最 終 回 (第五回)
仕方がない。緊急事態って話で。
「あの、目つぶって貰ってもいいですか?」
できるだけ、紳士に言った。
「えっ…?」
女性はすごく、ハテナの顔をする。
いや、無理ですよね。誰が初対面の者に対して、気を許すか。絶対オカシイって。無し。
「これでいいですか」
女性は優しく目を閉じた。
マジで。ええっ。嘘…。ごめんなさい。吸血鬼で、すまない。
「僕は、吸血鬼なんだ」
小声で、話した。ヨシッ、去って行こう。ちょっとでも目をつぶっている、間に。
「私は悪魔だよ」
ドッギャシャ――ン。心の、一部が崩れた。
「えっ…」
目が回る。
「黙って血を吸ったら心臓をとってやろうと、思っていたのに…意外と正直なんだね」
こういう女性いるんだ、ってか悪魔か…。
「ええっ、怖っ」
吸血鬼の、僕が言うのも変だが。マジで自分より上手だ、コリャアな。
「ここら辺に、悪魔がいる情報も入った。気を付けろ」
ハンターに新たな動き、が。
でも、この女性は中々強大な力を持っていそうだから返り討ちに、されそうな気もするが。
聞けば、人間の女性の身体で重量挙げをしているのは最初は暇潰しだったが、現在では本気でスポーツを行うためらしい。記録を伸ばすのが、楽しいのだそうだ。…可愛いな。
う――ん。ピンチだった。
「やっぱ血を、吸わせて。重量挙げのトレーニングを百日。ハンターのリスクを回避をして、こっそり手伝うから…」
「イイよ」
軽ッ。元気な笑顔で引き受けてくれた。明るくてなごむな。僕は彼女が悪魔と分かっても、ホレていたのだ。手伝いでさりげなく一緒に、いる時間ができた。
ってか、彼女の血、つまり魔力がなきゃ僕は死んでしまったかもしれない。正直、ダメージが大きかったから。
悪魔の血でも、吸血鬼の負傷は、普通に治すことができた。なんとか助かった。
終




