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グナヤンムーの気合い

「ここはどんな時に使うのですか。一人だと暗くて少し怖い気もします。」

「悩んだ時や落ち着きたい時にこっそり来ていました。暗い水中に一人でいる事で気持ちが穏やかになるのです。そうすると自然と魚たちが寄ってきて触れ合う様になりました。今では友達に会う時間でもあります。」

「私と木々みたいな関係ですね。」

「言われてみればそうですね。そう思うと先日の咲さんの友達に相談すると言う言葉はすごくしっくりきます。木々に相談するのは咲さんにとってきっと日常の行為なのでしょうね。」

分かってもらえる人が増えて嬉しい。そして言葉から察するにここによくきているに違いない。話している間も色々な魚が通り過ぎていく。


「こんなに魚がいるのになんで不漁なのですか。」

「この辺の深海の魚はとても穏やかで落ち着いているでしょう。でも河口に近い魚達はとても荒れていて捕まえられないのです。それに捕まえても苦くて美味しくないのです。」

だから始めはかなり幅広く道を開けていて段々と狭くしていたのか。力がかかりすぎるのではなく魚からの攻撃を避ける意味があったのだと悟る。


「僕は今まで魚が美味しくなくなっただけなのだと思っていましたが、今は分かります。海には南天界の全ての終着点です。シャドーを濃く含む水が河口付近に溜まるのでその影響では無いかと思います。」

ああ、こんな所にもシャドーか。


「これからは少なくとも人為的なシャドーは無くなるので少しずつ良くなると思います。楽しみにしていて下さい。」

ああ、南はこれから変わるのだなぁと思う。グナヤンムーの目の色が生き生きしていて力強い。初めて会った時とはまるで違う。

グナヤンムーは話しながら水面に向かって行って大きな魚に触れて手を上げると魚が上へと上がって行く。


「僕がここで初めて魚達に見せてもらった最高の泳ぎをお願いしたので是非みなさんにも見ていただきたいです。」

急に辺りが真っ暗になりひやっとすると天井からたくさんの光が降りてくる。まるで流れ星の様だ。そしてやごて光が規則的な列を組んで揺れたり波を打ったり光のショーが繰り広げられる。最後に手を伸ばせば手に届く様な光が降り注ぎ思わず立ち上がって両手を伸ばす。光の粒が私達の周りでくるくると回って光の波となりどっと流れ込んでくる。光に飲み込まれると錯覚を覚えるほどの輝きに包まれて思わず目を閉じる。暫くしてそっと目を開くと光がさーっと散っていくところだった。今海の底にいるのだと言うことをすっかり忘れてしまうような不思議な美しい体験だった。みんな今見たの幻想的な景色の余韻に浸ってさっきまで光っていた方向をじっと見つめたままだ。

はっと我にかえると辺りはさっきの夜空の中に居る様な景色に戻っている。


「地上でも見たことのないとても神秘的な体験でした。」

「水の海も初めてですが、まるで光の海にいる様でした。この感動は言葉で言い表しようがありません。」

口々に光のショーを褒め称える。グナヤンムーは嬉しそうに魚達にお礼を伝えておきます、と言った。

私達は海の底でしばらく取り留めのない話に花を咲かせた。それから名残惜しい気持ちでゆっくりと浜辺へと帰る。私も水の端くれだからだろうか、ここに来たくなる気持ちがよく分かる。


浜辺に戻っても皆んな無言まま館まで歩く。ザクザクと言う砂の音だけが響く。もうお昼をだいぶ過ぎていますね、とグナヤンムーが言い自然とみんなでお昼に行くことになる。始めの頃とは違って段々と一緒のことが増えて仲間意識が強くなっている気がする。


グナヤンムーが連れて行ってくれたのは火鍋の店だった。

具材は私達の為に先に火が通ったものが出される。火鍋と名前の通り火が平たい鍋の中で燃えている。鍋と言うよりは焼肉か焚き火に近い感じがする。火に当てるとすぐに焦げそうなものだがぬるい火の海でしゃぶしゃぶの様に少し炙って食べる。火が怖くないアンセは次々と焼いては口に入れている。私は時折り燃え上がる火が怖くて炙るのを躊躇しているとハルが自分の焼いたものをお皿に入れてくれる。それを見たアンセも負けじとどんどんお皿にくれて食べるのが追いつかない。

それを周りが笑って見守っているので私も思わず笑顔になる。ここに連れてきたグナヤンムーが実は一番火が苦手な上猫舌で全然食べていないことに気付いて、何故このお店を選んだのか不思議に思っているとグナヤンムーはこの熱い鍋を気合いをいれるために食べると言う。そして明日は発表の日なのでみなさんにも後押しして欲しくてここを選びました、とはにかむ。この人はこう言う顔が一番似合う。


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