還暦
このところ洗濯ものの乾きが悪い。気温が下がってきたのに湿度も高いからだろう。洗濯ものが溜まってくるから、洗濯したいのだけれど干す場所がないのでできなかったりする。乾燥機が欲しいけれど、ぼろマンションなので置く場所がない。
年金を受給するために、手続きをしたいと思ってだいぶ前に電話したのは前に書いたっけ。誕生日の前日から手続きができ、その一か月前に予約ができると言われたので、その通りに予約して、朝の九時から行くことにした。年金事務所に着いたのが八時台だったけれど、事務所自体は開いていたので受け付けだけしてロビーで待っていた。九時の少し前に呼び出されて、ブースで相談することになった。相手は社会労務士の名札をしているかなり老齢の人だった。私よりだいぶ上の気がする。耳が少し遠いらしくて、飛沫防止の透明衝立の脇から耳を出したりする。
いまや六十五歳が標準の受け取り年齢になってしまったので、六十で受け取るのは前倒しと言うことになるらしい。五年分減額されるのだ。これは詐欺である。私が大学を出て就職して厚生年金に加入したときは、六十歳からもらえるという約束だったのだから。そして、五十五歳から前倒しでもらえるということだったのだから。私は当時から五十五歳で受給するつもりでいた。それに当時はリタイアしたら年金だけで生活できるはずだった。つまり一千万円規模の損失なわけである。うーん。今気付いたけれど、これは告訴してもいいレヴェルの話だな。ちょっとどうしたら訴えられるか考えたほうがよさそうだな。
まあ、それでも貰えるだけマシではある。何だかまだ受給年齢を引き上げる予定らしいし、払い込みの年齢も引き上げる予定らしい。私は今月から払わなくてよくなったので、少なくともこれに関してだけは逃げ切ったことになる。もろもろの説明を受けたが、最も関心があるのはいくら貰えるのかと言うことだった。あまりにも安かったらどうしようかと思っていたが、まだ許容範囲の金額だった。それでも、それだけで生活できるような金額ではない。売上が少し減ってもなんとか補填できそうだなと思える程度だった。つまり、私はこの自営業を死ぬまで続けなければならない。
受給できるのは来月分からで、実際に振り込まれるのはその三か月後と言うことで、それはもう来年と言うことだ。それから、八十歳くらいで、六十五歳から受給したときよりも損になるということだった。それ自体は悪くない。八十歳なら大体死ぬだろう。でも、元の金額が低いからね。あとは、とっとと手続きをして、終ったのが九時半くらいだった。
予定表を見たら次の予定は十時半からだったので、一時間も暇かと思ったけれど、とりあえず電話をしてみることに。そうしたら、既にやっているということだったので行くことにした。免許返納だ。私は今年が免許書きかえの年だと思い込んでいたが、よく見たら来年だった。だったら、それまでに返納すればいいかとも思ったけれど、年金事務所も免許センターも同じ県庁所在地にあって、うちからは少し遠いのでついでにやってしまおうと思ったのだ。電車で十分くらいの距離。うちまでだったら三十分以上かかる。
まず免許証を渡して、書類作成のために待たされる。次に書類を書いて渡したら、今度は手数料の証書を買って来いと言われ、フロアの端から端まで歩かされる。お金を渡したら、また待たされて、さらに写真を撮ってくるようにと言われ、反対側の端まで行ってまた待たされる。そのあと写真を撮ったら、作成にまた待たされるが、これはそんなに時間が掛からなかった。全部で一時間弱か。
帰りの特急電車まで二十分くらいだったが、停車駅まで行って改札を出て惣菜屋で買ったものを、特急の中で食べた。ノンアルコールビールとともに。夕方から仕事なので吞むわけにはいかなかった。ともあれ、これが私の還暦である。誰も祝ってくれなかった。