表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/208

深部の花の力

私はどこにきたの?


落ちた瞬間、湿った森の匂いに混じって甘い香りが立ち込める。

雨の日のような涼しさと湿度のある空間は、丸く広がっていて木の根に囲まれている。その根の隙間から明るい光がそこかしこから差し込んでいて幻想的だ。

真ん中にはキラリと輝く低木がひっそりと佇んでいた。

まるで半分空に浮いているような不思議な世界に私はその低木と二人きりだった。


周りを見ながらゆっくりと進む。根っこの隙間には透明な壁があってしっとりとしたジェルのような感触だ。


そのまま低木に向かって歩くと中心は湿地になっていた。

ぴちゃぴちゃと音を立てながら光る低木に近づく。


私の顔くらいの大きさがある鉄砲百合のような大きな花の蕾が沢山付いている。


どんな大輪の花が咲くのだろう。


キラキラしている葉っぱそのものが輝いていて、岩穴から来る隙間風に揺れてキラキラと金粉が舞い散る。


とても眩しくて美しい。


ここはなんのためにあるんだろう。


私はキラキラ光るこの低木に触りたかった。

声が出せないので触って良いのか聞けなくて迷っていると、ひときわ大きな蕾が首を垂れる。

触って良いよってことなのだろうと勝手に解釈して手を伸ばす。

サラサラした蕾の輝く粉が手に残り指先で馴染ませているとスーッと肌に消えていく。


粉の触れたところがほんのりと温かい。

蕾を撫でていると蕾が少しだけ開き始めると、キラキラ輝く液体が花から溢れてくる。


慌てて両手で受け止めると金粉と同じようにほんのりと温かみがある。

丁度両手いっぱいに溜まると蕾はゆっくりと元に戻っていく。

私はその液体を溢れないように頂くことにする。


一口飲むごとに体全てのひとつひとつの細胞が温まって行くのを感じる。そしてその温かさは体だけではなく心の奥底までも届き、芯から暖かくなってくる。

それが段々と熱いに変わって、体の中を火傷すると思った時には遅かった。

体の中が煮えたぎるほどに熱くてのたうち回って悲鳴を上げる。


「熱っつい…」

ああ、叫んでも私しかここには居ないのだ。


そうだ…岩から水が滲み出ていた。


這いつくばって岩に向かう。そんなに遠くないはずなのにいつまで経っても届かない。


服も泥でぐちゃぐちゃになり、体中が傷だらけになる。

痛いし、服が張りついて気持ち悪いけど、なによりお水が欲しい。


あと少しで届く、あと少し…


立ちあがろうと手をつくと地面に穴が空いて落ちていく。


また落ちるの?

どうしよう。


来る時と違って体がぐるぐる回って平衡感覚がなくなりどっちが上か分からなくなった。

段々と気持ち悪くなって吐くのを懸命に堪えているとどさっと落とされる。


吐かないで済んだのは良かったけど今度はどこだ?


見回すと薄暗くなりつつあるが、普通の木々に囲まれているのが分かった。


外に出たのかな、ふらふらと木々の導くままに歩くといつもの川の入り口に着く。


安心しているとバッグの中の風電話から声が弾けているのが聞こえ始めた。

アンセやレイの心配のメッセージだ。

今は北に居て大丈夫な旨を折り返すと、岩に寄りかかって少し休む。

思ったよりハードな散歩になってしまった。


少しこっくりしていると誰かに抱き抱えられた。

連絡を入れたからきっとアンセが来てくれたのだ。


疲れた…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ