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アクティブダンジョンマスター・俺は外に出る!  作者: 親方、空からゾンビが!
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俺の職業はダンジョンマスター

「――で、飛ばされた場所がどっかの孤島ってか……」


 下に広がる森や草原を山頂から見下ろしガックリと肩を落とす俺――入表勝(いりおもてまさる)は、18歳の少年でありながらも中身はダンジョンマスターである。


「孤島と言っても東京ドーム10個分はあるが、島の外は当たり前のように海が広がってやがんな。実はだだっ広い湖の真ん中でしたってパターンを期待したいが可能性は低そうだし、まずは島の探索からだよな――っと」


 スチャ!


 事故った時にも使っていたキックボードを召喚した。この世界に転生させられる際、なぜか一緒に送られてきたらしい。

 ちなみに召喚ってのはダンマス特有のスキルみたいなもんで、これを使って魔物なんかも召喚できるんだとか。まだ試してないけどな。


「そんじゃ、麓まで一気に行くぜぇ!」


 ダッ!


「ヒュ~~ゥ♪ 久々のシャバの空気だぜってか!」


 山頂からキックボードで滑走しつつ、俺はついさっき起こった出来事を思い起こした。



~~~~~



「俺が死んだ!?」

「うむ、その通りじゃ」


 俺の前でウンウンと頷く白装束を着たご老人。この人こそ――いや、人じゃないけど、このご老人こそかの有名な神様であるオルド様なんだとか。うん、全然知らねぇし、もしかしたら自称神なのかも。


「誰が自称じゃ! 言っておくがワシは本物の神じゃからな? お主はもっと敬うべきじゃぞ。まったく、最近の若いもんは……」


 な~んかブツブツ言ってるが、下手なこと言うとまた怒られるからな。ここは何も言わないでおこう。


「とにかく、お主は事故で死んでしまったわけじゃ。そのキックボードとかいうアイテムでウェ~イしておったところをトラックに轢かれた。覚えておろう?」

「一応何となくは覚えてます……」

「じゃがな、そのトラック実はこちらの手違いで走行し始めたものなんじゃ」

「――と言うと?」

「配下の天使がうっかり姿を現してしまってな、それを見た運転手が驚いて急発進したのじゃよ。その直後にお前さんが轢かれたという訳じゃな」


 それ、めっちゃトバっちりやん!


「慰謝料貰っていいッスか? あとできればもうちょいイケメンで生まれ変わらせてらえたら~なんて」

「そうじゃのう。慰謝料代わりと言ってはなんじゃが、お主を異世界転生させてやろうと思ったんじゃが……どうじゃ?」

「異世界って……あの異世界か? 魔物がいたり魔法を使えたりとかするあの異世界!? なるなる、異世界人になります!」

「あっさり決めたのう。ワシとしては大助かりじゃが」


 そりゃ異世界行くかと言われたら、行くって言う奴が多いだろ。


「ではさっそくじゃが……ほれ、この中から一枚引くがよい」

「何だその箱?」

「くじ引きじゃよ。お主が何に転生するかを決めるためじゃ」

「え? 人間じゃないの?」

「決まってはおらんの。じゃが安心せい。間違っても小動物や魔物には転生させん。聞いたことあるじゃろ? エルフやドワーフといった種族を」


 エルフやドワーフなんてゲームでしか見たことないが、あれでいいんだろうか?


「うむ。概ねそれで合っておるぞ。それよりほれ、さっさと引かんか」

「おっし……」


 意味もなく腕まくりをすると、一番底に沈んでるやつを指で挟んだ。


「コイツに決めたぜ!」

「よろしい。では広げてみるがよい」

「どれどれ――おお! やった、人間だ!」


 やっぱ慣れた肉体の方がいいもんな。


「――あ、あれ? でも何か続きが書かれてるぞ?」


 人間の隣にカッコで括られた内容を凝視する。


「ダンジョン……マスター?」

「おお、ダンジョンマスターか。なかなかレアなものを引いたのう」

「う~ん、レアなのはいいけどさ、このダンジョンマスターってのは要するに引きこもりのことだよな?」

「お主、初っ端から世界各地のダンジョンマスターを敵に回すつもりか……」

「え? なんかマズイこと言った?」

「お主はイメージでしか知らんのじゃろうが、ダンジョンマスターというのはダンジョンを生成し、それを用いて獲物を刈ったり宝を生み出して国と交渉したりと、高レベルな運営を要求されるものなのじゃ。引きこもり生活は楽勝だと思っておったら、あっという間に詰んでしまうぞぃ」


 でもなぁ。俺自身は引きこもるつもりはないし、ダンジョンマスターであっても外で活動したい。

 そう、剣を手に魔物を蹴散らし、見知らぬ地を冒険して回るんだ。うん、やっぱ冒険者になって名を上げたいよな。


「何だっていいさ。やってやるぜ、ダンジョンマスター」

「うむ。思い切りのよい面をしておるな。お主ならダンジョンマスターとして名を馳せることが出来るやもしれん。では最後に特例として固有スキルを付与してやろう」



 ピコーン!



【固有スキル――決戦の舞台(クライマックス)が使用可能になりました】



「おお? 機械音声が頭の中に流れたてきたぞ。それに決戦の舞台(クライマックス)とか、俺にピッタリのスキルじゃないか!」

「気に入ってくれて何よりじゃ。ステータスを確認したい時は脳裏で念じればいつでも見れるからの。分からないスキルを得た時は確認してみるがよい」


 そう言われるとさっそく試したくなるのが人のサガだよな~。え~と……こうかな?



 名前:入表勝

 性別:男

 年齢:20歳

 種族:人間でありダンジョンマスター

 スキル:決戦の舞台(クライマックス)


 こりゃすげぇ! 履歴書の代わりに見せられればスッゲェ便利そうだ。まぁ無理だけど。



「付与したスキルを調べてみぃ。詳細が見れるぞぃ」

「調べれと言われても……」

「タップするイメージでやってみぃ」

「なるほど。こんな感じかな?」



 決戦の舞台(クライマックス):このスキルは対象相手に1対1の肉弾戦を仕掛けるもので、自分か相手が降参もしくは瀕死になるまで外部から邪魔をされなくなります。このスキルが継続してる間は、相手と同等のステータスを獲ます(一部対象外あり)。1日一回だけ使用可です



 おお、出た出た! しかもこのスキル、強敵が現れた時に使えばかなり強力だな。


「サンキュー、オルドの爺さん!」

「だからお主、神に対して――」

「え? なんかマズイこと言った?」

「はぁ、もぅええわぃ……。ではお主をイグリーシアという世界に送るからの。光が収まる頃にはダンジョンコアを手にしていることじゃろう。コアを使ってダンジョンを作り、外敵から身を護りつつ生き抜くのじゃ」



 シューーーーーーゥゥゥ……



 その台詞を最後に激しい光が俺の全身を包み込み、気が付くと見知らぬ草原に降り立っていた。


「ホントに異世界に来ちまったんだなぁ。しかも右手には野球ボールサイズの青くて丸い石が収まってるし、これがダンジョンコアってやつか」


 オルドの爺さんはダンジョンを作れって言ってたけど、俺としては地中深くに隠りっぱなのは遠慮したい。とりあえず今はリュックにしまっておくか。


「じゃあさっそく探索を――と行きたいところだが、まずは自分自身のチェックだ」


 来てる服は事故った時のまんま。血が付いたり破けてたりはない。でもって……


「足元にはキックボードか。事故の原因とも言えるコレと一緒に転生するとはなぁ」


 とはいえ有るんだから使わない手はないと考え、それを拾いあげるとダンジョンマスターならではの召喚機能を試みる。


「まずは武器が欲しいところだ。武器武器武器……」


 武器を連呼して念じると、リュックがポワッと温かくなる。ダンジョンコアが反応してるらしい。

 そして間も無く、召喚リストが脳裏に浮かんできた。



 ・棒

 ・石(小、中、大、他)

 ・石剣(片刃、両刃、他)

 ・ナイフ(調理用、採取用、戦闘用、他)

 ・弓(木弓、石弓、他)

 ・槍(木槍、石槍、他)

 ・斧(木斧、石斧、他)


 第一印象から言うと細かい! 非常に細かい! けど分かりやすくていいと思うことにした。


「まだ鉄とかは召喚できないのか。レベルを上げれば召喚できるようになるのか? そこは追々確かめるとして、手始めに片手剣を召喚するか」


 石の片手剣をタップする感覚で選択した。すると……



 シューーーーーーン!



「おお、手元に剣が!」


 感動もほどほどに鞘から抜いて手触りを確かめてみる。


「うん、重くないし丁度いいな。これで無防備じゃなくなったし、次は探索でもするか」


 どこに進もうかと辺りを見渡す。


「北は海、東は草原、南は森で、西に山か」


 現在の時刻と太陽の位置で方向はすぐに分かった。いや、分かったところで意味はないんだけどな。

 最悪異世界の基準が地球とは違う可能性もあるが、そん時はそん時だ。覚えていけば何とかなるだろ。


「まずは山に登ろう。頂上から周りを見渡せば村なり街なり見つけられるかもしれない」



~~~~~



 ――って感じで山に登ったわけだが、残念ながらここは無人島らしい。

 まさかオルドの爺さん、俺の性格を見抜いて敢えて危険の少ない場所に移動させたんじゃないだろうな?

 好意は嬉しいがサバイバルを楽しむには敵がいなきゃ始まらねぇ。とっとと島を開拓してどこかの大陸に――



『緊急連絡、緊急連絡、ダンジョンコアにアンノウンが接近中。直ちに迎撃を行ってください』


「な、なんだこの機械音声は? 頭の中に響いてきたぞ」


 ゲームでしか見たことないが、これが念話ってやつか。しかもダンジョンコアがピンチみたいに言ってるな。コアが破壊されたら俺自身も死ぬらしいから、無視はできない。


「近くに謎の生命体がいるのか? (ふもと)まで降りてきたけど、辺りには誰も――あ!」


 誰もいないと言いかけて、近くの湖にスカイブルーな色をしたセミロングの女の子が(たたず)んでいるのを発見した。

 俺に背中を向けていてこっちには気付いていないっぽい。


「俺より身長が低そうだし、年下っぽく見える。さて、どうするか……」


 見た感じは危険を感じないものの、ここは異世界だっつ~のを忘れちゃなんねぇよな。

 けれど何らかの情報も欲しいところだし、勇気を出して声をかけてみよう。そう思い一歩踏み出すと同時に女の子が振り返った。


「…………え?」

「あ…………」


 そしてお互いに固まってしまう。相手は俺を見て「誰?」って顔してるし、俺は俺で彼女に見とれていた。

 何故かって? そりゃもう大谷○平のストレートがハートに直撃するくらい、その子がドストライクだったからさ。

 そう、異世界初日で出会った女の子に、俺は一目惚れしてしまったのだ。


「…………」

「…………」


 無言で見つめ合うことしばし。警戒しているのか、女の子は俺に視線を合わせたままジッと様子を伺っている。ならば俺のターンだと自分に言い聞かせ、思いきって告白することにした。


キャラクター紹介


入表勝いりおもてまさる

以後はマサルと表記

:キックボードで調子に乗ってウェ~イしてたところをトラックに突っ込まれ死亡――が、天界のオルド神が言うにはマサルは本来死ぬ予定ではなかったのだと言う。

 しかし現世に生き返る事は無理なため、オルド神の計らいにより異世界転生する事に。

 これ幸いとばかりに冒険者を目指そうとするマサルだが、抽選の結果ダンジョンマスターへと転生してしまった。

 こうなったら仕方ない。ダンマスやりながら冒険者として名を上げてやる! という意気込みとオルド神から授かった【クライマックス】というギフトを駆使し、彼の異世界ライフはスタートした。

 

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