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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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密会

 カルバーンと共にシルビアを説得する事になった俺たちは、ダンジョンを経由して城へと乗り込んだ。ダンジョンの入口は城の一室に繋がってるのもあり、余裕でゲイザーのオッサンとも再会できた。

 あ、一応言っておくが、入口の件はシルビアの許可は取ってあるからな?


「むぅ、宰相一派の企みか。そのような動きは見られないのだが……。カルバーン殿、それは間違いのない事なのか?」

「もちろんです。さすがに表立って王女と敵対はしないでしょうが、このまま諦めるとは思えません」

「しかしな、混乱しかけた国内を落ち着かせているのも宰相の手腕が大きい。今宰相を罰すれば民からの反発は必至。決定的な証拠がないのならどうにもできぬ」

「だからこそシルビア王女を説得するのです。ゴルモン王国との婚約を破棄すれば、必ず宰相は動きます。これ以上の好き勝手をさせないためにも婚約破棄は有効です!」


 強いては自分のため――というのは伏せておき、オッサンに協力を仰ぐ。

 すると……


「分かった。お主には1度手を貸してもらったしな。シルビア様の説得の件、よろしく頼むぞ」

「ありがとう御座います!」



 ゲイザーのオッサンから了承を得て、シルビア王女の元へと急いだ。オッサンには王女の付き人たちを人払いしてもらい、カルバーンと王女の二人だけの空間が中庭に作られる事に。

 俺とロージアとオッサンも離れてはいるが、やはり会話は気になるもの。そこで我が(しもべ)(←クロコゲ虫)をこっそり張り付かせ、会話内容を聞き取ることにした。



「カルバーン殿ではありませんか。こんな朝早くに何か重要なお話でしょうか?」

「はい。ボクにとってはもちろんシルビア王女にとっても重要な話となるでしょう」

「あら、それなら丁度よかったです。カルバーン殿には此度の功労者として何か差し上げねばと思っておりましたので」

「こ、功労者だなんて恐れ多い。ボクは当然の事をしたまでですよ」


 シルビア王女から話を振っているようで、ここまでは順調だな。


「ですがブローナが城を乗っ取った時、多くの貴族は我先にと逃げ出してしまいました。その事を考えたらカルバーン殿の助力は大変大きかったと言っても過言ではありません」

「え、そ、そうですか……ね?」

「はい。とても助かりましたよ、ダメよ仮面様」

「ダダダダ――ダメよ仮面ちゃいますから!」

「フフ、そういう事にしておきます」


 コイツ、ま~だダメよ仮面を否定してやがんのか……。


「ですが困りましたね。爵位で謝意を示そうにも既にアノーストン家は公爵家。他に差し上げられるものは……」

「…………」


 おお、メッチャ良い流れ! ここは素直に王女が欲しいと言うべきだろう。

 さぁ、行け、カルバーン!


「そ、それならば王女、――ボ、ボボ、ボボボボ……」

「カルバーン殿?」

「ボクは……、し、しし、シルビア様が――」

「困りますなぁお二方。こんなところで密会を行うとは」

「「宰相!!」」


 突然会話に加わった第三の声。驚く二人が声の主へと顔を向けると、そこには護衛数名を引き連れた爺さんの姿が。二人が言った通り、この爺さんこそが黒幕ってわけだ。


「王女よ、貴女は既にゴルモン王国から婿を迎えるとお決めになられているはず。それがこのようなところで人払いをしてまでお会いになるとは、どのようなお考えか伺ってもよろしいですかな?」

「そ、それは……」

「何も考えていなかった――そうでしょう? もしも婿の耳に入れば関係の悪化は避けられません。今後の事も踏まえ、密会はお控えください。カルバーン殿も、宜しいですな?」

「…………」


 ここまで来て邪魔が入ったか。俺が出て行けば余計な説明をしなきゃならないし、何とかカルバーンには振り切ってほしいもんだが。


「聞いておられますかな、カルバーン殿?」

「お、お言葉ですが宰相殿、それは承諾できませぬ!」

「な、何を……」


 語気を強めたカルバーンに宰相は怯む。そしてここが正念場だとばかりに怒涛の勢いで捲し立てていく。


「元々シルビア王女の婚約者はボクであったはず。そこに横槍を入れてきたのは宰相殿、貴方ではありませんか! あの時は深く考えもせずにおめでとう御座います等と血迷った事を言ってしまいました。しかし、今なら言える。他国との婚姻は無用だと、シルビア王女の側で支えるのはボクだという事を!」

「カ、カルバーン殿……」

「シルビア王女、あの時は大変失礼な返事をしてしまいました。誠に申し訳御座いません。そこで王女、是非とも埋め合わせをさせていただきたいのです。――フゥッ!」



 ポン!



「まぁ、キレイな薔薇!」


 ジャニオ直伝の薔薇を出現させる手品に、シルビアは素直に喜んでいる。


「シルビア王女、一生貴女の側でお仕えします。どうか受け取ってください」


 おお、これはカッコよく決まったんじゃないか? 後はシルビアの返事だが……




「分かりました。一度は流した婚約でしたが、ここまで言われては断る理由はありません」

「で、では!?」

「はい。ゴルモン王国との婚約は破棄し、()()()()()()()()()()()

「あ、あ……ありがとう御座いますぅぅぅ!」


 シルビアが差し出した手をカルバーンがガッチリと握った。これで依頼は達成だな。

 というか婚約すっ飛ばしちまってるけど良かったんかな? まぁ当人たちがいいならいいか。

 しかし、これをよく思わない奴が1人。そう、黒幕である宰相だ。


「お待ちくだされシルビア様! 既にゴルモン王国とは国家間の協力も含めて話が進んでいるのですぞ!? それを無視してこのような男と――」

「いいえ。カルバーン殿がいなければ今のわたくしは無かったかもしれないのです。カルバーン殿となら王家の行く末を見守るのもよいと考えております」

「むぐぐぐぐ……」


 悔しさに顔を歪ませる宰相。ついには決定的な一言が奴の口から飛び出した。


「フン、ブローナよりもマシかと思ったが、制御しきれぬのなら最早不要。これよりラーツガルフは私が盛り立てていく事にしようぞ」

「さ、宰相貴方は……」

「おのれ宰相、ようやく本性を表したな!?」

「これもラーツガルフの未来のため、お前たちは幽閉させてもらおう。――さぁ、この二人を連行するのだ」

「「「ハッ!」」」


 人払いしているのを見越して強行手段に出たか。けど残念だったな。すぐ近くには――



「――俺たちもいるんだよぉ!」


 ゲシッ!


「グハッ!」


 護衛の1人に真後ろから飛び蹴りで転倒させた。驚いた宰相たちがこちらに振り向き……


「な、何奴!?」

「そこの二人の知り合いさ」

「おのれ曲者――」

「曲者は貴様だぁぁぁ!」



 バキィ!



「ガフッ!? ゲ、ゲイザー、貴様まで!」

「貴様の企みはしかと耳にした。最早逃れられぬと観念いたせぃ!」


 怒り狂ったオッサンが次々と護衛をKOしていく。ものの数秒で片付くと、手際よく全員を縛り上げた。


「けどまさか宰相自らボロを出すとは思わなかったなぁ」

「ええ。案外バカで助かりましたね」

「お、おのれぇ……どこの馬の骨かも分からん男と小娘がぁ。だが私の発言を聞いた者は少ない。果たして国民が信じるかなぁ? クックックックッ……」

「その心配は不要です。庶民である給士たちが、そこかしこで聞き耳を立ててましたから」

「何ぃ!?」


 驚く宰相に現実を突きつけてやった。何と、人払いされたはずの給士たちがあっちこっちの草むらから出てきたんだ。


「お、お前たち、何で……」

「見て分かりませんか? 全てが若い給士な上に殆どが女性です。若い男女の密会が気にならないわけないでしょう?」

「そんな……」


 縛られたまま器用に肩を落とす宰相。やっぱ魔族の男ってうっかり八○衛が多いのかもしんない。


「クックククク……」

「なんだ爺さん、何がおかしい?」

「こんな事もあろうかとな、少し前に早馬を出したのだよ。婚約を婚姻にするための契約書を持たせてな」

「婚約を婚姻にだぁ? んなもん、本人の承諾無しにどうやって――」

「ああ!」


 そこでシルビアが大声を上げる。すると宰相はニタニタと笑いだし……


「どうやら思い出したようですなぁ? 王女のサインが成された契約書の事を」

「クッ、なんという事! いつでも話が進められるようにと、宰相から差し出された契約書にサインをしてあったのです! もしもそれにゴルモン王国の王子がサインをすれば……」


 婚姻届の提出が完了だってか!? こうしちゃいられねぇ!


「おい爺ぃ、早馬の通るルートを言え!」

「フン、言うわけがなかろう? まぁ私を解放し権力を譲渡してくれるのであれば教えてやってもいいがな」

「クソッタレが!」


 ドゴッ!


「ブフッ!?」

「チッ、きったねぇ唾を飛ばしやがって!」


 半分八つ当たり気味に宰相を殴りつけるとロージアに止められた。


「落ち着いてくださいマサルさん」

「これが落ち着いてられるかってんだ!」

「大丈夫。私に良い考えがあります」

「……ロージア?」


キャラクター紹介


宰相:

 ラーツガルフ魔王国の宰相。ブローナによる謀反を好機と捉え、国家権力を握ろうと暗躍していた。

 権力奪取のために闇ギルドにも協力を扇いだが、行き詰まった末に捕えられ、更に闇ギルドにも見捨てられた模様。

 その後は二度と外には出られず、地下牢の中で生涯を終えたらしい。

 作者に名前をつけられなかった悲しき存在でもある。

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