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日本の新しいミステリ作家たち

 日本のミステリは、角川映画がきっかけで読んだ横溝正史や森村誠一がそれほど面白くなかったので殆ど読んでいなかった。都筑道夫だけは古書で探すほどで面白く読んでいたのだけれど、一択という感じだった。京極夏彦が売れ始めたときは夢中で読んだけれど、シリーズの途中で飽きてしまいその後読んでいない。

 米澤穂信の古典部シリーズを読んだのはアニメ化がきっかけだったのだろうか。でも、アニメより先に小説の方を読んだ記憶がある。小説の方も何度も読み返したし、アニメの方も何度も見直した。アニメでは一瞬だけ映る名前が伏線だったりしたが、小説ならばじっくりと読める。そのころはまだハードディスクの録画機は持っておらずヴイエイチエスだったのにもかかわらず一時停止を酷使して細かいところまでチェックしていたな。

 日常の謎、というジャンルになるらしいが、それよりも、青春小説として感銘を受けた。米澤穂信を読むことで、他の新しい作家たちとも出会えるようになったように思う。代表作はやはり古典部シリーズということになるのだろうけれど、まだシリーズが完結していないし。それに、私が最も気に入っているのは、プルーフシリーズの原点ともなった作品だ。

 さよなら妖精

 青春の輝きと、成長の苦さを合わせ持つこの小説を、最初は図書館で借りて読んだのだけれど、再刊されたハードカヴァーで買い直し、そのあと何度も読んでいる。国際情勢という日常とはかけ離れたモティーフも印象的だ。

 最近の作家たちでは、辻村深月、伊坂幸太郎、詠坂雄二、城平京、青崎有吾といった面々が面白い。伊坂幸太郎は、村上春樹に文体が似ているといわれているが、私はそうは思わない。むしろテーマ性がはっきりしていて、村上春樹より文学としての質は上だと思っている。最近はその辺りが薄れてきて犯罪小説ばかり書いているような気がするので離れてしまった。死神シリーズが最も気に入っているが、ベストに推すほどではないか。辻村深月は、クリエイターを主人公にいしたサーガとも呼べる作品群で魅了されたが、突き抜けた長篇がある。

 かがみの孤城

 これは大傑作であり、若い人たちに必読だと考えている。この作家がずっとテーマにしてきた不登校などへの根源的な問いかけを集大成したものだろう。アニメ版も観たけれど、台無しだった。

 詠坂雄二や城平京は特殊設定ミステリとして本当に面白いが、テーマ性はやや弱い気がする。青崎有吾も、ミステリとして本当に面白いが、人物がやや平板だと最初は思っていたが、最近ではそうでもない。アニメ化やドラマ化もされていて、どれも面白い。最新作の、特殊ゲームものは、何度も読み返す価値があるし、続篇も期待している。だいぶ先になるらしいので、それまで生きているかどうか。それをベストに挙げてもいいのだけれど、敢えてこの短篇集をベストに推す。

 十一文字の檻

 表題作は、いわば暗号解読ものだけれど、謎解きが人間性というものにこころが刺さるようになっている。尼崎脱線事故をモティーフにした作品も忘れ難い。

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