オールタイムベストその3
私が最も影響を受けた著者の一人が、岸田秀という人である。
高校生や大学生のころ、日本の現代思想が流行って関連の雑誌が出たりテレヴィに出たりもしていて、その中の一人の精神分析学者であるが、私はブームより前からその本を読んでいたと思う。どういう経緯で読んだのか覚えていないが、筒井さんあたりが書評で紹介していたのかも知れないし、書店で見て手に取ったのかも知れない。大阪にかつてあった文豪の名を襲った大規模書店の上の方の階に、心理学関係の棚があって、その中にあったのかも知れない。レインなんかもそこで買って読んだように思う。高校生くらいのときである。戸川純の歌の題名も、おそらくレインの方が先で、ああ、これはレインだなと思ったはずだ。
岸田秀の思想に、私は思春期を助けられた。私は何のために生きていて、人生にどんな意味があるのか悩んでいたし、死にたい気分もときおりあったりしたのを、その著作を読んで考えることで乗り切ることができたのだった。結構意味を取るだけで難解で何度も読み返して理解に努めたっけ。人間の本能は壊れていて、その代わりに自我という幻想を使用して生きているのだという思想で、唯幻論と言われている。
私はこの人が教授をしている大学を推薦入試で受けて落ち、一般入試は合格したのだけれど、結局ほかの大学に行った。その大学に、一度だけ講演に来てくれたので、そのときに直接話を聞くことができたのだが、その内容は雑誌に連載していた次の月のものと全く同じだった。それでも、ものすごく興味深かったし、ノートまで取って聴いたものだった。ほんとならそのときの連載をベストに上げたらいいように思うのだけれど、いま手元にないし題名も忘れてしまった。それに、何冊もその著者を読んできたけれど、結局言いたいことは同じで、すべてその変奏曲なのだったから、最初の著書をベストに挙げることにする。
ものぐさ精神分析
これは今も文庫本で流通しているように思う。
紙数があるので、マンガについて書くことにする。マンガのことは前にも書いたことがあるので、細かいことは書かない。
私が小学生のころから読んでいて、今も読んでいるマンガ家は、坂田靖子だけだ。先日隣の県のデパートの中にある書店で買ったのもその最新作だった。英国紳士の社会を描いたものと、古今東西の化け物が出て来るお話が、その二本の柱であるが、さて、どちらから選ぼうか。お化けの話も独特だけれど、英国紳士の話も他にあまり類を見ない。一番長いそれを選んでおくことにする。
バジル氏の優雅な生活
他にもよく読んだマンガ家がいるし、最近気に行っているマンガもいくつかあるけれど、オールタイムベストに選ぶには軽いかもしれない。もう一人の最も気に入っているマンガ家は、倉多江美である。中学生のころに、初めて読んで好きになり、ずっと読んでいたのだけれど、いつの間にか描かなくなっていた。最後の一冊などは、出ていることに気づかずに買わないでいて、今も入手していない。ネットで検索したら、三千五百円で出ていたが買えないでいる。
心理学やアメリカ映画などを軽くなぞっただけの、深いんだか浅いんだかわからないマンガが多く、少年の繊細な心理を描いたものも好きだった。こちらもやはり一番長いものを選ぶことにする。フランス革命の時期の政治家である、カメレオンと呼ばれたジョゼフ・フーシェをモデルにしたもので、一応完結しているけれど、話としては終っていない。
マンガの中では、フーシェではなくコティとなっている。
静粛に、天才ただいま勉強中
あしたからまた別のオンラインアルバイトが始まるので、当分書かないかも。