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ある記憶

久しぶりですが短いです。

 ふと思い出したことがあった。学校の帰りに、一緒に帰る人がいなくて、ある友達を誘ったら、別の約束があるからと断られた。たぶん高校三年生のころだ。私は特に落胆することなく、既に閉まっていた門の通用口を通って外に出た。そうすると、後ろからその友達が走ってきて、一緒に帰ってくれると言う。どうしてって聞いたら、後姿が裏ぶれて見えたからだと。そのあとのことは記憶にない。どんなことを話したとか。駅まで一緒に行ったのか、電車も一緒だったのか。どこに住んでいる人だったか。

 そもそも何で友達になったのか。時期は恐らく高一のころだったと思うけれど、あの人は何部だったのだろうか。私は主にギター部の部員たちとつるんでいた。あとは生物研究部。友達の友達という感じで。そこで思い出した。教室棟の端の方にあった生物研究室のさらに廊下の奥に、暗室があった。写真部だ。

 そう言えばあの子が撮った写真を持っていたではないか。今でもアルバムを開いたら見られるはず。開かないけど。押し入れの奥だし。モノクロの写真。あの子に焼き増ししてもらったやつ。暗室には一度だけ入ったことがあったと思う。狭くて赤い部屋。吊るされた濡れた写真。薬品の匂い。

 写真は卒業旅行と称して行った遊園地で撮ったものだった。その遊園地は私が子供のころから良く行ったところだった。電車で二駅のところだったが、大きくなってからは自転車で行った。友人たちとは自転車でターミナル駅の方まで行ったこともあったけれど、このときは電車で行ったのではないか。裏手の金網の破れたところから入ったのか、ちゃんと入園料を払って入ったのか。

 有料の遊具には乗らなかったと思う。回転ブランコとか、コーヒーカップとか、観覧車とかもあったはずだけれど、どれにも載らずに、日本一長いと言われていた滑り台を降りて、下の方の砂場とか鉄棒とかがある普通の公園のようなところで遊んだ。遊んだと言ってもお喋りをして、誰かの作ってきた弁当を食べて。あの子は写真を撮っていた。名前は憶えている。でもどこに進学したのかさえ覚えていない。たぶん卒業してから一度も会っていない。

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