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初デート

「今日は帰って休もう。」

アンセは私を無理やり樹から離して帰宅を促す。私もそれに抵抗することなく帰途に着く。

アンセが美味しいご飯を振る舞ってくれて食べ終わると家まで送ってくれる。

また明日、そう言うと私の頬を撫でると帰って行く。前と同じなのに気持ちが通じ合ってていると思うだけでくすぐったい気持ちになる。


翌日は初デートだ。

何着る?とは言っても一年も寝込んだ翌日のデートで何にも特別な物がない。一年おきに寒い年と暖かい年が来るので今は寒い年の年末で寒さがまだ残っている。何を着よう。上着が要る。一人ファッションショーをしているとアンセがドアをノックするのでとりあえず今着ている服のまま迎える。まだ服が決まらないと言うとどうせアンセの持って来た上着を羽織って見えなくなるから今着てるそれでいいんじゃないかとこっちをあまり見ないで適当なことを言う。結局その後二回着替えて最初の服を着ていくことにする。


「着る服がないなら今日は買い物に行くか。長袖や上着もあった方がいい。」

それはそうかもしれない。1番お店があるのは南だけどまだ気持ちが落ち着かないのでスクエアや西に出かけることにした。出発が遅かったので着いたら早めのお昼をいつも通り屋台で買ってベンチで食べる。

二人で並んで話しながら歩くだけで特別に感じるのは私だけなのか、アンセはいつもと変わらない。なんだ、結婚しようとか言っていた癖に、とモヤモヤする。


「なんだ、何が不満なの。」

「別に。いつも通りだなって思っただけ。」

「俺が?普通?」

隣に並んで歩いていたのでアンセの顔を見ていなかったが今自分が違っていたことに気がついた。昨日より顔が緩んでいて、正直格好悪い。今朝からこんな顔してたのか。


「…何その顔…嫌。」

「酷いなあ。傷つくだろう。自分でも情けない顔していると思うが顔の筋肉を自分で上手くコントロール出来ない。」

もうっと私が緩んだ頬や口を元に戻そうと手で上げているとアンセが私の両手を止める。


「事態が酷くなりそうだから放っておいてくれ。そのうち直るさ。」

そのまま私を引き寄せる。そのまま見つめ合っていると背中から咳払いが聞こえて振り返るとトビーが居た。


「街中で仲良くしているところ悪いんだけど時間いいか。もうナミから話があっただろう。その事で話したい。」

「おっさん、見ての通り今日は初めてのデートなんでまた今度でいいかな。」

「お、煮え切らない彼氏は漸く腹括ったのか。」

「俺はとっくに腹括ってますよ。」

そう言ってトビーにしっしっと手で払おうとする。でもトビーも樹のためには譲らない。すごいなぁ。


「明日、樹と話す約束したのでその時でも良いですか。」

「出来れば先に話しておきたかったがずっとこの日を待っていたお嬢ちゃんに頼まれたんじゃ仕方ない。初デート楽しみな。」

トビーが引き下がるなんてどうしたんだ。私トビーに恩を売るような事何かしたっけ、記憶がない。引き下がってくれるのはありがたいので何も言わずにその場を終わらせるとトビーと話した事で冷静になったアンセも落ち着いたようだ。ほっとして本題の買い物に入る。普段着と少しお洒落な長袖服と、ボトム、羽織物を数着買う。こんなに買うのはここに来て初めてだ。沢山買い物するとストレス発散になって気分が上がってくる。次は靴でも買おうかな。


「漸くいつもの笑顔になったな。」

そうかな、目が覚めてから笑った事なかったかな。


「どこかずっと不安そうだったよ。」

自分ではわからなかった。アンセは私と違って良く相手のことを見ている。私ももう少し気を配らなくてはと思う。


「そう言えば夜は何食べようか。」

「実はクノーリアン予約取れたんだ。庭に席を作れるからそこで良ければ今回の功労者を特別招待だってよ。」

「わー!嬉しい!アンセ、ありがとう!」

「ここに来てから誰かとお洒落なご飯はした事ないからクノーリアンか、ローニャの店しか知らなくて渡りに船だった。」

70年以上天界に居るのにデートをした事がないのか。ちょっとご飯行くくらいあるだろうにまさかそんなにモテないとは可哀想に。顔もいいし本当は優しいのにぶっきらぼうなところがあるから伝わりにくいのかな。


「まあ、色々あったからな。誰かと食事を楽しむとかそんな気持ちにはならなかったよ。咲に会って昔の自分を受け入れる覚悟が出来て漸く、だな。」

モテなかったのではなくて、禁忌を犯したと気にして自ら他の人との接触を避けてきたからか。危ない、危ない。


「今何を思ったか当ててやろうか。」

「遠慮しておく。」

遠慮したのに頭をぐりぐりされる。絶対おかしい!自分の照れ隠しにそんな事するのは間違っている。

恋人にやることとは思えない仕打ちにむくれていると今度は急に私を抱擁して優しく頭を撫で始める。

ご飯まで二人でぶらぶらとお店を見て回ったりゆっくりお茶をしたりしているともう御飯時だ。服を買った店で着替えさせてもらってクノーリアンに行くとこの前と同じ支配人が出迎えてくれる。



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