表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
3/104

千里の道もダンジョンから

 リヴァイアサン出現でいきなりの大ピンチに見舞われた俺だったが、死闘の末に熱い友情(←やや一方的)が生まれ、最後には見逃してもらえることになった。

 そうなるともう俺とロージアを邪魔するものはいないって感じで、そのまま二人は友達以上の関係となり――



 ――なぁんて甘い展開はなく、なぜかロージアからお説教をされている俺。

 その理由は……



「いいですかマサルさん。本来ダンジョンマスターとは、自分のテリトリーを築いて巧妙に敵を誘い出し、絶対的有利な状態で勝負を仕掛けるのです。これは相手が人であれ魔物であれ同じです。自らイニシアチブを捨てるバカがどこにいるのですか!」


 すんません。ここに居ました……。


「でもさっきのは仕方なくね? それに俺はダンジョンマスターじゃなくて冒険者を目指してるんだよ。ダンジョンに隠ってるのは性に合わなくて」

「仕方ないで見逃してくれるほど世の中は甘くはありません。それは冒険者であろうと同じことです」

「うっ……」


 なんか論破されちまった……。


「で、でもさ、実際に見逃してくれたわけだし、そこは――」

「それは相手が理性的だったからです! 普通なら丸飲みにされて終了ですよ!? 出会って数分で死別なんて、恋人になって欲しいという話はどうなるのです!?」


 おお? この展開は!


「あの~、それってつまり、俺に惚れちゃったから付き合う気になったとか?」

「リヴァイアサンを相手に身を挺して挑んだのです。惚れ直すくらいは――って何を言わせるのですか!」バシバシ!

「いてててて! 本気で叩くなよ」

「……コホン! とにかく、私がダンジョンコアとなった以上、無茶な真似はさせません。いいですね?」

「とりあえず分かったよ」


 いくら決戦の時(クライマックス)で相手と同じ強さになれるとは言え、負ければそこで終わりだもんな。正直のところ、今回は運が良かったと思う。


「反省したようですので、さっそくダンジョンの構築にかかりましょう。ダンジョンコアをこちらに」

「あ、ああ……」


 よく分からんが、ごく自然な流れでダンジョンコアをロージアに手渡した。


「信用してくださるのは嬉しいのですが、赤の他人に寄越せと言われて簡単に渡してはいけませんよ?」

「でもロージアは他人じゃないだろ? 俺は信じてるから大丈夫さ」

「……コホン。そういう事にしておきます」


 顔を赤くするところが一々可愛い。そんなロージアを眺めていると、手に乗せていたダンジョンコアが淡い光を放って消えてしまった。


「ダンジョンコアはどうなったんだ?」

「私の中に取り込みました。これで半永久的に紛失は起こらないでしょう」

「それ、普通の人間ができる事なのか?」

「普通はできませんね。ですからこの事は私とマサルさんだけの秘密です。他言は無用ですよ?」

「分かった。けど普通はできないって事は、ロージアは普通じゃな――」

「女の子には秘密にしておきたい事がいっぱいあるのです。余計な詮索はしちゃいけません。それに普通ではないからと言って、即座に私を見捨てるようなら――」

「それだけは絶対にない!」


 せっかく脈アリなのに、簡単に捨ててなるものかよ。それにダンジョンコアはロージアに預けてるんだ。ここまで来たら最後までやらなきゃな(←何を?)!


「ロージア、俺はキミを一生大事にするよ」

「……いろいろとブッ飛んだ発言ですが、まだ交際すらしてませんからね? 当分はお友達のままです」

「ダンジョンコアを大事に匿ってくれるお友達って世の中に居るもん?」

「ここに居ます! さぁ、時間は有限なのですから、ダンジョン製作に取り掛かりますよ」


 ロージアに促されて本格的にダンジョン構築に手をつけていく。

 まずはテキトーな場所を決めると入口を生成。そこから地中深くに空間を確保し、コアルームと呼ばれるダンジョンの制御室を設置すると、いよいよダンジョンマスターとしての生活が始まる。


「当分はこの狭いコアルームで寝泊まりする事になるでしょう」


 生成された部屋は、まさに最低限の生活スペースって感じの広さだ。つ~か狭い。

 壁に備え付けられたモニターで、ダンジョン内部を監視することも出来るらしい。が、何より狭い。

 しかし寝るのはいいとして、トイレやら風呂やらは設置スペースが皆無だ。いやホントに狭い。


「あの~、ロージアさん。この部屋たたみ3畳分しかないんですけど……」

「誰かさんがリヴァイアサンとの戦闘でカーバイン素材の壁を生成しちゃいましたからね。それだけで1万近くのDP(ダンジョンポイント)がフッ飛んでると思われ枯渇寸前です。本来ならこのまま孤独死ですよ?」

「そ、それは困る!」


 あの壁1つで破産寸前とか泣けてくる。我ながら早まった事しちまったもんだ……。


「辛いでしょうが、DP節約のためにもしばらく我慢してください。本来なら私の部屋を別で作るところなのですから」

「え!?」


 三畳間にロージアと寝るって事だよな? 下手したら身体を密着させなきゃならんくなるかもだし、俺としては願ったりかなったりなんだが……


「それって同棲生活だよね?」

「同居です! 身体を許した覚えはありません! 言い替えればルームシェアですので、くれぐれも変な気は起こさないように」


 う~ん、理性が抑えられるかなぁ。


「……変な気は起・こ・さ・な・い・よ・う・に!」

「りょ、了解」


 ここで手を出したらゲームオーバーな気がするから絶対に我慢しよう。


「では次の過程です。ダンジョンを開放する前に入口とコアルームを繋げる必要があります。これはダンジョン製作上のルールであり、これを無視することはできません」

「でもそれやっちゃうと侵入されちゃうやん」

「その通り。ですので開放前に罠を仕掛けたり魔物を配置したりと、入念な準備が必要となるのです」

 

 まぁ当然だな。いくら切り札があるとはいえ、寝込みを襲われちゃ一溜りもない。


「ならさっそく罠でも張ろうぜ」

「……忘れてるようなのでもう一度言いますが、先程の戦闘によりDPが――」

「むが~~~、そうだった!」

「そこでDPを効率よく稼ぐ必要があるのですが、一番手っ取り早いのは生き物をダンジョンで殺すことです」


 殺すって単語がまた物騒だな……


「何を驚いているのです? 人が生きていく上では当たり前の事ですよ? 例えば動物をダンジョンに引き寄せればDPと食料が同時に手に入るのですから、やらない手はないでしょう」


 言われて気付いた。食料の問題もあったんだな。そりゃ可哀想とか思ってる場合じゃねぇよな。


「後は侵入者が1日ダンジョンに籠る毎にDPが加算されますので、一度侵入した敵を上手く逃がさないようにするのも重要です」

「でもこの島って無人島なんだろ?」

「何も侵入者が人である必要はないのです。家庭菜園のように、ダンジョンで植物を育てるという手も有りますよ?」

「目から鱗!」


 アクティブ思考な俺だが、実は室内で植物を育てるってのも面白いかと思ってたんだよなぁ。

 ん? 俺に似合わないって? まぁ早けりゃ3日で飽きるだろうし、あながち間違いじゃないかもな。


「そんじゃちょっくら植物と動物を拝借してくるか」

「外に出るのですね。武器はありますか?」

「あ……」


 そういや石剣を召喚したけど戦闘でブッ壊れちまったんだよなぁ…。


「はぁ……本当に行き当たりばったりですね。今回は私の武器をお貸しします」

「え、ロージアって武器持ってんの?」

「当然です。これでも一人旅をしてましたからね。剣の1つでも扱えないようでは途中で行き倒れが確定です」


 異世界の女の子って(たくま)しい!

 もう半分ロージアが普通には見えなくなってきてるが、そんなことより現状打破が大事だと自分に言い聞かせ、豚やら猪、更には狼(実は魔物だった)を捕獲してダンジョンに連行。1日経過で僅かなDPを獲得してから食糧にした。

 他にも植物を土ごと持ち帰ったりしたが、こっちは一週間くらいでダメになったな。どうやら日光を浴びないと育たないらしい――って当たり前か。


「――で、一週間経ったわけだが、DPは1565ポイントか」

「初日で1032ポイントだったのですから上出来と言えるでしょう」

「お、ロージアが褒めてくれた。上出来ならもう一人前だよな! よっしゃ、ようやく冒険者になれる道筋が見えてきたぜ!」

「なぜそう飛躍するのです……」

「え? なんかマズイこと言った?」

「はぁ、もういいです。とにかくマサルさんはまだ半人前どころか0.1人前ですので、気を緩めることなく精進すべきでしょう」


 0.1って、めっちゃ低いやん!


「あんなに頑張ったのに……」

「そうですね。毎晩懲りもせずに私の布団に侵入してこようとした無謀さだけは評価してもいいでしょう」

「だからそれは悪かったって! それに2日間だけじゃん!」

「3日間です! 今度決行したら去勢しますからね!?」

「はい……」


 言い訳だろうけど仕方ないんだよ。だってこんな無人島で美少女と二人きりだぜ? しかも狭い3畳間でさ。こんなの我慢できるわけないだろ!

 で、実際行動に移したらロージアさんってばバッチリ起きてんの。ニッコニコの笑顔でおもいっきりボディブローかましてきたよ。だから後半の4日間は半分怯えてたね。


「……どうしたのですか? 顔色が悪いようですが」

「いや、ロージアに腹を殴られたのを思い出して、ちょっと……」

「おかしいですね。あれでも手加減したのですが」


 あれで手加減!? 外にいたグリーンウルフ(←という名の魔物)の比じゃないぞ!


「もしかしてマサルさん、想像以上に弱いのでは?」

「ぐはぁっ!」


 俺のハートにクリティカルヒット!


「ふむ。ならば今日は武術の鍛練を集中的に行うことに――」

「勘弁してください!」


 その日は全力で拒否った。


キャラクター紹介


オルド

:天界にてイグリーシアを管理している神の一柱で、マサルを転生させたのも彼。

 自身のハゲ頭と同様に本来予定にはなかったマサルの死を訝しんでいる。

 マサルが死んだ理由に気付いた時、彼を含む天界の神々は大いに驚愕する事になるだろう。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ