表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界での死に方  作者: 土成 のかげ
94/174

作戦

「まあ、来るのが少し早かったかしら。」

リノがドアを開けて入ってきてまた出て行こうとするので慌ててアンセから離れてリノを止める。


「アンセさん、具合はいかが。ごめんなさい火傷はほぼ治してありますが、完治させる時間がありませんでした。」

「ありがとうございます。大丈夫です。動けます。ん?咲、どうした?何か言いたそうだけど。」

はあ、こんなとき顔に出てしまう自分が悲しい。


「あの、体痛く無い?」

「まあ、違和感はまだあるけど大丈夫だ。」

「その、言いにくいのだけど、私と一緒に南にシャドー退治に来て欲しいの。体辛いと思うのだけど私一人では壊れてしまうって言うから。」

「壊れるって何が。」

「心が壊れるってクノーも樹もそう言うの。大丈夫だと思うのだけど。」

「二人が言うなら間違いないな。俺からしたら咲に南の状態を見せたくない。心配するくらいに酷いんだろ。クノーも間に合わなかったようだな。」

さっきまで寝ていたとは思えないくらい頭の回転が速い。


「で、戦況はどうなっているんだ?次の手は決まっているのか。」

「私と樹でシャドーを退治する。」

「それだけか?」

怒られそうで、小さく頷く。


「それしかないと危ないな。前の様に暴れられると手に負えない。しかも今回は2人とかじゃ無さそうだしな。犠牲を受け入れるなら一カ所に集めてみんな消え去るまで放置とか一番楽で安全なんじゃないか。」

消えるの前提なのは却下。


「じゃあ、トイレの深層土を食わせてどうにかなるのを待つ。」

人道的に却下。


「沢山食べさせてシャドーを吐き出させる。」

掃除が大変だから却下。


「最後の理由はそうなのか?何でも良いけどどうするんだよ。却下ばっかりで。」

分からないから二人で頑張るが策なんだよ。


「真面目に。正面から行って勝ち目はないと思うけどな。いくら樹と二人とはいえ、相手は数十人はいるだろ、体力が足りないと思う。奇策が要るな。」

「何とかクノーの水を取ってもらえたらいいよね。自己浄化をしてもらって治れば良し。ダメなら私達が頑張る。」

「クノーを含んだ水をシャドーを沢山受けた人の顔に投げつけて強制的に口に入れさせたらどうだ。」

「水じゃない人は溺死だよ。」

「数回に分けて死なない程度に何度も投げてシャドーが少しでも浄化されたら咲と樹の出番だ。水を投げるなら水担当の奴らに頼めば数も増える。」

いけるかな?今までの案の中では一番まともな気がするけどどうなんだろう。

迷っていると樹とリュックを背負ったトビーが入って来る。プーレを食べてすぐだからか樹の顔色が良くない。


「アンセ体は大丈夫ですか。」

「まあ、何とか。で、なんでこんな時に何で八百屋のおっさんがここにいるんですか。」

「あら、トビーは私の夫ですよ、言いませんでしたか。」

私の時と同じくアンセは驚いて言葉を失っている。びっくりするよね!


「何かいい案は浮かびましたか。」

樹の問いにアンセが対応できないので私が代わりに話す。


「今一つあるのはクノーを含んだ水を暴れている人達の顔に付けて飲んでもらってから私達が浄化すると言うやり方です。水の皆んなに助けてもらって落ち着くまで何度も投げてもらうのです。そうすると浄化の力が節約出来てより多くの人を助けられると思います。」

「一層のこと、必要量のクノーの水を棒状にして暴れている人たちの口に問答無用で差し込んだら良いのではないですか。棒が無くなった人から浄化すれば、何度も水を投げたりするより他の人の労力も節約できます。」

樹の提案はなかなかワイルドだ。ちらりとアンセを見るとアンセも目を見開いて聞いている。


「異論は無いけどどうやって口に差し込むんだ?」

確かにピンポイントで口を狙うのは難しい。少し考えてから提案する。水にとっては水の形を変えるのはスライムをこね回す様な感覚だ。


「大量な水を顔に投げてくっつけてから形を変えながら口に流し込むと良いかもしれないですね。手から離れると微調整するのが大変なので出来れば手元と繋げながらやれると精度が上がりそうです。」

「とりあえず咲やってみろよ。」

そう言われてコップの水をトビーに向けて投げて、口の辺りに集約しようとする。コップの水の量が思ったより少なくて糸の様な細い水が口に差し込まれる。


「咲、何で俺なんだよ、うっ。水が刺さって痛い。」

集中しすぎて細すぎると刺さるとは頭が回らなかった。慌てて謝ったがトビーの顔は不機嫌なままだ。


「これだけの微量でも操れるなら何とかなるか。」

「アンセ、みんなが皆んなこのレベルで操れるかは分かりません。でも出来る事は分かったのでやってみましょう。アンセ動けますか。」

トビーは当たり前だと出かける準備を始める。

視線を感じて恐る恐るトビーを見ると私を睨んでいる。提案したのは樹で、やってみろったら言ったのはアンセだ。それで私が睨まれるのは納得いかない。


4人で南に出発することになり歩いていると案の定トビーが絡んでくる。


「あの流れでは実験対象はアンセのはずだろうが。」

いつもならそうだけど今日は怪我してたし、それに樹にやったらトビーにもっと怒られたはずだ。だからトビー一択だったと思うのだけど。


「トビー、お水痛かったでしょう。でも、お陰で次に進めるわ。」

樹の一言でトビーは振り上げた拳を下ろす。アンセは少しぎごちない歩き方をしているのが気になるが、四人全員でトビーの風に乗って南に向かって飛び上がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ