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天界での死に方  作者: 土成 のかげ
29/164

正体

「咲、起きてるか。」

青の早い時間にアンセが来る。本当に心配性だ。大丈夫だよ、昼まで寝ちゃったけどね。


「あれから丸2日寝てるから本当に心配したよ。」

え?ちょっと寝過ぎたんではなくて?それはアンセではなくても心配にもなる。大丈夫だよ、と再び答える。じゃあ飯食おうか、と当たり前の様に2人でアンセの家に向かう。

ご飯中にジューススタンドやってみることにした旨を話す。ふーん、やってみればと興味は無さそうだ。でも今はそれくらいで丁度いい、やたらと心配されても、変に応援されてもなんだかくすぐったい。相変わらず美味しいご飯を食べてお酒を飲んで、お開きにする。


翌朝は早速材料集めだ。家を出る時ちょうどアンセの出勤時間と重なってスクエアまで一緒に行く。

すぐにそれぞれの目的地に別れて私は買い物をする。シトラール以外もリラクフラグラン、スポッイルパンパなど混ぜられそうなものはとりあえず買っておく。それからグラスをとりあえず6個、緑の葉がデザインされたものを買う。これなら色合いが華やかになりそうだ。


グラスに果物と荷物が重たくなったのでひとまず家に帰る。昨日のクノーのジャムを水で割って砂糖、シトラールをひと絞りする。わー、すごい爽やかになった。そういえばクノーを食べるとどんな気持ちになるのだろう。考えてみるシトラールが強いのかスッキリと言うか、いな気持ちが晴れて透明になる感じ。売り出し名は何がいいかな。スッキリ、まったりとは差別化しないとね。晴れやか?癒し?晴れやかの方がしっくりくるけどスッキリに似ている気がする。まずは癒しでどうかな。飲んだ人に聞いてみてからもう一度考えようかな。


エネールは活気?回復とか。栄養剤みたいかな。回復した後だから軽やかとか?そういえばエネール何も足していなくてそのままの味で、このパチパチ感は特徴的だから分かる人は分かるよね、どうしようかな。リラクとか入れた方がいいかな。


エネール 小さい シュワシュワ

大きくなる パチパチ


つまりスーパーにあるサイズはパチパチしないからそのままでも分からないって事?じゃあこのままで行こう。美味しいもんね。

私、今日は結構良い仕事したんじゃない?ジューススタンドはなんとかなりそうだ。 


一区切りついたのでふと外を見る、カーテンの隙間から誰かこっちを見ている、気がする。え、家まで割れてるの?怖い。どうする?犯人突き止める?逃げる?

大体、ここに来てまだ数日であとを付けられる理由が分からない。ストーキングされるような男女の出会いはなかったし、恨まれるような悪いことは何もしてない、と思う。

待って一つだけ心当たりが…違って欲しいけど。


こっそり窓を覗こうとカーテンを少し開くと正面にカレンが鬼立ちしていた。血走った大きな眼がこちらをじっとり、ねっとりと向けられる。その視線に込められた嫉妬の念が私の全身に向けられて絡みついてくる。何か武器を持っているわけでも、暴力を振るわれたわけでもない。無言の怨念とも言うべき力が全身から溢れていてそれが全て私に向かってくる恐怖に、声も出ず尻餅をついた。

ドアから入ってくるかもしれない。でも腰が抜けて歩けない。手が震えてカーテンから手が離れる。見えなくなっても何されるのか怖くて動けない。

怖くて再びカーテンを開けることも出来ず、動けないのでただただドアの方を凝視する。入ってきたらどうしよう、何されるのかな。ドアには鍵が必要だと再確認する。


どれくらい経ったのか、しばらくしても何も起こらなかった。腰が抜けたまま四つ這いでなんとか椅子まで辿り着く。机に残っているクノーのジュースを飲む。それからエネールのジュースも。心と体が彼らの力に支えられて解されていく。ようやく息が出来た気がした。


いくらなんでも家には来ないのかな。明日からの外出が怖い。どこまでついて来るのだろう。よく考えたら、カレンに初めて会った日、アンセは南の現場に行ったと言っていた気がする。あの時は気にならなかったけど、もともと私を付けていたのではなく、アンセをストーキングしていたのではないか。そう思うと合点がいく。

ゆっくりと記憶を紐解いていくと私が見られている気がし始めたのはレストランからだ。知らなかったとは言え、アンセの誕生日に街で人気のレストランに一緒に行って誤解されたに違いない。そして今日に至るのではないだろうか。アンセはストーキングに全く気づいていないのか、知ってて無視しているのか。そういえば視線を感じると話した時、ぶつぶつ言っていたし、何か知っていそうだったのを思い出す。

この案件をアンセがすでに知っていてこの状況だとすると話しても変わらないか、酷くなりそうだ。

経験者のレイさんに相談しよう。彼女も大変だったって言っていた。対処法教えてもらおう。申し訳ないが忙しいかなとか気を遣っていられない。緊急事態だ。



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