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からすとなつやすみ

 からすはなぜ啼くのだろう。

 今年は何となくからすが少ないなあと思っていたんだけど、さにあらず。梅雨明けくらいから、夜明け時分に、たくさんのからすが啼くようになった。いや、単に気づいてなかっただけかもしれない。

 クーラーをかけないで、サッシを開けっぱなしにして寝るようになったからよく聞こえるようになっただけかもしれない。

 縄張りを主張しているのだと誰かが言った。だったら私もと、ベランダから外に向かって啼いてみた。

 よく聞こえるのは、カアー、カアー、カアーと、伸びのある声で三回から四回鳴く声だ。ネットで調べると、四回以上は警戒しているのだとか書いてあるけれど、そんな感じはしない。

 カアー、カアー、カアー、カアーと四回外に向かって啼いてみた。これでここは私の縄張りと認めてもらえるだろうか。

 ここは集合住宅の三階なので、からすの姿がよく見える。電線に何十というからすが並んでいる。そこから旋回して、家の屋根に飛び移ったりする。しかし、この建物に来たことはない。単に止まりにくいだけなのか。それとも鳴き声作戦が功を奏しているのか。

 十年くらい前、からすがゴミ置き場を荒らすなら、その辺にいるからすに挨拶をするといいと聞いて、やってみた。確かに、このゴミ置き場に来るからすはいなくなった。これも縄張りの関係だろうか。

 朝となり、徐々に日が高くなってくると、からすたちは姿を消す。平地に餌を漁りに行ったのだろうか。それとも森に帰ったのだろうか。

 前日買った食料がまだあったので、買い物には出かけないことにした。昼近くなってから少し後悔した。この日はエンジェルズの試合がなかったので、涼しいうちに行けばよかったのだ。

 学校は夏休みに入っている。朝の涼しいうちに勉強しなさい。小学生のころ、よく言われた。クーラーもあまり普及していなかった時代。私はその言いつけ通りに朝勉強していたのだろうか。憶えていない。ちゃんと提出したいたかどうかも憶えていないけれど、小学校のころの宿題は、簡単なワークと絵日記くらいだったから、学校が始まってからまとめてやったのかも知れない。絵日記も、毎日ではなく、何日分か書けばよかったから、思い出して書けばよかった。夏は毎年、親の田舎の親戚のうちに行っていたから、そのことを書けばよかった。

 あれ。小六の夏には既に本を何冊か持って行っていたから、文庫本との出会いはそれより前だったことになるなあ。一学期の間だったのだろう。

 うちにクーラーがついたのは中学生くらいのときだったろうか。中学生のときは間違いなく夏休みの宿題をやらなかった。やらなくても怒られるだけだと認識していた。それも授業が始まってしばらくすると、言われなくなるし。

 それどころか普段の宿題すらやらなかった。うちでは専ら本を読んでいた。

 国語の宿題なんてあったんだろうか。音読くらいはあったのかも知れないが、国語の教科書なんて普段読んでいる本から比べたら簡単ですらすら読めたしテストの点数もよかった。数学もワークなんかの宿題はなかったんでは。教科書の問題を解くのが宿題だったんだろうけれど、そんなものは授業中に全部できた。

 英語のワークはあったけれど、これは殆どやらなかったとはっきり憶えている。何度も怒られたけれど、中三の夏休みまで手を付けなかった。おかげで成績は今一つだった。十段階で六くらいだったかな。

 中三の夏休みの最初の日、なにげなく中一のころの英語ワークを取り出して、やり始めた。たぶんビー動詞とかその辺りからやっていなかったのをやってみたのだった。二日くらいで、中三の一学期のところまですることができた。あとはやらなかったんではないかな。それでも二学期の成績はぐんと上がって八か九になったと思う。

 塾の夏期講習も何日か行ったけれど、これは詰まらなかった。問題は易しかったし、狭い教室に何十人も詰め込まれて授業を聞くだけだったし。冬休みに電車で遠くまで行った塾はけっこうおもしろかったので、三学期も続けて行った。日曜日の午後、赤い外套を着て、地下鉄に載って。

 冬に受けた模試の結果をもとに面談があったけれど、学区のトップ校を言うと、それなら大丈夫でしょう。もちろん、それより難しい学校はいくつもあったのだけれど、そういうことは全く考えていなかった。学区のトップ校が最も通いやすかったからだ。

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