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茹でピーナツ

 近所のスーパーに行ったら、赤い網に入れたピーナツが売っていた。昔よく駅で売っていた冷凍蜜柑を入れていたあの赤い網に入れられているのは、生のピーナツだった。私は少しだけ迷った。最近のけちけち生活から言うと、若干高いと感じたからだ。そうは言っても三百円程度。私は思い切って買うことにした。

 これをどうやって食べるのかというと、茹でるのだ。売り場の説明書きにも、三十分くらい茹でて食べてくださいと書いてあった。

 私は茹でピーナツが大好きだ。よく売っている炒ったピーナツはもう歯が悪くて食べられないというのもある。茹でたものならばまだ食べられるし、そもそも茹でたものの方が味が好きだ。

 最初に食べたのはいつどこでだっただろうか。

 静岡の有名なおでん屋さんは、突き出しとして何種類もの小皿をお盆に載せて持って来て、選ばせる。欲しいものが無かったら、どれも取らないという選択もできるのだが、その中に茹でピーナツもあった。殻のまま茹でたものだった。あそこで食べたのが最初だっただろうか。

 静岡でライヴがあったとき、街中の本店に行ったときだったかもしれない。静岡のおでんは、駄菓子屋で売っているというのは、ちびまる子ちゃんにも出て来る有名な話だ。私の親の帰省先が浜松の近くだったので、私も駄菓子屋でおでんを買って食べたことがある。静岡のおでんで特徴的なのは、何と言っても黒はんぺんであり、私のきょうだいが好んで食べていた。私はじゃが芋が好きだったけど。

 その町は私の原点の一つであると言ってもいいところだ。大学生のころ、失恋したときに、その町に行って、冬の砂浜に行ったこともある。そこは夏になると海水浴場となり、大勢の客が押し寄せる。私はそこで溺れかけたことがある。親に、波が来たら下手に逃げるよりも向かって行った方がいいと言われたその通りにしたら吞まれてしまったのだ。いや、態とそうしたのだったように思う。

 何でも私は態とそうすることが多かった。だいぶ小さいころに、靴下は左右反対でもいいんだよと言われて、上下反対に履いて見せたことがあったっけ。こういうのを天邪鬼というんだろうか。人から言われたことを素直にするのが嫌で、何ごとも自分の判断で行いたいと言うか。

 でも、何ごとか始めるときは、きちんと入門書を読む。おそらく、書物というものを信じているんだろう。人の言うことは聞かないけれど、本に書いてあることはその通りにやってみる。ブッキッシュな人間なのだ。学生のころまでは、本から仕入れた知識がほとんどだったので、読み方のイントネーションが微妙に違っていたようだ。アイデンティティということばを、うしろのティティというところを両方強く読んでいたら笑われたことがあったっけ。だって、おんなじ仮名遣いじゃないか。私はこの単語を、日本語の文章でカタカナで読んでいたのでそうなったわけだ。英語の方は当時は知らなかった。自己同一性というのが、そのとき知っていた日本語の意味だったけれど、最近は違う訳をするようだ。高校の倫理や公共の教科書に載っているようだ。私の高校生のころは、倫理社会という科目だった。

 倫理社会の教師は、青年心理とかそういう単元はすっ飛ばして、思想史のところだけ念入りに授業してくれた。私はそれが好きで、ノートを克明に取り、そのノートは今も手元に残っている。入試でも、倫理社会を選択して、私立大学は選択科目にそれがあるところだけを受けた。私にとってその科目は国語の読解問題と同様だった。論述する問題が多かったので、知識よりもその方が役に立つのだった。

 私は国語のテスト勉強を殆どしたことがなかった。だから、古典の文法や漢文の知識は皆無に近かったけれど、それでも読解力だけで問題は解けるのだった。一回だけ、中学のとき国語のテストで百点を取り、前の学年で教えてくれた先生と階段で擦れ違ったとき、声を掛けられたことがあった。最近がんばってるねって。別に特にがんばったわけではなかったけれど、非常に嬉しかったのを憶えている。

 中学や高校の定期テストで百点を取ったのはそのときだけだった。理科のテストで九十八点というのはあった。あのときは、答えの漢字を書き間違えたのだった。質量と書くべきところを、質料と書いてしまったのだ。単に書き間違えたのではなく、質料という単語も知っていて、そちらをつい書いてしまったのだ。倫理でも習う単語だけれど、まだ中学生だったので、学校で習ったわけではなく、本を読んで知っていたのだ。

 だいぶ話が逸れたね。話を戻すと、居酒屋などでメニューに茹でピーナツがあるとつい頼んでしまう。先日も旅先で寄った居酒屋であったので頼んでしまったことは前にここで書いたように思う。茹でピーナツの堅さは店によって違う。なるべく柔らかい方が私はいいのだけれど、若干堅めでも美味しいのは美味しいから頼む。

 コンヴィニで売っていた茹でピーナツは、殻がついてなくて薄皮の状態で、醤油味だった。ちょっと前までは、そのチェーン店ならどこでも売っていたのでしょっちゅう買っていたのだけれど、最近は姿がない。前にここでも書いた、少し歩いたところのコンヴィニでは売っていたので、例の商品券で買ったっけ。

 家で茹でるときは、柔らかめに茹でたい。昼間いったん茹でて、さめてから冷蔵庫に入れておいた。こうしておくと塩味がよく滲みて美味しい。夜仕事から帰ってきて味見したら、まだ堅かったので、他のものを食べながらさらに茹でた。

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