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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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重戦士カーネル

 部屋の真ん中で対峙するカルロスと兄貴。二人からやや離れた位置でキャシュマーを前に俺とロージアが身構える。


「ケケケケ! この前はしくじったけど今度こそお前を倒してやる。ボクの自慢の眷属――重戦士カーネルでな!」


 吠えるキャシュマーに応えるように、カルロスの兄カーネルが前に出る。身につけた全身鎧からはドス黒いオーラが立ち上がり、兜の奥に見える両目からは真っ赤な眼光が。コイツもブローナの時と同じようだ。


「そ、そんな……。あのプライドの高い兄貴が眷属になるなんて……」

「フン。上には上がいるということ。強い者に従うのは当然のこと。強き者の下に秩序が生まれること。戦地に立てば自ずと分かるようになるだろう。さぁカルロスよ、お前もキャシュマー様の軍門に下るがいい!」

「う、うぅぅ……」


 見てるだけでもカーネルの威圧が伝わってくる。それこそゲイザーのオッサンとタメ張るくらいに。

 そんなカーネルに対しカルロスはヨロヨロと後退し、すっかり怖じ気付いたかのようだ。


「どうしたカルロス? お前もドワーフの王族なんだから、少しくらい戦えるだろ?」

「そ、そんなこと言ったって、兄貴はそこらの魔物なんかより遥かに強いんだ。数年前に隣国が攻めて来た時だって、向こうの戦馬車(チャリオット)を正面から止めたくらいなんだよぉ……」


 チャリオットを正面から!? そりゃまさに重戦士のごとき活躍だ。既に気押されしてるカルロスには荷が重いだろう。だが……


「頼むカルロス。とてもじゃないが、手持ちの眷族じゃカーネルに太刀打ちできねぇ。お前の協力が必要なんだ」

「いやいやいやいや、絶対無理!」

「少しの間だけでいいんだ。カーネルを引き付けといてくれ。その間に俺がキャシュマーを倒す」

「だから無理だって! 只でさえオイラの倍はある体格だぞ? 敵いっこないって!」


 ブンブンと首を振って後退りをするカルロス。

 まいったな。カーネルを何とかしないとキャシュマーを相手にしてるどころじゃないぞ。せめてカルロスを焚き付ける事ができれば……と考えていると、思わぬ人物から掩護射撃が。




「カルロスさん。もし良ければ……」

「え?」




「――え~~~~~~っ!? そ、それは本当かい!?(マ○オさん風に)」

「もちろんです。貴方にピッタリなステキな女性を紹介しますよ」

「うぉぉぉぉぉぉ、燃えてきたぞ~~~~~~! このカルロス、ブサメンで短足でチビだが、貰ったエサにはガッツリ食いつくタイプなんだ。今世紀最大の童○卒業のチャンス、逃しはしないぞぉ!」


 いらん事までカミングアウトしちゃってるが、やる気になったんなら問題ない。つ~かロージアは誰を紹介するつもりなんだ……。


「へぇ、やるの? 本当に? 止めといた方がいいんじゃな~い?」

「うるさい! やると言ったらやる! 今度こそ絶対に掴み取ってやるんだ!」

「ケケケケ♪ なら戦いに相応しい舞台を用意してやる。ボクについてきなよ」


 カルロスを挑発するような仕草をし、壁に現れた真っ黒い空間へとキャシュマーは消えていき、カーネルも無言で付いていく。

 俺たちも後を追えば、そこは何となく見覚えのあるようなダンジョン。

 ああ、どうりで見たことあると思ったらダンジョンのボス部屋か。


「わざわざボス部屋を用意したのかよ」

「ケケケケ♪ そうさ、ここなら存分に戦えるだろ~? ま、どうせ結果は変わらないけどな――ファイヤーストーム!」

「クッ、障壁!」


 不意を突いて放たれた火魔法を石の壁で防いだ。広範囲に広がる火柱だったが、カルロスとカーネルの二人は気にせず攻防を繰り広げている。

 しかし大丈夫だろうか? 押し付けた俺が言える立場じゃないが、カルロスは防戦一方で押され気味だ。早く加勢してやらないと。


「マサルさん、向こうはカルロスに任せて私たちはキャシュマーに集中を」

「ああ、そうだな」


 不意打ちかましてくれた礼もしなきゃならねぇし、俺の相手はキャシュマーだ。


「やってくれたなクソピエロ。今度こそ逃がさねぇからな!」

「あっ、クソピエロで思い出したぞ! そうだよ、お前らのせいで無様な逃亡をする羽目になったんだからな!? あの時の雪辱を今晴らしてやるぅ!」

「得意の火魔法ですか。ならばこちらも!」


 沸き上がる怒りに呑まれたかのように、キャシュマーが火魔法を連発してくる。ロージアも氷魔法で対抗しているため、俺が割って入る隙がない。

 なら周りを囲んで叩き込もうとジャニオの召喚を試みるが……



『NONSENSE ACTION! 召喚を封じられているため、眷族の呼び出しは行えません』



 先の内容が機械音で脳裏に響く。


「はぁ? 眷族が召喚できないだと!?」

「ケケケケケ♪ 言ってなかったっけぇ? 邪魔者が入らないように封じといたんだよ~~~ん♪」


 思わず舌打ちしそうになったが、直ぐに理由が分かった。コイツは敗走のペナルティでDPが枯渇してるんだ。まともに召喚できないから直接挑んでやがるんだと。


「はっ、そういう事か。召喚したくても今のお前じゃ召喚できないもんな!」

「あ"~~~そうだよ、それもこれもぜ~~~んぶお前らのせいだからなぁ!? ボクが直接黒焦げにしてやる――ファイヤーストームファイヤーストームファイヤーストームファイヤーストームゥゥゥゥゥゥ!」

「おおっと、障壁!」


 挑発したつもりはなかったが結果的にキャシュマーはプッツンしたらしく、暑苦しい火魔法を更に連発した。

 するとこれが決定的な仇となり、早くも魔力切れを起こすことに。


「クッ……ハァ……ハァ……、お、お前……卑怯だぞ? いつまで……ハァハァ……逃げ回ってる……つもりなのさ?」

「決まってる。チャンスが訪れるまでだよ」

「……チャンス?」

「そうさ。そしてそのチャンスは今ってこった!」


 今なら魔法を放てないと予測して剣で斬りかかる。ロージアが見てる手前、カッコよく決めるつもりだったんだが……



「させるか――ファイヤーウォール!」

「うわッチィィィ!」


 炎の壁に阻まれて慌てて剣を引っ込める。魔力が微かに残っていたらしい。

 だがしてやったりな笑みが炎の向こうに揺らめく中、次の瞬間には凍り付くことに。



「炎という最大の弱点を氷の前に晒すとは、貴方もまだまだダンマスとしては未熟ですね」


 ドヤ顔(←見た目は無表情だったが、多分心の中ではドヤ顔だったはず)で言い放って魔力の籠った手をキャシュマーに向けるロージア。


「うわぁ、しまった! 炎は水や氷に弱いんだった!」

「その通りです。しかも魔力が無い今では魔法の制御もできないでしょう? 氷の中で凍えなさい――ブリザードクロス!」

「グギャァァァァァァァァァァァァ!」


 左右から出現した凍てつく暴風により炎の壁が氷の壁へと早変わり。当然キャシュマーも無事で済むはずはなく、壁と一緒になって凍り付けに。

 暴風が収まると徐々に氷が溶けていき、キャシュマー本人もドロドロと……


「く、くそぉ……、お前らを倒せばDPを奪って仕切り直しができた……のに……」

「はっ、残念だったなクソピエロ。何を企んでたか知らねぇが、テメェの野望はここで終わりだぜ」

「ぐぅ……、も、申し訳……ありません、……メア……様……」


 最後は悔しそうに顔を歪ませ、全身が溶けて消え去った。


「ふぅ、終わったか」

「はい。お疲れ様ですマサルさん。なかなか良い動きでしたよ」

「でも結局はロージアが倒しちまったしなぁ。正直ロージアだけで倒せたんじゃないかと思えてくる」

「そんなことはありませんよ? マサルさんが注意を引き付けてくれたから隙ができたのですから」


 ま、そういうことにしとくか。なんか気を使われてる感が凄いけど今は仕方ない。こればっかりは強くなるしかないな。


「あ、そういやカルロスは――って、なんで戦うのを止めないんだ!?」


 すでに洗脳は解けたはずなのに、なぜかカーネルは斧を振り回していた。



「くぅ……やっぱり兄貴は強いよ……」

「当たり前だ。第一線で戦い続けていた俺と、城でぬくぬくと過ごしていたお前を一緒にするな!」



 後退しながらも何とか斧を防ぐカルロスと、果敢に斬りかかるカーネルがそこにいた。もう戦う理由は無いはずだと思い、止めに入ろうとする俺。しかし、意外にもロージアがそれを制してきた。


「おい、二人とも止め――」

「邪魔をしてはいけません」

「いや、何でだよ。キャシュマーは倒したんだぞ? 早くカーネルを正気に戻さないと」

「カーネル氏は正気に戻っていますよ。しかし敢えて戦い続けているのです」

「はぁ!? 何のために……」

「見ていれば分かります」


 そう言ってロージアは戦う二人に視線を移す。それならばと俺も黙って静観することにした。



「ダ、ダメだ、兄貴には敵わない。やっぱり格が違うよ……。打ち合いにも押されるし隙も突けない。それに短足でチビでブサイクなオイラじゃ勝てる要素なんて……」

「カルロスよ、お前は何も分かっていない。戦で腕を磨き続けた俺が、怠けてばかりのお前に負けるはずなかろう」

「じゃあやっぱり敵わないんじゃないか! どうせオイラなんか……」

「バカモノォォォ!」



 バァン!



「ぐぇっ!」


 大盾によるシールドバッシュでカルロスが吹っ飛んだ。悶絶しつつもフラフラと立ち上がるカルロスに対し、カーネルが怒声を浴びせる。


「相手が強いから何だ! 自分は弱いから見逃せとでも言うつもりか!? 格が違うなんざ何の免罪符にもならんぞ! 負けたくなくば勝て、逃れたくば倒せ、弱ければ上回れ、格が違うなら格上になれぇぇぇ!」


 無茶だろ!? ってことを叫びつつカーネルが突進する。これまでのカルロスなら只やられるだけだったろうが、カルロスの目には炎が宿っていた。


「そうだ、ロージアと約束したんだ。勝てば女の子を紹介してくれるって。モテないオイラにとってはまたとないチャンスなんだ」


 さっきまでとは雰囲気が違う。不純な動機が功を奏したようだ。


「オイラは勝たなきゃならない。美少女(←何故か女の子から美少女に変わってますねぇ)を紹介してもらうためにも。絶対に負けられないんだぁぁぁぁぁぁ!」


 大盾を前にして突っ込んでくるカーネル。対してカルロスは巨大ハンマーを担ぎ上げ、大盾とハンマーが正面から激突する!



「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」



 ガキィィィィィィン!



「ぐわっ!?」


 ――が、弾き飛ばされたのはカルロスで、部屋の隅まで転がっていく。対するカーネルは微動だにせず、大盾を構えたままの姿勢を維持していた。


「ま、負けた……」


 今の一撃で気力を使い果たしたらしく、カルロスは大の字になって起き上がらない。

 そんなカルロスに対し、カーネルは意外な言葉を発する。


「今の一撃は見事だった。この盾が脆ければ、負けたのは俺の方だったな」


 よく見ると大盾の中央に大きなヒビが発生していた。恐らくは次の一撃でブッ壊れるだろうと予想がつく。


「こ、このキズを……オイラが?」

「そうだ。あの盾職人――ガドロガが磨き上げた盾に、お前の一撃が通ったのだ」

「オイラの……一撃が……」




「や、やった、やったぞぉぉぉ!」


 思わず小躍りするカルロス。しかし、またしてもカーネルは意外な台詞を……


「しかし、お前はやはり未熟。圧倒的に経験が不足している。そこで――」


 カーネルと目が合うと、何故かいきなり頭を下げてきて……


「無理を承知でお願いしたい。どうかカルロスを旅の同行者として迎え入れてほしい」

「ええっ!?」

「諸君らはカルロスの友人なのだろう? どうかお願い申す」

「いや、でもですね……」

「それにな、すでに国中で噂になっているのだ。カルロスが祖国を売っ――とな。この噂を揉み消すのなら相応の時間が必要。ならばその間に外の世界を見るべきであろう」

「は、はぁ……」


 ここで断ったらKYの烙印を押されかねない。諦めてカルロスを迎え入れてよう。


「分かりました。多分この先もカルロスのような重戦士が必要になるはず。俺もまだまだ未熟なので、互いに競っていこうと思います」

「うむ、宜しく頼む」


 ブローナに続いてカルロスまで加えることに。でもまぁ盾になる存在が必要だったし、結果オーライってな。



キャラクター紹介


キャシュマー:

 ラーツガルフ魔王国でブローナを操っていた魔物にしてダンジョンマスターで、不気味なピエロ人形の姿をしている。

 シルビア王女らと共に王都を奪還しに来たマサルたちに敗れ、ダンジョンバトルを一方的に放棄して逃走。行方をくらませた。

 しかし、王都奪還後のゴルモン王国にて再会し、城に忍び込んだところで再度戦闘に。魔力が回復しきっていないのもあり、マサルによって撃破された。

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