金縛りと、予備校の夢
朝、久しぶりに金縛り状態になった。金縛りとは、霊現象でも何でもなくて、単に頭は目覚めているのに体がまだ眠っている状態だということは、実感としてよくわかる。体が動かないと言っても、どうしても動かないというわけでなく、意志の力で動かそうと思えば動かせるのだけれど、動かない状況に甘んじているという感じだし。恐らく体が疲れていて、まだ起きたくないのだけれど、頭の方は何らかの理由で起きてしまっているということだ。
たとえば夢を見たとか。
高校生になって、予備校の勉強合宿のようなところに来ている夢だった。二日目の夜で、前の晩は夜の授業には出なかったのだけれど、今夜はどうしようかと迷っていた。夜の授業は自由参加だったから、前の晩は出なかったのだ。迷った挙句、出ることにしたんだけれど、既に教室は生徒でいっぱいで後ろの方の席しかあいていなかった。そして、その最後尾の席で隣の席の生徒とひと悶着あったけれど、それはすぐに仲直りした。きみは参加する前のテストで九番だったのだから、もっと優秀なはずだとか言われたのだった。それはまあいいんだけれど、容姿の話に及んだので、かっとなったのだった。
先生からアドヴァイスを受けたり、間違えて講師用のプリントを持っていたのを、取り換えられたりしているうちに、席が前の方になっていた。先生が興味深そうな話をしているのだが、よく聞き取れない。生徒たちが私語していて、ざわざわしていた。私はそれが理由だと思って、見回しているうちに腹が立って来て、どなってしまう。うるさいな。静かにしろ。先生の声が聞こえないじゃないか。こんな奴らが大学に行くなんて信じられないと言って泣き崩れた。
そこで目が覚めたら金縛りだった。
実は予備校の夢の前に、おやと喧嘩する夢を見ていて、そのとき目覚めずに済んだのは、この予備校の夢に移行したからだろう。
私は高校のときそれほど勉強が好きではなかったし予備校にも行ったこともない。私が勉強をしなくなったのは、高一のときの数学教師の一言だったということは前にも書いたよね。仮面の忍者の白影に似ているその教師が、私のノートを見て字が汚いねと言ったのだ。それは春休みのあいだにだいぶ先まで予習してあったものだ。あの言葉さえなかったら、私はあのまま予習を続け、数学ももっとできるようになったはずだ。そうしたら恐らく理系の大学に行ったのではないだろうか。私の高校時代の親友は、コツコツと勉強をし、一年浪人してから旧帝大の工学部に進み、大手自動車会社に勤めている。
私は大学でもろくに勉強しなかった。これも前に書いたような気がするね。英文科だったにもかかわらず、どの講義にもあまり興味が持てなかった。発音に関する授業だけは少し興味が持てたけれど、それとて初めのうちだけだった。だから文法や読解の力がつくはずがなく、教員採用試験でも全くできなかった。ゴールデンウィーク明けには出席しなくなり、テスト前だけ出席してテスト範囲を聞き、一夜漬けというのも烏滸がましい付け焼刃の勉強をしてテストを受けてなんとか単位を取っていた。だからその成績は殆ど、可であって、不可ではないというだけだった。たぶん就職試験でもそのことが不利に働いたんだろう。成績がいいから優秀だというわけではなくて、企業は勤勉な者を欲しているからだ。
私は勤勉ではない。今の苦境の理由の幾何かはそこにもあるだろう。まあ理由の大半は政府の政策にあるわけだけれど。そういえば、中元でもらったコーヒーの粉が尽きた。前に買った豆がまだ少し残っているから、次はそれを飲むことになるけれど、それがなくなったらどうしよう。
けちけち生活をしたので、財布の中に十月分の食費くらいは残っていた。九月の末に家計簿をつけたのだが、四日分の支出が不明であった。私はレシートを残しておいて、あとからそれを見て付けているから、レシートをどこかにやってしまったのかと思って探したけれど見つからなかった。それなら考えられるのは保存ボタンを押さないまま、表計算ソフトを終了してしまったということだ。
認知の力が衰えているのかも知れない。先日も、顧客とのセッションの時間を間違えていて三十分多くやってしまった。自分の気づかないところで何かやっているかもしれない。一人暮らしだし、仕事も一人でやっているし、本当に惚けてしまったらどうなるんだろう。
前に誰かに、金縛りの原因は心臓にあると言われたことがあった。そのころは、全く元気だったので、何を言ってんだという感じだった。しかし今本当に心臓は弱っているだろう。たまに痛いときがある。毎日アルコール摂取しているから、肝臓や腎臓も弱っているだろう。胃や腸も悪くなっているかもしれない。
破産する前に血を吐いて死んだ方がいいのかも知れない。
それとも、惚けて、周りのことがわからなくなってしまった方が幸せなのかもしれない。
九番というのは、私淑しているバンドのファンクラブの会員番号だ。それだけが愉しみなのかもね。九月もオンラインでライヴを堪能した。ゲストで若いサックス奏者が出ていて、この人の演奏は好きだし、バンドの音楽もより重層的になる。
中二のときにエフエムで聴いた、フリージャズトリオのサックス以来の衝撃かもしれない。その奏者も今も現役で、ライヴを聴くこともある。今回出ていた若い奏者のライヴも二回ほど行った。一回は京都の本当に小さなジャズ喫茶でソロだった。コンパクトディスクにサインをしてもらったっけ。桜の満開の夜だった。もう一回は、横浜の老舗でドラムスとのヂュオだった。また、曜日が合えば行きたいのだけれど、今は資金がない。
十月は何とかやっていけそうだけれど、十月末の支払いには、地方税があってかなり高額になる。そこはまあ払えそうなのだけれど、十一月の食費がないかもしれない。そうなればとうとうハンガーストライキだな。




