表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
28/104

ゴブリンキング

「森で目撃されたゴブリンの討伐?」

「…………」コクり


 俺の正面でお茶を(すす)っていたシルビアが無言で頷く。久々にダンジョンに来たと思ったらゴブリンを退治して欲しいときたんだから思わず面食らったよ。

 だってゴブリンだぞ? 冒険者なら誰でも倒せる定番のザコで、油断さえしなきゃ何も問題はない。


「なんでわざわざ俺に? そりゃ報酬くれるんなら引き受けるけどさ、冒険者ギルドに依頼すりゃそこらの冒険者が喜んで引き受けると思うんだが」

「もちろん依頼は出しました。しかし、冒険者パーティに犠牲者が出たようなのです」


 そりゃ対処にしくじったら死ぬ事だってあるだろう。向こうだって死なないように必死だからな。けど俺が想像していたよりもっと事態は深刻らしい。


「犠牲者の中には大ベテランのパーティも含まれている事が判明しました。Cクラスをも相手に戦えるという評判のパーティが単なるゴブリンによって殲滅させられる――これはとても考えにくい事です。この事から、森の奥にはゴブリンキングが発生してるのではというのが軍の見立てです」

「ゴブリンキング……、そんなにヤバいやつなのか?」

「ふむ、マサルさんは知らないのですね。ゴブリンキングとは――」


 ロージアが言うには次の通り。

 ゴブリンキング本体もそこそこ強いのだが、本当に厄介なのは自身の眷属として大量のゴブリンを召喚する点にあるらしい。

 いくら貧弱なゴブリンとはいえ、数にものを言わせれば危険度は跳ね上がる。ベテランパーティも数に押し潰された可能性が高いのだとか。


「――という感じです」

「なるほどな、それで話が回ってきたってわけか」

「それだけではありません。ブローナや宰相が謀反を起こした事が影響してか、貴族の中ではいまだに暗雲が立ち込めているのです。たかがゴブリンと軽視しては足元を掬われかねません」


 被害の拡大は付け入る隙を与えるってやつか。またキャシュマーみたいな奴が現れないとも限らないし、分からんでもないな。


「分かった。ゴブリンなんざチャチャっと片付けといてやるぜ」

「フフ、マサル様なら受けてくださると信じておりました。ありがとう御座います。あ、そういえば……」

「ん?」

「家中の1人がおかしな事を言っていたのを思い出しました」

「おかしな事?」

「はい。森で発見された冒険者の死体についてなのですが、手足や頭部が失われている状態のものが多く見つかったのはおかしいと」

「「???」」


 俺とロージアは?マークを頭上に乗っけてた事だろう。戦闘の末に部位が失われるのは珍しくはないからだ。

 だが死体を見るに、どう見ても食いちぎられたとした思えないんだと。ゴブリンは人を食わないし、結論として別の何かに食い殺されたって事になったとか。


「突然変異したゴブリンが人を食べるようになったのでしょうか? いずれにしろ注意した方がよさそうですね」

「分かってるって」



 こうして()()()()()()()はゴブリン討伐に出発した。向かった先は王都の南に広がる大森林で、トランジェス道場が有った場所とは反対側になる。

 でもって到着した俺たちが見た光景は、既に現地入りしている冒険者たちが続々と森に入って行くところだった。


「お~お~、愚民共が勢揃いじゃないか。マサル、オイラたちの実力を見せつけるぞ」

「顔に似合わず強気な姿勢は評価するよ~。ささ、あたしたちも早く行きましょ~」


 カルロスとシュワユーズが先陣を切り、ズイズイと奥へ進んでいく。この二人なら前衛を任せても安心だと考え、俺とロージアも後に続いた。

 ああ、ちなみにだがジャニオとブローナはダンジョンで留守番だ。ジャニオがいると冒険者に絡まれ易くなるし、ブローナはジャニオが行かないと知るとテコでも動かないからな。


「ギャギャ!」

「さっそくお出ましか、食らえぇい!」


 ドゴォ!


「グギャギャ!」

「出ましたね、そ~い!」


 ズバッ!



 散発的に現れるゴブリンたちが、肉を切られて宙を舞う。さすがは武道派なドワーフ王家と剣術の師範だな。全然安心して見てられる。


「マサルさん、左奥から来ます」

「おぅ、任せとけ!」


 ギュギュギュギュ!


「グゲゲゲ!?」


 コッソリ近付いていたゴブリンに蔓が巻き付き、極限まで締め上げる。やがて息が続かず窒息したゴブリンが力なく倒れ込んだ。

 言うまでもないがこれもダンジョントラップの1つで、敵意を持った奴が俺に近付いたら発動するようにしてたのさ。


「スッゲェ! これがダンマスの力か!」

「ああ。俺に奇襲なんざ100億年早いってんだ」

「でも前に出て戦うダンマスって聞いた事ないけど、どうしてかな? マサルくんを見てるとスッゴい頼りになりそうだけれど」


 そりゃ普通のダンマスはダンジョン以外で罠とか発動できないからな。なぜ俺だけ可能なのかはロージアでも知らないと。うん、気にするだけ無駄だな。考えたって分かりやしねぇ(←考える事を放棄した人)。


「しっかしアレだ、こんなザコ共に遅れをとるなんて、最近の冒険者は(たる)んでるんじゃないか?」

「うんうん、あたしの道場にいた門下生も修行を怠けてる奴が多かったし、カルロスさんの言う通りかもしれないね~」

「俺もよくある油断して殺られたってやつなんじゃないかと思ってる。周りにいる冒険者は違うみたいだけどな」


 俺たち以外にも散発的な戦闘が行われてるようで、剣と剣が当たる音や魔法が飛び交う音がチラホラと聴こえてくる。悲鳴が聴こえるわけじゃないし、ピンチって事はないだろう。

 そんな状況がしばらく続いた後、そろそろ昼飯時だな~なんて呑気に考えてたところ、とても耳障りな声が聴こえてきた。


「フン、たかがゴブリン。ジーザス道場の師範であるこの俺の相手ではない。見ろ、朽ち果てた奴らを。我が前に立ち塞がる輩は皆同じ運命を辿るのだ!」


 斬り捨てたゴブリンを指し、これ見よがしに剣を鞘に収めた男。

 間違いない。このハゲオヤジは闇ギルドと結託して俺を殺そうとしたあのクルーガーだ。


「おお、さすがは師範!」

「惚れ惚れする剣の動きだ!」

「俺、ジーザス道場に入門しようかな……」


 同行しているらしい冒険者からは羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しを受けているハゲオヤジ。俺にとっちゃ憎しみの対象でしかないが、この場でコイツを斬り捨てれば俺が犯罪者になっちまう。

 苦虫を噛み潰した顔を作っているとシュワユーズとロージアもハゲオヤジに気付き、そっと耳打ちをしてくる。


「あそこに居るの、クルーガーだよ。どうするのマサル、襲っちゃう?」

「私たちが生きてるのに気が付いたら、何かしらの手を打ってくる可能性は高いかと」

「いや、この場じゃマズイ。今は泳がせといて、1人になったところを()()()()()()()()するのがいいだろう」


 悔しいがまだその時じゃない。今は気付かれないように距離を置き、クロコゲ虫に監視させるだけに留める事にした。




「ふぅ~食った食った。美味すぎて腹がキツいぞ~」

「ホント美味しかったですよ~」

「フフ、お粗末さまです」


 昼飯時になり、ロージアがランチボックスを広げてくれたので、四人で仲良くランチタイム――はあっという間に終了。食後にダラリとしている状態だ。


「あのタマゴサンド? とかいうパンは絶品だな。あんなパンはゴルモン王国にはないぞ」

「あたしの食べたツナサラダもだよ~。ロージアさん、今度作り方を教えてください!」

「そ、それは…………ノーコメントです」

「え?」


 そりゃ()()()()()()だからな。教えれるわけがない。

 実のところロージアには料理が苦手という属性があり、手作りしたものは漏れなく劇物へと変化するらしい――というもっともな理由もあり、食べ物は召喚に頼っているんだ。

 でも結構凄いぞ? ラーメンとかカレーとか召喚できるからな。


「よっし、そんじゃあゴブリン狩りを再開すっか」

「えっ、デザートはないんですか!?」

「ねぇよ!」

「ケチ~、ケチケチ~、だったら高級酒で許してあげるよ~」

「いやお前、ケチ扱いしてる俺に高級酒を要求するとか――」

「た、大変だーーーっ! ゴブリンキングが出たぞーーーっ!」


 そう叫んだ冒険者が近くを駆け抜けたと思ったら、後から大勢の冒険者たちが猛ダッシュで迫ってきていた。


「おい、アンタらも早く逃げろ!」

「あんなのを相手してちゃ、命がいくら有っても足りやしないぞ!」


 足して30人くらいだろうか。複数の冒険者パーティがゴブリンキングから逃げてきたという事が分かった。

 それを裏付けるかのように、ゴブリンに混じってゴブリンナイトやゴブリンメイジまでもが涌いてくるじゃねぇか。しかも数が多い。見える範囲だけでもザッと100体はいるな。


「囲まれると厄介です。ここは一旦退いて、森を抜けた辺りで迎撃しましょう」

「しゃ~ねぇ。食後の運動にマラソンといくか」


 多勢に無勢だと不利って事で、ロージアの提案に沿って森の中心から離れるように退却していく。

 そのまま森を抜け出せれば御の字――とは行かず、退却途中で足を負傷して(うずくま)っている女冒険者を発見した。傍らには真っ青な顔をした彼女の仲間が、迫るゴブリンを見てブルブルと震えている。


「も、もう無理、これ以上走れない……」

「どどど、どうすりゃいい? あんな大群、俺たちだけじゃとても……」

「それでもやるしかない。――お~い、そこのキミたちも手を貸してくれ。彼女1人を見殺しにはしたくないんだ!」


 俺としちゃ引き受けるつもりだったが、念のためロージアに視線を送る。

 笑顔で微笑んだのを見た俺は、急ブレーキをして背後を振り返った。


「カルロス、シュワユーズ、作戦変更だ。ここでゴブリンを殲滅するぞ!」

「任せろマサル。オイラの盾は生半可な事じゃ崩せないって事を教えてやる!」

「フフン、いいね~こういう雰囲気。いかにもな劣勢に挑む――これぞ剣士の道だよ!」

「負傷した冒険者は私の方で気にかけておきます。マサルさんはゴブリンの迎撃をお願いしますね」

「おぅよ!」


 どっちが狩られる役割なのか、しっかりと身に刻んでもらおうか!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ