れてこない。


「いつ帰るの?」

「長く居たいのは分かるが黄色の時間半分過ぎたら出ないとだな。」

「え、もうすぐじゃない。荷造りとかまだしてないよ。お散歩の時間無さそうだね。」

「寝坊助だから仕方ない。」

そんなに出発が早いとは思わなかった。はあ、北の木々に御礼したかったな。

部屋に戻って荷物をまとめるとアンセと共に2階にいるグナヤンムーを訪れる。


兄妹全員で迎えてくれて一緒にお茶をする。飲んだことのない甘いフルーティーな味で尋ねると南の特産だと言う。すぐに味が落ちるので他の天界では手に入らないものらしい。


「プローミーセの実のお茶です。甘味を一切加えていないのですが、甘くて良い香りでしょう。残念な事に収穫してから1日で味が変わってしまうので南でしか飲めないのです。凍らせたり、乾燥させたり色々試したのですがどうしてものこの味は保持出来ませんでした。」

「このお茶はどんな意味があるのでしょう。」

全ての食べ物に意味のある天界で別れ際に出されたこのお茶の意味を知りたくなった。


「これからの出会いを願い誓うものです。転じて色々な縁を結んだり、願ったりする時にも飲まれます。主天界から独立した時にも飲み交わしたと聞いています。」

「…何で天界は分離したのでしょうね。もし一つのままだったら、今も皆さんと一緒にいられたかもしれないのに。」

「仮説、ではありますが多分魂が増加したためでしょうね。」

「天界が分裂しても住む場所は増えないですよね。むしろ天界の端っことか危なくて住めない所が増えそうですが。」

「天界での魂の増加のせい言うよりは、地上からここに来る魂が増えるた結果、自動的にシャドーも増えたのだと思います。界膜はシャドーが天界に降り注ぐのを防ぐ役割を果たしていますが、シャドーを膜内に留められなくなったのではないでしょうか。そして、界膜の表面積を増やすために今の四つに分裂したのではないかと思っています。なので今後また大幅に魂が増える時は分裂する事もあるかもしれません。」

それで言うと大丈夫そうだと思う。前に大いなる力が魂が全体的には減っていると言っていた。でもこれは言わないでおこう。笑顔で微笑み返す。

それにしても知らない事が次から次へと出てくる。知らなくても生きていけるけど知っていると気をつけられる事も多い。夜の外出はしない、とか。


「そろそろ出発の時間ですね、名残惜しいですが準備はよろしいですか。」

グナヤンムーが立ち上がる。


「大丈夫です。他の皆さんはいつ出るのですか。」「皆さんほぼ同時間です。他の方とはすでに挨拶を終えているので下に行ってみんなで出口に向かいましょう。」

私達が最後の挨拶だったとは思わなかった。


下に降りると皆んな揃っていた。風板に乗って来た時の砂浜に向かう。私も一人で風板に乗れる様になったがまだまだ速さが追いつかないのでアンセと相乗りをして行く。風板もう少しマスターしたかったなぁ。帰ったら練習しよう。


行きと同じく木々のドアの前に立つと木々が道を作ってくれる。木々のトンネルを抜けて砂浜に出る。分かっていたが目の前にはただ地面の終わりがあってその先は空しか見えない。怖いなぁ。また葉っぱがいてくれたら良いんだけど毎回は難しいよね。躊躇しているとグナヤンムーが砂浜の砂を風通路に向かってそっと流す。すると砂の円盤が現れる。行きにナミさんが痛いかもと言っていたが怖さには代えられないのでグナヤンムーにお礼を言う。そう言えば砂の円盤の痛さを知っていると言うことはナミさんも同じ事があったのではないかとふと思う。


そっと足を踏み出すと円盤に座る。意味を知ってから改めて界膜を見ると、また違ったものに見える。きっと明るいうちに通らないとシャドーを浴びてしまうのだろう。隣にアンセもすぐに座って荷物を下ろす。

他の二人もそれぞれ別の場所に、何も見えない場所にすっと一歩を踏み出して出発の準備が整う。慣れているなあ。いつか私も慣れるのだろうか。


「では皆さん、また近くに会いましょう。」

そう言うと一番遠いハルが出発し、私達も続く。色々あったけど楽しい訪問だった。そして何より良い出会いに恵まれた日々だった。

ナミさんが許可してくれたらまた他の天界に行ってみたい。全然違う環境、文化に触れ合えるのは良い刺激になる。天界に来て元々持っていた常識は崩壊してそれで全てだと思っていたけど、まだまだ未知な世界がある事を思い知った数日間だった。


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